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275.魔なるものの邂逅 (三日目午前) ---- 「あーもーっばかばかばかばかばかうまのけつーっ!絶対絶対ぜえぇーったい許さないんだからっ!」 誰の声も届かない空の上でパピヨンは器用に地団太を踏んでいた。 圧倒的多数を相手にしてとはいえ、勝負を挑んで撃退されたことがよほど気に入らなかったらしい。 「今度会ったらぎったんぎったんのぐっちょんっぐっちょんのけちょんけちょんにして、もんのすごぉーっく恥ずかしいイタズラ書きしてやるーっ!お・ぼ・え・て・ろーっ!」 両手を突き上げ、ひとしきり吠えるだけ吠えた彼女はやがて急にがっくりうなだれた。 引き締まった腹を押さえて情けない声を出す。 「それにしても・・・おなか減ったなあ」 心なしか触角も力を失って垂れ下がっているようだった。 「どっかにご飯落ちてないかなー。今ならむさい男でも死体でも我慢するのになー。若くて元気な子の生き血がいーなー」 ふらふら飛びながら一貫性のないことをつぶやく。 その目がふと細められた。 「あれ?なんだろ、食べれるかな?」 ちょっと遠くの地面に動くものを見つけたパピヨンは小首をかしげる。 ただし迷っている時間は短かった。 「まいっかー。試してみれば分かるよね」 地上をトテトテ歩くそいつはときどき立ち止まり、周囲を見回していた。 だが頭上はまったく警戒してなかったらしい。 物音ひとつ立てずに滑空で忍び寄るパピヨンにはまるで気付かず、 「フぎょっ!?」 いきなり脳天めがけて落下すると奇妙な悲鳴を上げて動かなくなった。 「よ~っし、かんぺき」 みごとなまでの座布団状態にした相手を確かめてパピヨンは自画自賛する。 息はあるしどうやら大した外傷もない。ダメージよりはショックのあまり気絶しただけのようだ。 これなら新鮮な生き血を心ゆくまで楽しめる。 「いっただっきま~す」 彼女は実にうれしそうに手を合わせ、口をつけた。 かぷ そのまま一秒、二秒・・・ 「ぅホわじャー!?ナニするカ貴様ーっ!」 「うえーっ、ぺっぺっぺ!まっずーいっ!」 双方同時に悲鳴を上げて跳び離れた。 「ヒトの血を勝手ニ吸うテおいて何ヲ言うかっ」 目を覚ました黒くて小柄な生き物は地面を叩いて抗議する。 もっともな言い分だが、パピヨンはまるで取り合わずに憮然とした声を出した。 「人間の血じゃなかったー」 「当タり前だ。我はデびルチ、悪魔なのダからな」 デビルチと名乗ったその生き物は自慢げに胸を張る。 ところがパピヨンはきょとんとするばかりで驚くそぶりも見せない。 「悪魔ってなーに?」 「知らヌのか。悪魔トは魔界に住む最強ノ種族のコとダ」 デビルチはさらにそっくり返る。 だがパピヨンの答えはにべもなかった。 「うそだー」 「ナにガ嘘か」 真っ向から否定されてデビルチは不満そうにする。 パピヨンは当たり前のように答えた。 「黒塗り毒まんじゅーなんかより虫のほーが強いもん」 「誰がドク饅頭ダっ!無駄のナい完成さレたボディと言ワぬか!」 ひどい言われようにデビルチの頭の噛み傷から黒い血が噴き出す。 「えー。丸ければいいんだったらダンゴ虫が一番えらいことになるじゃなーい」 クスクス笑われてデビルチはついに身構えた。 「よカろう。ナらバ悪魔の強サを思い知るがイい」 「へー。やってみればー?」 パピヨンは鼻で笑ってふわりと浮かび上がる。 相手が手の届かないところへ逃げたのを見てデビルチは即座に詠唱を始めた。 雷球が徐々に形成されてゆく。だがそのペースは人間の魔術師に比べても早いとはいえない。 のんびり眺めていたパピヨンはその完成直前に赤い魔力球を生み出す。 「おっそ~い」 殺到したSSは身動きの取れないデビルチに一発残らず命中し、 ――消滅した。 「あれ?」 呆然とするパピヨン。 その隙にデビルチの雷が完成する。 「食らエ」 「ふーんだ。効かないもーん」 バヂバヂバヂッ パピヨンは片手を突き出してJTを受け止めた。 その反動でさらに上空へ跳ね上げられ、そのままの位置で滞空する。 「・・・ぬウ。思っタよりやルではナいか」 「・・・ふっふ~ん。おどろいた~?」 お互いに余裕ぶって相手の様子をうかがうが、その声には隠し切れない動揺がにじんだ。 デビルチはど肝を抜かれていた。 普通、JTを素手で受け止めたりはしない。 