「2-284」(2008/06/16 (月) 09:55:37) の最新版変更点
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284. 迷い道回り道 [3日目午前]
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ひたひた、ひたひた
♀商人はただまっすぐに進む。
自分の足音に追われるようにして。
木漏れ日の作る影におびえ、
風の鳴る音に身をすくませながら。
後ろを振り返るのが怖い。
振り返ればさっきの化け物がすぐそこに居るような。
目的地があるわけでもないのに、足取りは次第に速くなる。
ひたひた、ひたひた
視線は前へ向いていても、意識は後ろにばかり向かって。
だから声を掛けられるまで気付くこともできなかった。
「おい」
「ひっ!?」
突然行く手の木陰から現れた人影に彼女は硬直する。
よろめくように数歩あとずさり、しかしそれ以上は足が止まった。
戻れば「あれ」がいるかもしれない。
前門の虎後門の狼。
カチカチと歯が鳴り、手のひらに嫌な汗が湧いた。
カートの取っ手を握り締めている指を一本ずつこじ開けるようにして開き、手袋を外す。
そして――そのまま投げつけた。
「おっと」
難なく避けた男は面白くもなさそうに鋭い視線を返す。
「またか。今度こそ決闘したいとか言うんじゃないよな?」
不機嫌そうな口調。
だがそれを聞いた途端に♀商人の顔がくしゃっと歪んだ。
手足の力が抜けて地べたに座り込む。
「お、おい?」
男はそれまでの仏頂面を崩して狼狽をあらわにした。
あまりにも思うようにならない運命に苛立ってはいたが、根は善人らしい。
♀商人は彼の名を呼んだ。
「♂騎士さん、だったよね」
「ああ。1人なのか?仲間はどうした」
「……」
彼女の目から滴がこぼれる。
「おい、泣くなよ!……まいったな……」
無言で涙を流し続ける彼女を、やはり♂騎士は見捨てることができそうになかった。
******
「そうか…たいへんだったな」
泣き声まじりにつっかえつっかえ事情を打ち明けると、♂騎士はため息をついた。
「…なんであんなことしちゃったんだろ」
「どうしてだろうな…」
♂騎士は♀商人の頭をなでようとするように右手を伸ばしかけ、途中で引っ込めた。
子ども扱いするのを避けたのだろうか。
別によかったのに。
そんなことを思っていると、彼はじっと自分の手を見つめながらつぶやいた。
「俺も同じだ。勝手に追い詰められて、気がついたら取り返しのつかないことをしてた」
その手で刺してしまった♂アルケミストのことだろう。
だがその独白は♀商人の心にも厳しく響く。
しゅんとなってうつむく彼女を見て♂騎士は慌ててフォローした。
「でもさ、お前はそれで誰か死なせたわけじゃないんだろ?だったら大丈夫。人の命以外で本当に取り返しのつかないことなんかない。やり直せるさ」
「…………」
反発は、感じた。
そんな簡単じゃない。他の誰かに言われたなら、例えそれが♂セージだったとしても言い返していただろう。
でも今の♀商人には言葉の裏にある苦いものが見えてしまった。
人の命以外で本当に取り返しのつかないことなんかない。やり直せるさ。
――俺とは違って。
♂騎士が口にしなかった言葉を噛み締め、彼女はゆっくりとうなずいた。
「考えてみる」
「それがいい。仲間達のところまで送ろう」
「ううん」
その申し出には首を振った。
いくらなんでも逃げ出してすぐに戻るのは恥ずかしい。
それに
「まだ戻らないほうがいいと思うの」
「プライドを気にしてる場合じゃないだろ」
「そんなことじゃなくて」
確かなんかあったはず。バラバラに行動した方がいい理由。
半分聞き流していた♂セージの言葉を一生懸命思い出す。
「何かわけでもあるのか?」
「え?えーっと♂セージさんがね、…あ」
言っちゃいけないんだっけ。
危ないところで♂セージのやっていたことを思い出し、しゃがみこんで土に文字を書きはじめる。
『なんか装置?探してるの。岬にあるんだって』
「どうした?」
突然の行動に♂騎士は怪訝な顔で覗き込む。
♀商人は適当にごまかした。
「えーっと、こっち、かな?だったと思うから」
「…ふうん。それで?」
文字を読みとった♂騎士は、その部分だけ地面に書いた理由がわからず不思議そうな声で訊く。
「たぶん他のみんな動けないし、このまま探しに行こうかなって」
彼女がそう言うと、♂騎士はあからさまに仕方ないなという顔でため息を吐いた。
「分かった。これも何かの縁だ、手伝おう」
「ありがと」
どうも戻る決心がついてないだけと思われてる気がする。
感謝を口にしながら♀商人は思った。
もちろんそれもある。でも、だからこそ少しでもみんなの役に立つことをしてから戻りたい。
彼女は地面への文字を書き足す。
『あと、声聞かれてるからしゃべっちゃだめなんだって』
それを読んだ♂騎士は素早く姿勢を低くして四方へ視線を飛ばした。
近くに誰も居ないのを確認して同じく文字で質問する。
『誰にだ?』
『GM』
短く返事を書いた瞬間、♂騎士ののどが奇妙な音を立てた。
『先に書けよ。危ないだろ』
『ごめん』
もうちょっと詳しく説明しなくちゃいけないかな?
