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番外編! あの世だよ! 全員集合っ!後編」(2007/07/16 (月) 00:54:19) の最新版変更点

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バドスケは少し疲れたので、砂浜で一休み。 その間にもアラームと♀アサシンは楽しそうに川ではしゃいでいる。 「あははー! バドスケさーん! 川のお水冷たいよー!」 「えへへー、ほーらアラームー!」 ばしゃーっと水をかける♀アサシン。 「きゃっ。もーお返しですー!」 ばしゃばしゃーっと水をかけ返すアラーム。 二人は心底楽しそうであった。 そんな二人を微笑ましい表情で見守るバドスケ、そしてその隣に、色んな事に絶望しきった♂プリーストが居た。 「……何をどうしたら俺がこんな目に遭うハメになるんだ?」 「なんだ♂プリ。何か嫌な事でもあったのか?」 全然応えてないバドスケに、♂プリは魂の底から叫んだ。 「お前なー! 砂浜で『あははーまてまてー』なんて大技かましちまった挙げ句! 水のかけっことかもー自殺もんのイベント突破しちまったんだぞ! どーやって生きていきゃいいんだ俺はこの先!」 「……いや既に容赦なく死んでるだろお前。てか、そんなに嫌だったのか?」 「それ以前の問題だ! 人としての尊厳に関わる程の重大な危機を迎えてるんだ俺は! この上♀アサが俺の事呼んで更なるイベント強要してきたらと思うと……」 「♂プリ見て見てー! 砂のお城ーお城ー! ほらアラームはそっちから穴開けて、トンネルよー」 「はいー。うっせ、うっせ……わあ、繋がりましたー」 「繋がった繋がった~♪ アラームの手ってちっちゃくて可愛いね~」 「♀アサさんの手は、とっても柔らかいです♪」 跪いてしまった♂プリに声をかけるバドスケ。 「あの満面の笑みに逆らえるかお前?」 「㍉……いくら掟が無くなったからって、童心に返るにも程があるだろ♀アサ……」 ごく自然にトンネルに水を通す事になり、その水を掬ってくる大役を仰せつかった♂プリは秋菜との決戦に向かった時以上に悲壮な表情を浮かべ、とぼとぼとそちらに向かって行った。 「まったく。素直にあいつも楽しめば……」 そこまで言ったバドスケは、真後ろに何やら殺気を感じた。 座っていたバドスケは、即座に立ち上がり振り返る。 「火?」 「ファイアーーーーーーーーー!!」 バドスケの顔面に、燃えさかる♀ローグの足による飛び回し蹴りが炸裂した。 「っだーーーー! 顔っ! 顔が燃えるっ!」 顔面中から炎を吹き出しながら、バドスケは川に駆け込む。 同時に♀ローグも川に飛び込むと、ようやく一息付けた。 「はふ~、熱かった~。もーいきなり炎なんて卑怯じゃない……」 ざばーっと勢いよく川から顔を出すバドスケ。 「熱かったーじゃねーだろ! いきなり何しやがんだローグ姐さん!」 「いや、なんか走ってたらバドスケが居たからつい」 「ついじゃねー! 俺もアンデッドで燃えやすいんだから火なんて使うな!」 むすっとした顔で♀ローグは言う。 「何よ、文句ならファイアーウォールなんて使った♀セージに言いなさい……ってあら?」 これだけの大騒ぎながら、アラームも♀アサシンも砂のお城に夢中で全然こちらに気付いて居ない。 そんな♀アサシンを見た♀ローグの表情が猛禽類のそれになる。 「あらあらあらあら♀アサシンちゃん、こんな所に居たのね……」 軽く手を振ると、その手にダマスカスが握られる。 水から上がり、一歩一歩と♀アサシンに近づく♀ローグ。 「お、おいローグ姐さん。今は……」 ♀ローグにはバドスケの声なぞ届いていない。 ♂プリーストがすぐに気付いて、♀ローグの前に立ち塞がる。 「おい、あんた何する気だ?」 「もちろん♀アサとケリ付けるのよ……邪魔する気?」 「おおよ。グダグダ言ってるのは性に合わねえ。とっとと来な」 ♂プリーストの話の早さに、♀ローグはやはり、笑う。 最早口を開く気も無い。お互い隙を伺い、その一瞬を待つ。 「あはははっ、じゃあ今度は私がお姫様~」 「はいー、じゃあ私が王子様やりますー。