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273. 狂気の代償 (3日目午前) ---- 彼は普段使われていない通路の奥から聞こえた物音を頼りに、ここに来た。 薄暗い通路を進んでいくと、以前のBRにより使えなくなった家具の物陰から、 なにやら打音が聞こえてくる。彼は持ち前の豪胆さでズンズンと進んでいく。 10歩くらいで、音の主を確認できた。一人はまだ幼さが残っている少年、 もう一人は色香漂う女性だった。弟を気遣う歳の離れた姉に見えなくも無い。 (あれが地図からいなくなった♂シーフと♀WIZだな。) 「お前ら、こんな所でナニしてた?」 彼は無警戒に近寄りながら声を掛けた。足場の悪さに顔をしかめながら二人を観察する。 と、少年がくるりとこちらに顔を向けた。女性の方は視線をこちらに向け、顔を強張らせている。 女性の視線を受け、彼はそりゃそうだよなぁ、と思う。BRに参加している以上、 GMは恐怖の対象だ。直接は関与しないものの、反逆すれば開幕時の♀モンクのように、 圧倒的な力でねじ伏せられる。彼はジョーカーほどではないものの、それくらいの実力はある。 一方の少年の方を見て彼は、あ~あ、なんて思った。おそらく顔にもその表情が出ていただろう。 なにしろ少年は彼の方を見て、とびっきりの笑顔を浮かべたのだ。少年が精神的に壊れてしまった、 と思っても仕方ないことだ。正常な反応を示した♀WIZのみに意識が向いた。 「もう一度聞くぜ?お前ら、こんな所でナニしてた?」 彼、GM森は言い終わった後、一歩踏み込んだ。♀WIZは杖を両手で構え、一歩後退する。 驚愕に見開いていた瞳は、今では敵意と殺意に満ちている。 「やれやれ、こんな美人にそんな睨まれるとはねぇ、因果な商売だな。」 GM森は♀WIZをじっくりと舐める様に観察した。♀WIZはその好奇な視線を避けるように、 杖を構えなおす。だからなのかGM森と♀WIZは視界に入っているはずの♂シーフの行動に、 付いていけなかった。♂シーフはただ狂気に満ちた笑顔でGM森を見ていたのではない。 GM森が現れる前に♀WIZに対して考えていたように、戦闘方法を考えていたのだ。 狂気に犯されながら、肝心なところは異常なまでに冷静である。囚人の腕輪に秘められた力だった。 ♂シーフは幽鬼のようにゆらりとGM森に近づいた。が、GM森は意識しなかった。 いや、意識できなかった。元々精神が壊れたと思って意識していなかったうえに、 ♀WIZに警戒していた。いくらGM森とはいえ、オーラWIZには注意ははらう。 だからこそ、一次職の壊れたシーフには例え攻撃されても問題ないと判断していた。 「なっ!!?」 驚きはどちらのものであったか。GM森と♀WIZが気が付いたときには、 ♂シーフはGM森の1m手前に近づいていた。GM森があわてて剣を抜こうとしたとき、 異変に気が付いた。左の腰に差した剣が無くなっている。しかも鞘ごと無い。 ♂シーフが♀WIZの方向に何かを投げた。それが自分の剣だと気が付いたがもう手遅れだった。 悪態をつく暇も無い。♂シーフのグラディウスがGM森の喉元に向かって突きこまれる。 体を左にひねってかわす。突きこんだグラディウスをそのまま避けた方向に切り払う。 GM森はこれを仰け反って凌ぐ。今度は切り払いの勢いを利用した左のハイキックがGM森の顔面に迫った。 GM森は相手の意図を読み取り背面とびで距離をとりつつ体勢を整える。本来なら♂シーフの蹴りなぞ、 避ける必要が無い。GM森は自他共に認めるマッチョだし、♂シーフは女装したら似合う位線が細い。 逆に蹴りを喰らって相手の体勢を崩すくらいのことをやってもおかしくないのだが、 つま先で目を狙われたら話は別だ。いくらGM森とはいえ、避けるしかない。 (くっ、こいつ本当にシーフか?対人に特化したローグやアサシンとしか思えねぇ。) 今更自分の浅慮さを呪っても遅い。愛剣はいまや♀WIZの手元にあるし、予備の武装は、 あまり使わないブレイドだ。最大まで鍛えてあるが、特にカードは挿しておらず、 まさしく飾りとなっていた。が、今はそんなことは言っていられない。素早く抜き放つと、 ♂シーフを迎え撃つ。攻撃をかわされた♂シーフは躊躇うことなくGM森に突き進む。 これをGM森は袈裟懸けに切り払う。♂シーフはしゃがんでかわす。切り払ったブレイドを 腕力で強引に左から右へと薙ぎ払う。しゃがんだ♂シーフの胸辺りの位置を狙っている。 それをバックステップで避ける。GM森は飛んで避けた場合の切り上げを考えていたが、 開きすぎた間合いのため中止する。今度はGM森が間合いを詰める。ブレイドを上段に構え、 一気に振り下ろす。♂シーフはそれをGM森の左側に回り込んで避けようとする。その際、 GM森の脇腹をグラディウスで切り裂こうとする。それを無視してGM森はブレイドを地面に叩き付けた。 脇腹を切り裂いた♂シーフは突如発生した爆炎に吹き飛ばされた。グラディウスを放り出し、 地面に転がり動かなくなる。GM森は大振りを誘いダネとし、攻撃を喰らう覚悟で短期決戦に踏み切った。下手に長引かせれば間違いなく♀WIZの攻撃がやってくる。 