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274. ロシアンルーレット (3日目午前) ---- 「……」 「……」 2人が去ったあと、残った淫徒プリらの間に沈黙が落ちる。 あの叫び声は一体誰のものか。 見に行った2人は大丈夫か。 思惑が交錯する。 ♀ケミは思う。悲鳴の主が♀ハンターならいい。 そのまま死んでいてくれればもっといい。 ♀マジは考える。たぶんこれで♀ケミの話の真偽がはっきりする。 悲鳴の主が生きていてくれれば。 そして♀アコは思いついたことをすぐ口に出した。 「あたし達はどーしよ?」 「どうするかって、あとは侍ってるしかないでしょ」 当然のように言って悪ケミが肩をすくめる。だが♀アコは首をかしげた。 「そうかな?絶対間に合わないって決まったわけじゃないし、2人を追っかけてもいーんじゃない?」 「あ、うーん」 「キミ、時々すごく鋭いこと言うよね」 それぞれに声を上げて淫徒プリと♀マジは考えこむ。 ときどきってなによ、と♀アコが抗議するがそれは華麗にスルー。 やがて♀マジが賛成した。 「…誰か怪我してればすぐ戻ってこれないかも知れないし、追いかけた方が早く合流できるね」 だが淫徒プリは同意しかねるといった表情で首をかしげる。 「ですが皆でついていっては偵察の意味がなくなります。敵が本当に危険だった場合、強くて速度も掛かっている2人だけのほうが逃げやすいでしょう」 「でもさ、ヤバい相手とはいつか戦わなくちゃいけないでしょ?今やっても同じじゃない?」 「同じではありません。多少なりとも精神力を回復して挑みたいところです」 職業的な考え方の差だろうか。 積極策を主張する♀マジや♀アコと慎重策を主張する淫徒プリの意見が対立する。 その様子を見て♀ケミはちょっとだけ悩んだ。 彼女達に死んでもらうなら喧嘩になるよう煽るところだが、人手がこれだけあれば悪ケミの言った脱出の可能性も現実味を帯びてくる。 その可能性を今ここで消してしまうのは損ではないか。 「あの…先に♂プリーストさんの遺品を確かめてみませんか?何か役に立つものがあるかもしれませんし」 そう言って少し離れた場所に作られた土饅頭をちらりと見る。 「…ああ、そうだね」 ♀マジは一瞬何か言いたそうな顔をしたが、すぐにうなずいた。 代わって淫徒プリが答える。 「でも装備は一緒に埋めてしまいましたよ」 「いえ、装備のことではなくて」 ♀ケミはかぶりをふる。 せっかくの支給品を埋めるなんてもったいないとは思うが、「使える」装備を埋めてしまうほど馬鹿ではあるまい。それほどたいした物ではなかったのだろう。 それに装備を誰が持つかと言う話になれば、戦力外の彼女に回ってくる可能性は低い。 「精神力や体力を回復できるものとか、足の速くなるものを持っていないかと」 「なるほど」 淫徒プリは♂プリのものだったらしい鞄を引き寄せた。そして他の面々に鞄の中を見せる。 覗き込んだ一同はそれぞれに声を上げた。 「うわ、なにそれ」 「…干し肉?そんなにいっぱい?」 「喉が乾きそうね」 「わふ」 最後のは肉を見せられて尻尾をバタつかせた子デザである。 「食料はちょうど無くなった所ですし、これはありがたくもらいましょうか」 そう言って淫徒プリは干し肉の束を10個に分け始めた。 もっともさすがにそれだけの人数で分けると二食そこそこにしかならない。 受け取った♀アコは小首をかしげ、 「じゃああたし達のも分ける?」 鞄からペットフードを取り出した。 一瞬期待する顔を見せた悪ケミがペットフードを見て顔をしかめる。 「肉があるのにどーしてばけもののえさなんか食べなきゃいけないのよ」 「それペットフードだよ」 「わ、わかってるわよそんなことっ。直約しただけじゃない」 「直訳…かなあ?」 干し肉の束から一本選んで口にくわえ、残りを空っぽの鞄へ収めながら♀マジは首をかしげる。 同じく鞄を開けた♀ケミは、そこである物に気付いた。 (そう言えばこんなものもあったわね) ♂ローグから奪った菓子包みの状態を確かめる。 二つのうち一方はいつの間にかつぶれて泥に汚れているが、もう一方は大丈夫そうだ。 干し肉やペットフードもあったところを見ると、これも誰かに支給された食料なのだろうか。 首をかしげていると、早くも肉を一枚食べ終わった♀アコが目ざとく見つけた。 「なーにそれ?」 「たぶんお菓子だと思います」 「へー」 ♀アコは身を乗り出した。 そして物欲しそうに言う。 「干し肉ばっかりだとちょっと飽きちゃうなー」 「そうですね。でも1つしかありませんし…」 ♀ケミはちょっとだけ考えるポーズを見せた。 そして失望を顔に浮かべた相手に秘密めかして小声で続ける。 「今のうちに女の子だけで分けちゃいましょうか」 「やった」 柔らかめのビスケットのようなそれを♀ケミはおおまかに六等分する。 そして5人に勧めた。 