ああ、私の愛しの姫は何処に居るのかな……」 「王子様、私は一日千秋の想いで待ち続けております~……ってきゃー恥ずかしいー!」 「ね、やっぱり恥ずかしいですよ~。じゃあ今度は……」 バドスケは、♀ローグのこんな顔を見た事が無かった。 「ローグ姐さん、大丈夫か?」 「……バドスケ。あれは一体何?」 「いや、遊んでるだけじゃねーの?」 イマイチ♀ローグの望む内容ではなかったので、今度は♂プリーストに訊ねる♀ローグ。 「ねえ♂プリ。あの♀アサシンのザマは一体何?」 「あいつさ……ずーーーーーーーーーっと遊んだ事無かったんだってさ。だからああやって遊べるのが楽しくてしょうがないんだそうだ」 「そう……ごめん♂プリ。私死ぬほどヤル気無くなったわ」 「俺もだ。てかあんた早く逃げないと……」 「あーー!! ♀ローグじゃない! 一緒にこっち来なよー! 今度は砂でダム作るのよー!」 「一緒にやりましょう♀ローグさん! ♀アサシンさんは、そっちから水引っ張ってきてくださいー」 「はーい、んじゃ、んじゃ、♀ローグはダムに穴開ける役やらせたげるね。けっかいだーって」 「うんうん、一番楽しい所ですよー♪」 ふと、♀ローグは♀アサシンと一緒に砂遊びをしている自分を想像してみた。 「……………………。」 恐怖、そんな感情がまだ自分に残っていようとは。 ♀ローグは、心底♀アサシンを恐れ、そしてこの誘いをいかに断るかに全身全霊を傾けた。 「わ、私は、その……」 その横で、意を決した♂プリーストが言う。 「おいおい、待てよ。決壊なら俺にやらせろよ。そーいうの俺得意なんだぜ♪」 その言葉に♀ローグが驚愕する。 そんな♀ローグに、♂プリーストは覚悟を決めた顔で一度肯くと、親指を立てて見せた。 「おーし、俺に任せろい!」 そう言いながら走り去る♂プリーストの背中。♀ローグにはそれがとてつもなく大きく見えたのだった。 「良い男だねぇ……あんた。最高にかっこいいよ」 感動の余り涙までこぼす♀ローグ。 そう、♀ローグの魂は♂プリーストの身を挺した犠牲により救われたのだ。 二人のやりとりを見ていたバドスケはぼそっと呟いた。 「お前等もお前等でなんだかんだ言いつつ、結構楽しんでるんじゃね?」 昼寝から♂ノービスが目覚める。 周囲を見渡しても、誰も居ない事がわかると、何処へともなくてくてくと歩き出した。 すぐに一人の人物が見つかった。 「あ、♀プリーストさーん」 手を振る♂ノビ。だが、その声に気付いて振り返った♀プリーストの顔を見て表情が凍り付く。 死の際でさえも絶える事の無かった、♀プリーストの慈愛の心、それの現れである穏和な表情が消え、魂が抜けたかのように彼女は立ち尽くしていた。 「ど! どうしたんですか♀プリーストさん!」 駆け寄る♂ノビに、♀プリは掠れる声で応えた。 「……いえ、それよりノービスさんは良く眠れましたか?」 この期に及んで♂ノビを気遣うその姿勢には頭が下がる。 「ぼ、ぼくより♀プリーストさんの方が大変そうじゃないですか! 何かあったんですか?」 顔をそむける♀プリースト。 「何も……ただ……♂ローグさんとお話が出来なかっただけですよ」 「そうなんですか? それなら僕が探してきま……」 「いいんです!」 即座に返って来た♀プリーストの返事は、彼女らしからぬ強い口調で、その声に♂ノビは驚いた顔になる。 ♀プリーストも♂ノビの表情に気付いたのか、慌てて言い直す。 「♀クルセさんが、今お話してる最中ですから……お邪魔してはと席を外しているのです」 「そ、そうですか」 「ずっと一緒にいらした方ですから、積る話もあると思いますし……私は♂ローグさんとは少し言葉を交わしただけですし……」 話を聞く限りでは、そんなに問題のある事に思えなかった♂ノビは、少し安心した。 「そうですか、ずっと一緒に居たんならしょうがないですよ。あ、もしかして♂ローグさんと♀クルセさん、恋人同士とか? それじゃあ確かに席を外した方が……」 それ以上は言えなくなってしまう♂ノービス。 ♀プリーストが顔を両手で覆って泣き出してしまったからだ。 「どどどどどーしたんですか!?」 