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279.救うべきもの[3日目午前] ---- 彼女は暗闇の中でもがいていた。 苦しい。 痛い。 怖い。 怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いこわい怖いこわいこわいこわいこわいコワいコワイコワイコワイコワイコワコワコワコワ ずどん 突然の衝撃。 そして光が差した。 眼が痛む。 闇に慣れた彼女にとって光は新たな刺激に過ぎなかった。 無意識に逃げようとする。 だが周囲の壁に束縛されて動けない。 ごぼり、と気泡が上がった。 もがく。 壁にこすれた皮膚から激痛。 痛みにまたもがく。 激痛。 繰り返しの中、不意に腕が自由になった。 周囲に空間ができている。 外界の乾いた空気が肌をなでた。 次に感じたのは全身の痒み。 それが次第にチクチクとした痛みへ変わる。 耐え切れなくて体をかきむしる。 何かがべろりと剥がれた。 電流のような痛みが脳を貫く。 獣のような声をあげて彼女は周囲の壁に爪を立てた。 柔らかい肉壁を爪が引き裂く。 するとそれは逃げるように蠕動した。 逃げてゆく。 彼女が逃げるのではなく。 彼女は悲鳴じみた狂笑をあげた。 ***** 『――!』 ♂騎士は動きを止めた。 妙な声が聞こえた気がする。 「誰だ?」 「♂モンクさん…ではないようですね」 同じくおかしな声を聞いたらしい♀騎士は♂モンクを振り返っていた。 だがやはり目覚めた様子はない。 「じゃああの怪物か?」 「もしかすると――」 中の♀ハンターさんかも。 ♀騎士はその言葉を発することができなかった。 突如として紫色の怪物がいびつに膨れ上がる。 サボテンでも飲み込んだかのように四方八方へ鋭く突起を作り、すぐにそこから体が裂けた。 裂け目から何本もの矢が落ちる。 声もなくのたうつ怪物。 そして裂け目を押し広げてヒトが這い出した。 「お、おい…?」 ♂騎士の声が尻すぼみに小さくなる。 出てきたのは飲みこまれた♀ハンターのはずだ。 そう頭では分かってはいても実感がついてこない。 凄惨としか言いようのない姿だった。 露出した皮膚は焼け爛れたよう変色し、ところどころ剥がれて垂れ下がっている。 髪の毛も半分近くが抜け、まぶたや唇といった柔らかい部分は赤黒く腫れ上がって血をにじませていた。 果たして生還したといえるのか。 むしろニブルヘイムで見た死者の姿に近い。 正体不明の液体にベットリと濡れ、残った髪や衣服の残骸がまとわりついて不気味さを増していたが――細部が見えないのはかえって救いだったかもしれない。 イヒィ、イヒヒヒイイィィィ ゆらり、と立ち上がったその人物は引きつるような声を出して体を揺らす。 そして断末魔の動きを示す怪物へ ズババンッ 視線も向けずに矢のニ連射を撃ちこみ、ついでとばかりに蹴飛ばした。 地面に縫いとめられた怪物はそれで完全に沈黙する。 ウヒィ 『彼女』は天を仰いで満足そうに声を漏らした。 姿だけではなく行動も明らかに異常だ。 だがその手の弓を見るかぎり♀ハンターに間違いないらしい。 「よ、よかったな。あんまり無事じゃなさそうだけど一応助かっ――」 ♂騎士は声を掛けながら歩み寄ろうとする。 その途端、腫れたまぶたに半分隠れた眼が、ギロリ、と動いて彼を睨んだ。 そこに宿る異様な光。 イィイイッ 「っておいっ!?」 ♀ハンターは彼らに弓を向けて矢をつがえた。 その動きに何のよどみも躊躇もない。 ♂騎士はとっさに剣を盾にしながら身を投げ出し、直撃を避ける。 首筋をかすめてヒヤリとしたが傷は浅い。 同時に反応した♀騎士も身を翻して木立へ隠れようとした。 だが、その動作が一瞬止まる。 ドッ 鈍い音を立てて彼女の背に矢が刺さった。 「♀騎士!」 ♂騎士は思わず叫ぶ。 彼には♀騎士がなぜ動きを止めたのか見えていた。 彼女は身を翻した瞬間に気付いてしまったのだ。 自分が♀ハンターと♂モンクを結ぶ直線上に位置してることに。 「くそっ」 ♂騎士は2人の盾となるべく飛び出した。 しかしそれより早く次の矢が飛ぶ。 矢は♀騎士の右肩に刺さった。 正面から。 彼女はその場を逃げることではなく、攻撃を全て受け止めることを選択していた。 片膝をつき、ツルギを地面に突き立てて体を支える。 そしてシールドを体の前に。 イヒィ 「くぉっ」 次の矢は体ごと割り込んだ♂騎士の大剣が弾いた。 しかしそれを見た♀ハンターは数本の矢を一度に放つ。 着弾の衝撃で♂騎士の体が横へ弾きとばされた。 