たとえダメージは小さくても腕が痺れてしばらく使えなくなる恐れがあるからだ。 それを恐れないということは、当たったように見えたJTも実は効いていないのか。 まして相手は空中。 あっちの魔法も効かなかったとは言え、石でも投げられれば手も足も出ない。 パピヨンも少なからず困惑していた。 彼女は生まれ持った能力を本能的に駆使することで歴戦の冒険者とも対等以上に渡り合ってきた。 しかしその一方、知識と経験は決定的に不足していた。 そのためデビルチの体とJTが闇の属性を持つとは知らず、JTなら自分には効かないと本能的に考えてしまった。 それが小なりとはいえダメージを受け、しかも自分のSSは効いた様子がない。 こんな相手とどう戦えばいいのか。 やがてデビルチが槍を下ろした。 「・・・やメよウ。これ以上やりアってモお互い意味あるまイ」 「負けをみとめるのー?」 「引キ分けにせヌかと言ってオるノだ!」 「ふーん?まいっかー。やっつけても食べれないんじゃ疲れるだけ損だしー」 一瞬だけ考えたパピヨンは羽をたたんで降下する。 そしてそのままデビルチの目前にぺたんと座り込むなり駄々をこねた。 「おーなーかーすーいーたー。なんか食べ物もってなーいー?」 「さっキ集めた若芽ならバ少し残っテおるゾ」 デビルチが差し出した樹の新芽にパピヨンは首を振る。 「そんな力の入りそーにないものじゃなくてー。人の血とかー、家畜の血とかー」 「蝶のクせに蜜デはないのカ?」 遠い同族の好物を思い出してたずねるとパピヨンは目を輝かせた。 「持ってるの?今ならハチミツでもローヤルゼリーでも我慢するよ」 デビルチは首を振る。 「贅沢言うナ。持っとラん」 「なーんだ。期待しちゃったじゃないー」 「ふむ?」 つまらなそうに頬を膨らませるパピヨンを見上げ、デビルチは何やら首をひねった。 そしてちょいちょい、と手招きする。 「モノは相談ダが」 「なーにー?」 ぶーたれた顔のままやる気なさそーに答えるパピヨン。 それでもデビルチはくじけず提案した。 「我ト手を組マぬか」 一瞬の間があってパピヨンは座りなおし、デビルチの顔をまじまじと覗き込んだ。 「一緒にやろってこと?なんで?」 デビルチは考えておいた理由を口にする。 「我の知ル限り、この島にオる人間たチは集団で行動しテいる者ガ多い。一対一ならバともかク、多数を相手にスるのハ危険であロう」 その多数相手に散々な目にあったばかりのパピヨンは思わずうなずきかけ、すぐに強気をとりつくろった。 「んー。そんなこともないけどー」 デビルチは気付かないふりをして説得を続ける。 「少なクとモ我々の利害は対立セぬ。お主ハ好きなだケ血を飲メばよイ。我は魂ヲもらう」 するとなぜか急にパピヨンが顔をしかめた。 「なんかだまされてる気がするー」 「どこガだ?」 デビルチの目が泳ぐ。 1人では戦う自信がないのは主にデビルチの事情だ。相手の力を頼りにする度合いが違う。 だがパピヨンが疑いを挟んだのはそこではなかった。 「もしかして魂ってすっごくおいしいんじゃないのー」 「アほカっ」 デビルチは思わず全力でつっこんだ。 「食っタりはせヌ。我ら悪魔にトっテは人の魂を持つコとに価値があるノだ」 「どーゆーこと?」 どうやら本当に分からないらしい。 デビルチはちょっと考えて分かりやすそうな例えをひねりだした。 「人にトっての宝石のヨうなものかナ。よリ強く純粋な魂ホど価値がアる」 するとパピヨンはあっさり興味を失った。 「なーんだ。食べれないならいーやー。魂はあげるー」 「・・・そレは手を組ムといウ意味に取ってイいノか?」 確認するデビルチにパピヨンは無邪気な笑顔を向けた。 「うん。頑張っていーっぱいやっつけよー!」 <パピヨン> 現在地:E-7 備 考:ミストレスの魔力を一部受け継ぐ ノーマルより強い デビルチと同行 状 態:あちこちに軽症 撃退されてご立腹中? <デビルチ> 位 置:E-7 所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用) 備 考:悪魔 パピヨンと同行 ---- | [[戻る>2-274]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-276]] |

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