「そうですよね……♂ローグさんと♀クルセさんの二人で交わした約束、私の入り込む余地なんて無かったんです。それなのに私、バカみたいに期待して、それで勝手に落ち込んで……」 ようやく鈍い♂ノービスにも事態が把握出来た。 そして、自分がとんでもなくデリカシーに欠けていた事に気付き慌てる。 「そそそそそ、そんな事無いですよ。そ、その、ほら、約束なんて普通にしますし。そんな……」 「♀クルセさんは女の私から見ても、とても可愛らしい、素敵な方です。♂ローグさんが惹かれるのも……わかります」 「そんな事無いですよ! ♀プリーストさんだってそんなに綺麗じゃないですか!」 「私なんて……」 自虐に入る♀プリーストに、♂ノービスは力説する。 「綺麗だし、優しいし、どんなに苦しくても他人の事を思いやれる♀プリーストさんが魅力的でないなんて事あるわけないですよ!」 「……ノービスさん」 「そんな♀プリーストさんが見守っててくれてるって事が、どれだけ僕を勇気づけたか、僕が頑張れたのも♀プリーストさんのおかげですよ!」 必死に主張する♂ノービスに、♀プリーストが笑みを取り戻していく。 「♀プリーストさん、僕が今まで会った女の人の中で、一番綺麗ですよ。絶対です!」 からんからーん 少し離れた場所で何か大きい物が落ちる音がした。 「あれ? あ、師匠! 師匠も……」 みなまで言わせず♀剣士は何故か慌てた口調で、言った。 「しょ、食事を作ったので持ってきたのだが、居なかったので探していたのだ。じゃ、邪魔をしたな……失礼する」 そう言い捨てると、即座にその場から走り去る♀剣士。 「へ? あ、師匠?」 ♀プリーストも一緒に呆気に取られていたが、状況を脳内で整理すると、とてもまずい事態であると気付く。 「あああ! もしかして誤解してます!?」 「へ?」 呆気に取られっぱなしの♂ノービスの両肩を掴む♀プリースト。 「すぐに追いかけてください!」 「へ? へ? あの、一体何が?」 「とにかく追いかけて誤解を解くんです! 早く!」 「は、はい」 ♀プリーストの勢いに、♂ノービスは肯いて、後を追っていった。 一人取り残された♀プリーストは、木の幹に寄りかかりながらその場に腰掛ける。 「は~~~。何処もうまくいかないもんですね~」 『何故逃げる必要がある? どうして私は走っているのだ?』 自問自答する♀剣士。だが、どんな理屈をこねようと、♀剣士はあの場にあれ以上居たいとは思わなかった。 二人が見えなくなる場所まで走り、立ち止まると息を整える。 こんなにまで息の切れる走り方をしたのは、いつぶりであろうか? 今この時、敵に襲われでもしたら、♀剣士は全力を出す事すら出来ずに打ち倒されるであろう。 そんな隙を見せてしまう、♀剣士にとって許し難い事であった。 近くの木の幹に拳を叩きつける。 『何をしているのだ私は!』 「師匠!」 突然聞こえてきた♂ノビの声に、♀剣士は心臓がひっくり返る程驚いた。 「しょ、少年……」 そして、その事に心から安堵している自分に戸惑っていた。 「どうしたんですか師匠……はぁ、はぁ……いきなり走り出すなんて……追っかけるこっちの身にもなってくださいよ~」 息を切らして歩み寄る♂ノービス。 「少年こそ、そちらの話はいいのか?」 「いやそれがですね。♀プリーストさんが誤解を解いて来いって……僕にも良くわかんないんですけど、どういう事なんでしょう?」 その言葉に♀剣士は目を大きく開いて、絶句する。 「……師匠? どうかしたんですか?」 ♀剣士の腹の底から、笑いがこみ上げてくる。 「くっくっく……はっはっは、そうか誤解か……はっはっはっはっは」 「師匠?」 「いや、私もまだまだ修行が足りないと思ってな。そうかそうか……♀プリーストにも気を遣わせてしまったな」 「あ、あの師匠。僕良く話が見えないんですけど……」 「いいんだ、少年は今はそれでいいんだ」 首を傾げる♂ノービス。二人には分っているようだが、自分には全くわからないのが悔しくて、少し考えてみた。 「ん~。誤解誤解……」 「こらこら、あまり深く考えるんじゃない」 「そうだ! もしかして師匠!」 ♂ノビの思いつきに、一瞬びくっと体を震わせる♀剣士。 「師匠も♂ローグさんが好きとか!?」 「……何?」 「いや、だから師匠も♂ローグさんが好きなのかなーって。ほら、あの人かっこよかったですし」 「何故私が、話もした事の無い男に惚れねばならんのだ」 「む~。じゃあ……♂プリーストさんとか! ほら、なんかああいう感じの人って師匠のタイプっぽいし!」 「そもそも、少年は私の好むタイプを知らんだろう」 「そりゃまあそうですけど……じゃあヒント下さい! 師匠のタイプってどんな人なんですか!?」 「だから、何をどうしてそういう話になるんだ……」 「そうですね~。後は……奇をてらって♂アサシンさんとか!」 ♀剣士は最早応えず、そっぽを向いてこめかみを押さえる。 『何故そこで自分という選択肢が出ぬのだ少年!』 まだ色々候補を上げ続ける♂ノービスを見ながら、深く溜息を付く♀剣士であった。 ♂ハンターは河原の岩に腰掛け、♀マジと談笑していた。 礼儀正しく、折り目のきちっとした♂ハンターの言動は、♀マジにとってとても好感の持てるものであった。 ふと、♀マジは気になって♂ハンターに訊ねた。 「♂ハンターさんって素敵ですね。きっと彼女さんとかも可愛いらしい方なんでしょうね」 「ん? 俺、彼女は居ないよ。ハンターってそんなにモテないから……」 ♀マジは♂ハンターの言葉にムキになって言う。 「そんな事無いですよ! ♂ハンターさんかっこいいですから、きっと素敵な彼女が出来ますよ!」 勢いこんでそう言う♀マジに♂ハンターはさわやか満点スマイルで応えた。 「はは、ありがとう。君みたいに可愛い子がそう言ってくれると自信つくよ」 間髪入れない切り返しに、♀マジは頬を染めて俯く。 『か、可愛い……って私? やだ、どうしよう!』 そーっと顔を上げて♂ハンターを覗き見る♀マジ。 「ん?」 やはり、先ほど同様の笑みを見せてこちらを見ている♂ハンター。 まともに顔が見れなくなった♀マジは更に俯いてしまった。 『こ、こっち見てる! どーしよっ! 照れちゃいます~!』 どどどどどどど 「ん? 土煙?」 ♂ハンターが周囲の異常に気付いたが、♀マジは全く気付かずに立ち上がる。 「わ、私何か食べる物取ってきますね!」 「あ、そっちは……」 ♂ハンターの返事も聞かずに走り去る♀マジ。 「待てい♀ハンター! 今すぐこの深淵の騎士子が成敗してくれるわ!」 「あーーー!! なんでこんなにダッシュしてるのにアンタは平然とはあはあしてるのよ!?」 「テカテカの騎士子タンボディから飛び散る汗(*´Д`)ハァハァ 」 「あんな無茶な拷問メニュー見せられて逃げない奴なんて居る訳ないでしょっ!!」 「許さないぞ♀ハンター! ってアコ! 今は♀ハンターを捕まえるのが先決でその事は後回しにしろよ!」 「うはwwww今こそwwwwエロケミ断罪の時!1!!!wwwwwwニゲルナwwww!!」 ♀マジは暴走集団にあっさりとひかれ、宙を舞う。 呆然と見上げる♂ハンターの真上を飛び越え、どぼーんと川に落っこちる。 ♂ハンターはしばらく通り過ぎる集団を見ていたが、はっと我に返り、落っこちた♀マジに声をかける。 「だ、大丈夫?」 なんとか水中から顔を出した♀マジは、川から這い上がろうとしていたが、ここらは岩が多く、なかなかに苦労していた。 見かねた♂ハンターが、岩の上から手を伸ばし、♀マジを引き上げてあげる。 「す、すみませんでした……」 全身びしょ濡れになりながら、♀マジはそう言うが、♂ハンターは返事をしない。 その視線が、いつもは顔なのに、今は少し下に向かっている。 それに気付いた♀マジは、再度真っ赤になり、すぐに♂ハンターも気付いて目を逸らす。 「ご、ごめん……」 「い、いえ……」 ♀マジの心臓が高鳴る。 『っきゃー! 見てた? もしかして私の胸見てた!?』 ちろっと♂ハンターを見上げると、♂ハンターの端正な横顔が見える。 短い髪がきらきらと風になびく様、そして礼儀正しい中に見せた、ほんの少しの男の子の部分。 ♂ハンターが口を開く。 「ねえ、君ってさ」 「は! はい!」 「案外…………重いんだね」 どうやら、♂ハンターが見ていたのは、♀マジのお腹らしかった。 