あんまり自信ないんだけど。
いろいろ訊きたそうな♂騎士の様子に♀商人は首をかしげた。
<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、錐、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
♀商人と同行 両手剣タイプ
状態:痛覚喪失? 体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
必要とあらば殺すことを厭わなくなった?
<♀商人>
現在地:E-6
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
♂騎士と同行 嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中 装置を探しに行く
<残り15名>
296 名前:名無しさん(*´Д`)ハァハァ 投稿日:2008/06/02(月) 03:12:58 ID:G7U4tlx2
何処に誰がいるのか解らなくなってきたので、チーム分けと状態説明(最後に出てきたと思われる部分)をまとめてみた。
・かしまし組(♂セージ待ち・ロシアンルーレット中)E-6
♂プリ・♂スパノビ・悪ケミ・♀アコライト&子犬・♀マジ・淫徒プリ
・♀ハンタvs♂セージ組(装置探し+負傷者回収)E-6
♀ハンタvs♂セージ・グラサンモンク・♀騎士・♂モンク・♀ケミ
・トラブル組(装置探し)E-6
♂騎士・♀商人
・♀WIZ(謎の地下室)
イレギュラー
・ふぁる(何処かに放置?♂騎士が連れてる??)E-6
・パピヨン・デビルチ(チーム結成後動きなし?)E-7
・子デザ(♀アコと同行)
♀ケミは>>285で状態説明が出てるが恐らく消し忘れと解釈、>>233の状態説明を使用。
読み返してみて解ったような解らんようなこととか
・カプラWはBRに参加させられたが最初のランダムテレポで死亡?
・GMは森:死亡/橘:生存だよね?
・+10スティックキャンディの説明書き
・悪ケミがシーフ系探してたような気がするけど・・・
◆かしまし組(♂セージ待ち・ロシアンルーレット中)>>285
<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている 仲間を襲う奴を止める
状 態:HPレッドゾーン脱出?
<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:HPSP共にレッドゾーン
<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミをやっつける ♀マジも助けたい
状 態:多少の傷 SPほぼ枯渇 寄生虫ロシアンルーレット状態 毒状態
<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに敵意 ♂スパノビに押さえられている
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し 寄生虫ロシアンルーレット状態
<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目
<淫徒プリ>
現在地:E-6(東の半島を目指す)
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱 食料二食
容 姿:女性プリーストの姿(csf:4h0l0b2) 美人
備 考:策略家。Int>Dexの支援型 ♀WIZに話したことで少し楽になる
♀商人・悪ケミと同行 ♀ケミを信じるべきか?