予想以上に痛む脇腹を押さえ、GM森は♀WIZの方を見る。♀WIZはすでに何かの魔法を詠唱していた。 GM森は舌打ちし、♀WIZに駆け寄る。が、♂シーフにやられたダメージがその足を鈍らせる。 焦りがその一撃を鈍らせた。なんとか間合いに入り、ブレイドを一閃させる。しかし♀WIZは、 紙一重で攻撃を見切ると、そのまま攻撃に転じた。青白い雷球がGM森の体を包むと、 朽ちた家具まで一瞬で吹き飛ばす。信じられなかった。BR参加者は例外なく能力を制限させられるのに、 なぜ、この女の魔法はそのままの威力なのか。吹き飛んだ際にブレイドは手放した。 ウィザードスタッフによりさらに威力が上がったユピテルサンダーで体が痺れて思うように動けない。 「こ、こんなところで死ねるかよ・・。」 GM森は体を起こし、家具を遮蔽物にして通路から逃げようとした。自身でヒールは使えるが、 ♀WIZの火力と比べると、自分の回復力は余りにも低い。幸い吹き飛ばされたおかげで、 ♀WIZとの間合いはかなり開いた。この通路にくるまで、いくつもの廃棄された家具を確認しているため、 遮蔽物は事欠かない。うまくすれば、遮蔽物にまぎれて追ってきた♀WIZを仕留められるかもしれない。 だが、そんな甘い事を♀WIZが許すわけがなかった。 立ち上がり逃げようとしていたGM森の目の前に絶望という名の氷壁が立ち塞がった。 その壁は即座に背後にも出来上がる。簡易擬似ファイヤピラーである。これの対処法は唯一つ、 マグナムブレイクで氷壁の隙間を広げ、ファイヤーウォールをやり過ごすしかない。 GM森はすぐにマグナムブレイクでアイスウォール間の隙間を広げた。 そして、素手によるボーリングバッシュでアイスウォールの一部を吹き飛ばして退路を確保するつもりだった。 だが、♀WIZは動じることなく出来た隙間を埋めるようにアイスウォールを重ねてきた。 驚愕するGM森。マグナムブレイクは気を溜めて炎と衝撃に換える技、そのため連発ができない。 それを見越してのアイスウォール。♂WIZに一度破られた教訓を活かさないはずが無い。 そして、足元から吹き出る炎。 「ウオオオオオオオオォォォォォォォ・・・・・。」 氷の壁の中から絶叫が聞こえる。が、それも長くは続かなかった。 ♀WIZは氷壁の中で、GM森が崩れ落ちるのを確認してから♂シーフに駆け寄った。 「♂シーフ君、しっかりして!!」 ♀WIZは♂シーフの体を抱き上げながら言う。♂シーフの傷の状態が良く分る。 左腕と左足は炭化しかけてる。吹き飛ばされた衝撃で右腕は間接が一つ増えたようになっている。 頭部からは今も血が流れている。♀WIZの呼びかけに目を開けたことが奇跡に近かった。 「♀WIZさんは・・、無事ですか・・・?」 「私は大丈夫、♂シーフ君が頑張ってくれたから傷一つ無いわ。」 「・・・そうですか・・・、よかった・・・・。」 消え入る声、♀WIZは♂シーフの体を強く抱きしめる。 「あぁ・・・、あの嫌な声も聞こえない・・・。これならゆっくり休める・・・。」 「♂シーフ君、しっかりして!♂シーフ君っ!!」 ♀WIZの目に涙が浮かぶ。♂シーフの体から熱がどんどん失われていく。 「じゃあ・・・、♀WIZさん・・・・、お休み・・・なさい・・・。」 「・・・・・。えぇ、ゆっくりお休みなさい。ぐっすり眠れるようにおまじないしてあげるから・・・。」 ♀WIZはそう言って♂シーフの頬に口付けした。GM森に挑みかかった時の顔はしておらず、 歳相応の穏やかな寝顔だった。そっと♂シーフを横たえると、涙をぬぐい立ち上がった。 GM森は倒したが、この通路の奥にはもっと多くのGMがいるだろう。 そして、そのGMがGM森と同じように愚かとは思えない。 ♀WIZはGM森の残骸を見下ろしながら、今後の行動を練っていた。 <♂シーフ> 現在地:謎の地下室 所持品:多目の食料 +7トリプルハリケーングラディウス 囚人の腕輪? 容 姿:栗毛 備 考:ハイディング所持 盗作ローグ志望でちょっと頭が良い ♀WIZと同行     呪詛に苛まれるが開放される GM森との戦闘により死亡 <♀WIZ> 現在地:謎の地下室 所持品:クローキングマフラー ロザリオ(カードは刺さっていない)     案内要員の鞄(DCカタール入り) ウィザードスタッフ GM森の愛剣 容 姿:WIZデフォの銀髪 備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね? 状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HPは半分くらい?     希望が見えてきて気持ちが前向きになるも♂シーフと死別して不安定に <GM森> 現在地:謎の地下室 所持品:不明 外 見:逆毛 筋肉質だった 状 態:ファイヤーウォールにて死亡 ---- | [[戻る>2-272]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-274]] |

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