「ばかーーーーーーーー!!」 ♂ハンターも♀セージ同様『天然(←悪意が無ければ何を言っても良いと思ってるの意)』であるようだ。 ♀ノビは林の中を必死に逃げ回っていた。 「おいおい子猫ちゃん。せっかくこんな所で会えたんだから、素直に仲良くやろうぜ~」 着実に距離を詰めながら追いかけているのは、悪♂GMであった。 「こ、来ないでー!」 悪♂GMならば、瞬時に♀ノビを追いつめる事も可能だ。 だが、それは彼の趣味に反する。楽しみは出来るだけ長い時間をかけて楽しむのが彼のモットーだった。 追いつめるに最適な場所の目星をつけ、そちらに誘導するよう追う。 冒険の経験も少ない♀ノビは、おもしろいように誘導されてくれる。 「しょっぱな秋菜に真っ二つ。んで次は俺様が相手た~……大した星の元に生まれたみたいだね~あんた」 この男にも、他人の身の上を考える事は出来るようであったが、それは、更なる加虐の想いを引き出すだけであった。 これだけの悪意に満ちた男が、もしゲームに参加していたら。 秋菜はそう考えて彼を放り込んだのだが、相手が悪く瞬殺。いたく失望したというのは彼の知らない事実であった。 「行き止まり!? ひっ! き、来たっ!」 ♀ノビの悲鳴にほくそ笑む悪♂GM。 彼女の必死な様が、彼にその優位性を確信させ、更なる悪行へと走らせるのだ。 「こいつは参ったね~♀ノビちゃん。んじゃーそろそろ……」 「アンタそこ邪魔!」 振り向いた悪♂GMの顔面に、♀ハンターの足の裏がぶち当たる。 そして♀ハンターは♀ノビの手を引き、追っ手に向けて盾代りにする。 「これ以上近づいてみなさい! このノービスがどーなるか……」 追っ手はそれを見て足を止める。 「くうっ、卑怯なっ!」 「往生際が悪いわよ!……だからはあはあしないでって言ってるでしょ!」 「(*´Д`)ハァハァ  ……は、走りすぎて疲れた……(*´Д`)ハァハァ 」 「……真面目に疲れてるのね。紛らわしいのよあなたはっ!」 「(*´Д`)ハァハァ (*´Д`)ハァハァ (*´Д`)ハァハァ (*´Д`)ハァハァ 」 「人の周りをぐるぐる下からなめ回すよーに覗きながら呼吸を整えるなっ!」 しかし、それらと無関係に走り続けていた二人は、止まらなかった。 「だーーーーーーから! あの時深淵さんとは何も無かったんだってば!」 「しwんwじwらwれwるwかwwwっww!!1!!」 状況を無視して突貫してくる二人。 「ちょ、ちょっとあんた達人質が見えない……」 ♂ケミは、一直線に♀ハンターに向かい、逆毛はその後を追いながら、両足を宙に舞わせる。 「天誅wwwwドロップwwwwwキックっ!!wwwwwwうぇ!!」 ♂ケミはタイミングを合わせてしゃがみ込むと、逆毛はそれを狙っていたかのように、その上を綺麗に飛び越えて行った。 「へ? ってきゃーーーーーー!!」 そのドロップキックは器用に♀ノービスを避けて、見事に♀ハンターに炸裂。 後は深淵達に任せれば、♀ハンターの確保はやってくれるだろう。 「へへっ、見事決めたなアコ」 「うはwwwww俺達wwww斎京っ!!」 二人は陽気にハイタッチ。 だが、そのすぐ後ろから♀ハンターの逃げ出す音がした。 「あれ?」 その頃の深淵と♀騎士は。 「で、あの時って何? あのケミ君とどうだったの? ケミ君優しかった?」 「へ? いいいいいい一体なななななにを言い出すのだっ!?」 そんな♀騎士の真後ろには、地面に垂直にかつ逆さまに突き刺さった♂騎士が居た。 地中深くまで上半身をめりこませ、彼はとても苦しそうだ。 「何かあったんでしょー? 岩場の影に隠れてこっちから見えなかったけど……あったんでしょ? ね、正直に言いなさいって」 「ななな何かって!! ……いや、その……ずっと一緒に……その……」 「一緒に。うんうん、で、その先は?」 「そそそそんな恥ずかしい事言えるか!」 ♂ケミの隣が、妙に涼しい気がした。 「ヤラレル前にやれ! 先手必勝!」 そう叫びながら逆毛の居るとおぼしき所にハイキックをかます♂ケミ。 「そwれwをwまwっwてwいwた!!」 