状 態:寄生虫ロシアンルーレット状態 SPほぼ枯渇
297 名前:296続き 投稿日:2008/06/02(月) 03:14:35 ID:G7U4tlx2
◆♀ハンタvs♂セージ組(装置探し+負傷者回収)>>233
<♀ハンター>
現在地:E-6
所持品:スパナ、古い紫色の箱、フォーチュンソード、オリデオコンの矢筒、+2バイタルシュールドボウ[3]
(所持品は全て寄生虫の体内にいたため痛んでいます)
外 見:全身の皮膚が半分溶けた異様な姿
スキル:ファルコンマスタリー、ブリッツビート、スチールクロウ、集中力向上、ダブルストレーピング
備 考:対人恐怖症、鳥と会話が出来る、純鷹師、弓の扱いはそれなり
状 態:発狂 自我崩壊
<♂セージ>
現在地:E-6
所持品:ソードブレイカー 島の秘密を書いた聖書 口紅
容 姿:マジデフォ黒髪
スキル:ファイアーボルト ファイアーボール ファイアーウォール ナパームビート ソウルストライク フロストダイバー
備 考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? GMジョーカーの弟疑惑 ♀ハンターと対峙
<グラサンモンク>
現在地:E-6
所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス 種別不明鞭
容 姿:csm:4r0l6010i2
スキル:ヒール 気功 白刃取り 気奪 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳
備 考:特別枠 右心臓 したぼく二号 悪ケミを護る ♀ケミに疑念 デビルチを警戒 ♀ハンターと対峙
状 態:掌と肩に打撲 SP微妙に枯渇
参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】
作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記)
<♂モンク>
現在地:E-6
所持品:なし
外見:アフロ(アサデフォから落雷により変更)
スキル:金剛不壊 阿修羅覇凰拳 発勁
備考:ラッパー 諸行無常思考 楽観的 刃物で殺傷
状態:腕に裂傷、JTを複数被弾、意識不明、通電によるショック症状
<♀騎士>
現在地:E-6
所持品:S1シールド、ツルギ
外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳
備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように
状態:気絶 負傷多数 重篤?
<♀アルケミスト>
現在地:E-6
所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) クロスボウ 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食
外 見:絶世の美女
性 格:策略家
備 考:製薬型 悪女 ♂スーパーノービスと合流したい(ひとりは怖い)
状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態 喉元に矢 毒 気絶 瀕死
◆トラブル組(装置探し)>>295
<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、錐、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
♀商人と同行 両手剣タイプ
状態:痛覚喪失? 体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
必要とあらば殺すことを厭わなくなった?
<♀商人>
現在地:E-6
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
♂騎士と同行 嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中 装置を探しに行く
◆動きが無い?
<♀WIZ>
現在地:謎の地下室
所持品:クローキングマフラー 未挿sロザリオ
ウィザードスタッフ DCカタール +7THグラディウス 多目の食料
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HPは半分くらい?
希望が見えてきて気持ちが前向きになるも♂シーフと死別して不安定に
<ふぁる>
現在地:E-6
所持品:リボンのヘアバンド
スキル:ブリッツビート スチールクロウ
備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視、♀ハンターと遭遇、置き去り?
状 態:JTによる負傷で気絶中
<デビルチ>
位 置:E-7
所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用)
備 考:悪魔 パピヨンと同行
<パピヨン>
現在地:E-7
備 考:ミストレスの魔力を一部受け継ぐ ノーマルより強い デビルチと同行
状 態:あちこちに軽症 撃退されてご立腹中?
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284. 迷い道回り道 [3日目午前]
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ひたひた、ひたひた
♀商人はただまっすぐに進む。
自分の足音に追われるようにして。
木漏れ日の作る影におびえ、
風の鳴る音に身をすくませながら。
後ろを振り返るのが怖い。