空腹のときの甘いものや小さな秘密の共有は、仲を深める簡単な手段の一つである。 どうも視線の厳しい少女達を懐柔し、障害を減らしてから男性陣を篭絡しよう。とっさにそういう計算をしていた。 「なにこれ?」 「デザートです」 不審そうな♀マジへいたずらっぽく笑って見せ、さっそく手に取った♀アコと共に一片を口に入れようとする。 「待ってください」 淫徒プリがそれを止めた。そして♀ケミにたずねる。 「これの効果は?食べてみましたか?」 「効果、ですか?」 淫徒プリの質問に♀ケミは首をかしげた。 食べてみたことなどないのに分かるはずがない。 ちょっと困った様子の彼女を観察しながら淫徒プリは説明した。 「お菓子の中には茶菓子のように集中力を高められるものや、チョコレート類のように精神力を回復できるものがありますよね」 「あ、そんなんだったらいいね」 つかまれていた手を振り払って♀アコは手元の一片を眺める。 淫徒プリは思慮深げにうなずきながら続けた。 「もしそういった効果があるなら食べずにとっておくべきではないでしょうか」 もちろん真意はやや異なる。♀ケミの差し出した食料を怪しみ、とりあえず食べずに済むよう理由をこじつけたのだ。 一方の♀ケミはどう答えるか少しだけ迷った。 だが嘘をついても食べればすぐに分かってしまうことだ。ここはある程度事実に沿って答えるしかない。 「私も食べてみたことはないんです。特別な物かも知れないなんて考えませんでした」 「ふーん。ってことは箱から?」 「はい」 ♂ローグを殺して奪ったとは答えにくいのでそこだけ嘘をつく。 「効果について何か説明のようなものは?」 「ありませんでした」 「それじゃ食べてみないと分からないよ?」 「そうですね」 ♀アコの言葉ににっこりと笑い、淫徒プリは♀ケミに対する攻撃のカードを切った。 「ですからまず、ひとかけらだけ食べてみて効果を確かめておくべきでしょう」 「誰が食べるの?」 よだれを垂らさんばかりの顔で♀アコがたずねる。 淫徒プリはしれっと答えた。 「ここは当然持ち主の♀ケミさんにお願いしましょう」 もし彼女が毒を仕込んでいればこれで困るはずだ。 淫徒プリは♀ケミの反応を慎重にうかがった。 だが、そこには毛ほどの動揺も見られない。 「ではお言葉に甘えて」 「あ、待ってください」 まだ疑いを解いていない淫徒プリはさらにもう一押し。 「私の分の方が小さい気がするのでこちらを。なるべく多く残したいですし」 「はあ」 ♀ケミの分だけ毒が入ってない可能性もある。そう考えて交換を要求したのだが、彼女は多少困惑した様子を見せただけだった。 それもそのはず、♀ケミは毒が入っている可能性に思い至っていなかった。 これまで他人を陥れることはあっても自分が仕掛けられる側に回ることなどなかったせいだろう。 「それではお先に」 どうも警戒されてるらしいと感じながらも、今度ばかりは何もしていない♀ケミは返してもらった欠片をあっさり口にした。 「…どう?」 まるで恐れる様子もなく菓子を食べた彼女に♀マジが恐る恐る声を掛ける。 「格別おいしいと言うほどではないですね。堅パンみたいで」 「味より効果が聞きたいのですけど」 淫徒プリも考えすぎだったのかと少しだけ安心し、意識を次の問題に切り替えた。 問われた♀ケミは微妙な表情をする。 「特に感覚が鋭くなったとか元気が出たと言う感じは…」 「精神力は?」 「特に使っていませんからわかりません」 「ああ、そうだよね」 ♀マジは手元の菓子片を見下ろす。 「ボク達が食べてみるしかないか」 それでもまだ完全に信用し切れない彼女の横で、♀アコが口をもぐもぐさせながら嬉しそうに言った。 「結構おいしいよ?」 「ってキミどうして食べてるんだよっ」 「あたしも魔法使い切ったし。回復するならいーじゃない」 当然のように言われて♀マジは頭を抱える。だがこうなったら仕方ない。 「で、どう?ちょっとは回復した?」 ため息混じりに聞かれて♀アコは首を振る。 「よくわかんない」 「ああもう、まったく」 ♀マジは腹立ち紛れに自分の分を口に入れた。 そしてゆっくり吟味しながら味わう。 確かに菓子と呼ぶには素っ気のないしろものだが、かすかに塩気と甘みがあって、おいしいと言った♀アコの気持ちも分かる。 しかしそれだけだ。 「うーん?わかんないね」 「回復剤でもないということでしょうか。何の意味があるのでしょう?」 ♀ケミから改めて一片を受け取った淫徒プリが首をかしげる。 すると悪ケミが分析結果を告げた。いつの間にか細かく分解しながら食べていたらしい。 「小麦粉のほかにもいくつか、穀物とかハーブ使ってるわね。なんかどっかのけんこー食品みたい」 それを聞いて♀マジがうなずく。 「そっか、あくまでも食料なのかもね。これ1つ食べれば丸一日飲まず食わずで平気だとか」 「ありそうな話です」 淫徒プリもこれだけ他の面々が食べては自分だけ無視もできず、手元の欠片を口に運ぶ。 