低い姿勢でそれをかわしながら懐に踏み込む逆毛。 ハイキックがスカった勢いで後ろを向いてしまう♂ケミ、そしてその真後ろに立ち、胴を後ろから両腕でしっかりとクラッチする逆毛。 『ひっかかった!? まさかこれが……バ ッ ク ド ロ ッ プ ! これを僕がやられてるんだー』 『すんごいスピード……うわ、空が見える……あ、地平線だー……って近いっ!? 地面ぶつかる受け身無理……』  ずどーーーーーん!! かんかんかんかーん! どうやってか地面から抜け出した♂騎士がゴングを鳴らす。 「あ~らら、ケミ君ノックアウト。で、そこの深淵はどーするの?」 ラブラブな展開を期待してそう聞いた♀騎士だが、深淵の騎士子さんはそれどころではなかった。 「そ、そうは言うがな、やはりこういう事はきちっと順序立てて、まずはカリツ殿に紹介し……」 「うっわ、痛い物見ちゃったーな視線の騎士子タン(*´Д`)ハァハァ」 「そうだ! 交換日記もまだであった! そ、そそそれから、見合い、結納を経て、けっ、けけっけけけっこ……言えるかーーーー!!」 「哀れむような、蔑むような目の騎士子タン(*´Д`)ハァハァ 」 「まずは人の話を聞くことから始めなさい貴方達は……」 さりげなーく、♀ノビ連れてこの場を逃げようとしていた悪♂GMの後頭部に、延髄蹴りをかましながら、♀騎士はそう呟いたのだった。 ♀プリーストが席を外すと、♂ローグと♀クルセの二人はなんとはなしに黙り込んでしまった。 「…………」 「…………」 改めて二人っきりになると、どちらにとっても、どうにも居心地の悪い物らしい。 しかし、こういう時に強いのはやはり女性であるようだ。 「な、なあ♂ローグ」 「お、おう。なんだ?」 「その、約束の事なんだが……」 「…………」 ♀クルセは顔を伏せる。 「このような事になってしまって、約束も何も無い……と思う。出来れば二人で生き残りたかったが……私の力不足だ。すまない♂ローグ」 「…………」 「もっと私に力があれば……クルセイダーの守る力がありながら、私は誰も守れはしなかった。……無念だ」 ♂ローグは相変わらずイスに縛り付けられたままで、わざとらしく大きな溜息をついてみせる。 それは♂ローグの呆れともとれ、♀クルセは更に小さくなり黙りこくってしまった。 「よう♀クルセ。お前はさ、今回のこの旅、楽しくなかったか?」 「旅?」 「そう。あじゃこや子バフォやアラーム達としてきた旅だ。俺は結構楽しかったぜ」 「…………」 「こーなっちまったのは結果だ。しゃーねーさ、受け入れるっきゃねえ。でもさ……」 ♀クルセは顔を上げて♂ローグの顔を見る。 「クソみてーな事も山ほどあったけどさ、俺はこの旅、案外悪くなかったって思ってるぜ」 ♂ローグは、いつも通りの、あの少しおどけたような顔で笑っていた。 だから、♀クルセもいつも通り、素直に自分が思った事を口に出来た。 「ああ、私も楽しかった」 ♂ローグは満足気に肯く。 「じゃーそれでいいじゃねえか」 「そうだな。それでいい、充分だ」 ♀クルセの胸に、暖かい物が流れ込んでくる。 それは、どんなに苦しく、悲しい時でも、それら全てを吹き飛ばす。 それを為す彼は、いつも通り自然に生きている。それだけであるのに、♀クルセはこんなにも幸せになれる。 「♂ローグ、お前はやはり凄い男だ。心から尊敬する」 「けっ、おだてたって何も出ねーぞ」 「おだてではない。私は、そんなお前を……」 今なら自然に想いを口に出来る。そんな気がした。 「ききききっさまー! 最早許さん! 今度こそ成敗してくれるわ!」 「何よ! 変にかわしたせいで、服破けて無い胸見えそうになったのはあんたのミスでしょ!」 「無い胸とはどういう意味だーーーーーー!!」 「そこは事実よ認めなさい」 「容赦なくクールは騎士子タン(*´Д`)ハァハァ 」 「待てアコ! よーーーくもやってくれたなーーー!! 泣きそうなぐらい痛かったぞ今の!」 「うはwwwwwアルケミマジギレwwwwwテラコワスw!!1!!!」 「ぶひひっぶっひひーん(呼び出しといて、まーたお嬢乗らないんだもんな~。まあ♀ノビ可愛いから許すけど)」 「はいよーしるばー♪ はやいはやーい♪」 「お前等ー! 