振り返ればさっきの化け物がすぐそこに居るような。
目的地があるわけでもないのに、足取りは次第に速くなる。
ひたひた、ひたひた
視線は前へ向いていても、意識は後ろにばかり向かって。
だから声を掛けられるまで気付くこともできなかった。
「おい」
「ひっ!?」
突然行く手の木陰から現れた人影に彼女は硬直する。
よろめくように数歩あとずさり、しかしそれ以上は足が止まった。
戻れば「あれ」がいるかもしれない。
前門の虎後門の狼。
カチカチと歯が鳴り、手のひらに嫌な汗が湧いた。
カートの取っ手を握り締めている指を一本ずつこじ開けるようにして開き、手袋を外す。
そして――そのまま投げつけた。
「おっと」
難なく避けた男は面白くもなさそうに鋭い視線を返す。
「またか。今度こそ決闘したいとか言うんじゃないよな?」
不機嫌そうな口調。
だがそれを聞いた途端に♀商人の顔がくしゃっと歪んだ。
手足の力が抜けて地べたに座り込む。
「お、おい?」
男はそれまでの仏頂面を崩して狼狽をあらわにした。
あまりにも思うようにならない運命に苛立ってはいたが、根は善人らしい。
♀商人は彼の名を呼んだ。
「♂騎士さん、だったよね」
「ああ。1人なのか?仲間はどうした」
「……」
彼女の目から滴がこぼれる。
「おい、泣くなよ!……まいったな……」
無言で涙を流し続ける彼女を、やはり♂騎士は見捨てることができそうになかった。
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「そうか…たいへんだったな」
泣き声まじりにつっかえつっかえ事情を打ち明けると、♂騎士はため息をついた。
「…なんであんなことしちゃったんだろ」
「どうしてだろうな…」
♂騎士は♀商人の頭をなでようとするように右手を伸ばしかけ、途中で引っ込めた。
子ども扱いするのを避けたのだろうか。
別によかったのに。
そんなことを思っていると、彼はじっと自分の手を見つめながらつぶやいた。
「俺も同じだ。勝手に追い詰められて、気がついたら取り返しのつかないことをしてた」
その手で刺してしまった♂アルケミストのことだろう。
だがその独白は♀商人の心にも厳しく響く。
しゅんとなってうつむく彼女を見て♂騎士は慌ててフォローした。
「でもさ、お前はそれで誰か死なせたわけじゃないんだろ?だったら大丈夫。人の命以外で本当に取り返しのつかないことなんかない。やり直せるさ」
「…………」
反発は、感じた。
そんな簡単じゃない。他の誰かに言われたなら、例えそれが♂セージだったとしても言い返していただろう。
でも今の♀商人には言葉の裏にある苦いものが見えてしまった。
人の命以外で本当に取り返しのつかないことなんかない。やり直せるさ。
――俺とは違って。
♂騎士が口にしなかった言葉を噛み締め、彼女はゆっくりとうなずいた。
「考えてみる」
「それがいい。仲間達のところまで送ろう」
「ううん」
その申し出には首を振った。
いくらなんでも逃げ出してすぐに戻るのは恥ずかしい。
それに
「まだ戻らないほうがいいと思うの」
「プライドを気にしてる場合じゃないだろ」
「そんなことじゃなくて」
確かなんかあったはず。バラバラに行動した方がいい理由。
半分聞き流していた♂セージの言葉を一生懸命思い出す。
「何かわけでもあるのか?」
「え?えーっと♂セージさんがね、…あ」
言っちゃいけないんだっけ。
危ないところで♂セージのやっていたことを思い出し、しゃがみこんで土に文字を書きはじめる。
『なんか装置?探してるの。岬にあるんだって』
「どうした?」
突然の行動に♂騎士は怪訝な顔で覗き込む。
♀商人は適当にごまかした。
「えーっと、こっち、かな?だったと思うから」
「…ふうん。それで?」
文字を読みとった♂騎士は、その部分だけ地面に書いた理由がわからず不思議そうな声で訊く。
「たぶん他のみんな動けないし、このまま探しに行こうかなって」
彼女がそう言うと、♂騎士はあからさまに仕方ないなという顔でため息を吐いた。
「分かった。これも何かの縁だ、手伝おう」
「ありがと」
どうも戻る決心がついてないだけと思われてる気がする。
感謝を口にしながら♀商人は思った。
もちろんそれもある。でも、だからこそ少しでもみんなの役に立つことをしてから戻りたい。
彼女は地面への文字を書き足す。
『あと、声聞かれてるからしゃべっちゃだめなんだって』
それを読んだ♂騎士は素早く姿勢を低くして四方へ視線を飛ばした。
近くに誰も居ないのを確認して同じく文字で質問する。
『誰にだ?』
『GM』
短く返事を書いた瞬間、♂騎士ののどが奇妙な音を立てた。
『先に書けよ。危ないだろ』
『ごめん』
もうちょっと詳しく説明しなくちゃいけないかな?
あんまり自信ないんだけど。
いろいろ訊きたそうな♂騎士の様子に♀商人は首をかしげた。
<♂騎士>
現在地:E-6
所持品:S1少女の日記、カッツバルゲル、錐、カード帖(♀スパノビ遺品)
外見:深い赤の瞳
備考:GMの暗示を屈服させた?、混乱して♂ケミを殺害 心身の異常を自覚
できれば♂ケミを弔いたい、誤解から♀Wiz達と小競り合いの末逃走
♀商人と同行 両手剣タイプ
状態:痛覚喪失? 体力は半分以下 精神は安定? 個体認識異常を脱する。
必要とあらば殺すことを厭わなくなった?
<♀商人>
現在地:E-6
所持品:店売りサーベル、乳鉢いっぱい、カート、100万以上のゼニー 食料二食
容 姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備 考:割と戦闘型 メマーナイトあり? ♂セージに少し特別な感情が?
♂騎士と同行 嘘が大騒ぎになり自己嫌悪中 装置を探しに行く
<残り15名>
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