ずっと黙って話を聞いていた♀商人も皆の顔を見回してから菓子片を食べ―― 「う、ううっ!?」 次の瞬間、腹を押さえてカートごとひっくり返った。 <♂プリースト> 現在地:E-6 所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ 外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔 備考:殴りプリ 状態:不明 <♀アルケミスト> 現在地:E-6 所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食 外 見:絶世の美女 性 格:策略家 備 考:製薬型 悪女 ♂スパノビ・悪ケミらと同行 首輪や地図の秘密を知り悪だくみ中 淫徒プリと再会 状 態:脇腹に貫通創(治療済) <♂スパノビ> 現在地:E-6 所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食 スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒 外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い 備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている ♀ケミ・悪ケミらと同行 仲間を見つけた? 状 態:HPレッドゾーン・ヒールでやや回復 気絶中 <悪ケミ> 現在地:E-6 所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 支給品一式 馬牌×1 食料二食 容 姿:ケミデフォ、目の色は赤 思 考:脱出する。 備 考:サバイバル、危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用? したぼく:グラサンモンク 参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目 <♀アコライト&子犬> 現在地:E-6 容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042 所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食 スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング 備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミを信用? 状 態:デビルチとの戦闘で多少の傷 <♀マジ> 現在位置:E-6 所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食 容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート) 備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。    首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに疑念 レズ疑惑 状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し <♀商人> 現在地:E-6(東の半島を目指す) 所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食 容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ) 備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?     淫徒プリ・悪ケミらと同行 ♂プリとの再会だが・・・ <淫徒プリ> 現在地:E-6(東の半島を目指す) 所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料六食 容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人 備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる     ♀商人・悪ケミらと同行 ♀ケミを警戒 ---- | [[戻る>2-273]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-275]] |

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