人をロープでくくりつけた挙げ句、馬に引っ張らせるなんてそれが人間のやること……ぎゃーーーーー!!」 それが、当然の帰結であるかのごとく、♂ローグはイスごと全員に踏みしだかれた。 「えっと……♂ローグ? 無事か?」 「……俺が一体何をした?」 イスも粉々になってくれたおかげでロープはほどけたが、やはり動けそうにない♂ローグであった。 ♂ノービスは、♀剣士の薦めで川辺に行ってみる事にした。 川側の風はとても心地よく、一休みに最適との事だ。 林を抜けると、すぐに川のせせらぎが聞こえてくる。そして同時に楽しそうな笑い声も聞こえてきた。 「誰か先客居るんですかね?」 「そのようだ。しかし……何故川辺に砂浜?」 「さあ? ああっ! あれ♀アサシンさん! ♂プリーストさんも!」 ♂ノービスは彼らに向かって駆けだした。 「あ~楽しかった~。じゃあ次は何しよっかアラーム? また泳ぐ? それとも……」 ふと自分を呼ぶ声に気付いた♀アサシンは♂ノービスをその視界に収めた。 「あら? あれノービス君?」 「こんにちはー! ♀アサシンさん!」 そう言いながら♀アサシンの側まで駆け寄ってくると、そこで荒い息を整える。 「あなたには文句の一つも言いたかったのよ。良くもまあ面倒を押しつけてくれたわね~」 「ご、ごめんなさい。でも、ありがとうございました! 僕、あの後♀アサシンさんが♂プリーストさんと一緒に戦ったって聞いて本当に嬉しくて!」 「そうなの?」 「はい! 師匠から受け継いだ物、更に後に引き継いでくれる人が居てくれたんです。僕なんてただのノービスなのに、♀アサシンさんみたいな凄い人に想いを継いで戦ってもらえて……」 そこまで言って感極まったのか、涙目になる♂ノビ。 何と応えていいものやら反応に困る♀アサシン、その肩を叩く♂プリースト。 「お前の事褒めてんだ。ありがとうの一言ぐらい言ったらどうだ?」 「え? あ、うん。あ、ありがと」 ♂ノビは♂プリーストを見ると、更に深々と頭を下げる。 「すみません。あんなえらそうな事言っておきながら、僕早々にリタイアしちゃって。♂プリーストさんはその後も頑張ってくれたのに……」 「お前の覚悟が凄かったから、俺も本気になれたんだ。♀アサシンだってそうさ、みんなお前の力だよ」 「へ? そうなの? いや私は単にTCJ……」 べしーっと♀アサの足を踏みつける♂プリースト。 ♂ノビは、もう零れる涙が止まらずに、嗚咽を漏らし始めていた。 そんな♂ノビに優しく声をかける♀剣士。 「少年、良い出会いに巡り会えたようだな」 ♂ノビは服の袖で涙をぬぐって大きく肯いた。 「はい!」 「…………」 バドスケと♀ローグは並んで河原に座って、その様子を見ていた。 「あんたは行かないのかい?」 「どの面下げて行けってんだよ」 「……そうかい」 ♀ローグはパイプタバコをぷかぷかふかしながら、♂ノビの様子をじーっと見つめる。 アラームも含めた、五人の会話は楽しげで、そして互いに対する敬意に満ちていた。 「ふん……」 突然立ち上がる♀ローグ。 「ん? どーした姐さん?」 大きく息を吸い込むと、声を限りに大声で叫んだ。 「おーーーいそこのノービス!! バドスケが何か話があるってよーーーー!!」 「ば、ばかやろう! 何言い出すんだいきなり!」 大声に驚いた♂ノービスは、バドスケを見つけると、すぐさま駆け寄ってくる。 「ちょ、ちょっと待てよ! 俺は話なんざ……」 助けを求めるように♀ローグの方を見ると、彼女はバドスケを置いて、その場を立ち去ろうとしていた。 「こ、こら! 逃げるな……」 ♂プリーストも♀アサシンも、その場に立ち止まったまま♂ノビの行動を見守る。 その表情は、アラームと遊んでいた時のそれが嘘のように真剣そのものの表情だった。 「バドスケさん!」 眼前に迫る♂ノビの顔。 「おわぁ!! お、おう、バドスケだ。げ、げげ元気そうだな」 とても気まずそうなバドスケを余所に♂ノビは、嬉しそうに言った。 「ありがとうございました!」 「お、おお、ありがとうか、そうか……って、何?」 予想もしない♂ノビの言葉に面食らうバドスケ。 