アローシャワーの威力は♀騎士にも及んだ。 だが地面に剣を突き立てて体を固定した彼女は動かない。 そんな彼女に♀ハンターは連射を浴びせかけた。 半数以上は盾に突き刺さって止まる。 だが隙間から♀騎士の脇腹や腕、脚へ命中する矢もあった。 それでも彼女は姿勢を崩さない。 「やめろっ!」 ♂騎士はもはや我慢できずに♀ハンターへ突進した。 彼らは命がけで彼女を助けようとしたのだ。 その当人に殺されようとするなんてこんな理不尽はない。 だが♀ハンターは余裕を持って次の矢から矢じりを外し、彼の胸元を狙い撃った。 ♂騎士はそれを大剣で受け止めるが、威力に数歩分押し戻される。 「くそっ、くそぉっ」 彼は我知らず涙を流していた。 人を助けようとした結果がこれか。 自分には誰も救うことができないのか。 ♀ハンターの弓が再び引き絞られた。 一発か、運がよければニ発ぐらいは避けられるかもしれない。 だがそれ以上は無理だ。 たぶん♀ハンターへたどり着くまでに致命傷を受けるだろう。 覚悟と言うより諦念に近いような気持ちに襲われつつも彼は走った。 と、♀ハンターの眼が一瞬横を向く。 次の瞬間、矢は彼の足に向けて放たれた。 「うわっ」 痛みは感じないものの、いきなり足に打撃を受けて彼は転倒する。 慌てて跳ね起きたときには射手の姿は消えていた。 「いったい…」 理由が分からず周囲を見回す彼の耳にガサガサと茂みをかき分ける音が聞こえた。 <♀騎士> 現在地:E-6 所持品:S1シールド、錐 、ツルギ 外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳 備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように 状態:JT2発・BB・矢多数被弾 背に切り傷 <♂モンク> 現在地:E-6 所持品:なし 外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更) スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁 備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷 戦闘場所より少し近くで気絶中 状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状 <♂騎士> 現在地:E-6 所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、カード帖(♀スパノビ遺品) 外見:深い赤の瞳 備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚    できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走    両手剣タイプ 状態:痛覚喪失?、体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。    必要とあらば、人間を殺すことを厭わなくなった? 仲間を守りたい <♀ハンター> 現在地:E-6(寄生虫体内) 所持品:スパナ、古い紫色の箱、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3] 外 見:全身の皮膚が半分溶けた異様な姿 スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング 備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり 状 態:発狂?全てを敵視 <ふぁる> 現在地:E-6 所持品:リボンのヘアバンド スキル:ブリッツビート スチールクロウ 備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇 状 態:JTによる負傷で気絶中 <寄生虫(寄生磯巾着?)> 現在位置:E-6 外 見:大きい紫色のヒドラっぽいもの(ペノメナ?) 備 考:♂ローグから孵り、捕食 両生類? 状 態:死亡 ---- | [[戻る>2-278]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-280]] |

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