「バドスケさん、あの後みんなと一緒に戦ってくれてたの見ました! すごい、かっこよかったです!」 「かっこいい? 俺が?」 「はい! それに僕のあの板の内容覚えててくれたのが、なんかすんごく嬉しくて。ああ、僕も少しは役に立てたんだな~って思えて……本当にありがとうございました!」 バドスケは、♂ノビを見る。 各地を旅し、様々な人を見てきたバドスケにも、この♂ノビが嘘や御為ごかしを言っているとは思えなかった。 『自分の事殺した奴にありがとうなんて言える奴いねーよ。やっぱり♂ノビはすげえわ』 バドスケ活躍の様を、自分の事のように喜びながら話し続ける♂ノビをみて、バドスケはそんな事を考えていた。 「杞憂……だったな。あいつやっぱり大した小僧だよ」 ♂プリーストは頭を掻きながら、♀アサシンに言った。 「確かにノビ君最後の時まで、誰かを恨んでる様には見えなかったけど……変な奴~」 突然♂プリーストの横から声がする。 「これで、あんたがバドスケを恨む理由も無くなったでしょ?」 「♀ローグ? ……お前……こうなるってわかってたのか?」 ♂プリースト、♂ノービス、バドスケの複雑怪奇に絡み合った関係を知る♀ローグ。 「さてね、でも人を見る目はあるつもりよ。これで借りは返したって事にしといて」 そう言い残して、後ろ手に手をひらひらと振りながら♀ローグは立ち去って行った。 「♀剣士さ~ん、じっとしててくださいね~」 「ああ、わかったアラーム…………で、何故に私が子守役なのだ?」 「わあ、綺麗♪ ほら、♀剣士さん花嫁さんみたいですよ~」 「そうかそうか……って待てアラーム。一体何をした?」 「花のかんむりです~♪ あと、あと、スカートにお花いーーーーっぱい付けて……」 「待て! それだけは勘弁して……」 「ああっ、動いちゃダメですよ~。花嫁さんはじっとしてなきゃメッです」 「…………だ、だーれーかー」 「う~ん、お婿さんは誰がいいかな~。そうだ、♀剣士さんと一緒に居たノービスさんにお願いしましょう♪ ノービスさんもお花いーーっぱいでお似合い夫婦です~♪」 「なにーーー!? 待ってくれ! わ、私にも心の準備がーーー!?」 ♀剣士、♂ノビと結婚すの報は(主に悪のりした♂プリと♀アサによって)あっという間にあの世中に広まった。 その知らせを聞いた両者共通の友人Pさん(仮名)は 「ええ、いつかはそうなると思ってましたけど、こんなに早い時期になんて驚きです」 と驚きを隠せない様子。 また、事情通のAさん曰く 「プロポーズは♂ノビ君からで、『死んでも永遠に』が殺し文句だそうよ」 ちなみにこのコメント、当人達は激しく否定しているが、ただの照れ隠しであろう。 この報を聞いた知人友人、その他が続々と河原に集まっているとの報告もある。 「んじゃ、ここで現地の♂プリーストにカメラを移すわね。♂プリーストー、そっちの様子はどう?」 『おう♀ローグか。んじゃこっちに集まった連中にインタビューをば……』 画面の端にたまたま映った♂マジにマイクを向ける。 『あっら~。羨ましいわね~。私達も早く結婚しましょうよぅ』 『ダメー! ♂剣士君はボクと一緒にFDに行くの!』 『……だーかーらー縄ほどいてー』 ♀ローグが真顔でつっこむ。 「オカマに前張りに拉致。あんたら放送コード引っかかりまくりよそれ」 『あ~、そんな事ぁどーでもいいからお前もそろそろこっち来い。いい加減全員揃ってきたぞ~』 「……アンタ、本気で全員揃えたの?」 『あったりめーだ。ほら、♀アサシンが最後の連中を……』 そこで絶句する♂プリースト。 カメラは、最後の集団を写していた。 『なんで私がこんな所来なくちゃいけないのよ!』 『まあまあ、秋菜だって結婚式とかお祭りごと嫌いじゃないだろ?』 『あー! ♀アサシンさん私のメロンパンとったー!』 『もひゅもひゅ……おいしい♪ あ、飲み物ちょうだいアリス』 『はいはい。ほら、♀モンクさんはいっぱい食べたんですから、そんな事言わないで』 「……あのバカシン、秋菜まで呼びやがった……」 『バカシンって何よ! あんたも早く来ないと御馳走食べ損なうわよ!』 ♀ローグは、ふと、あの世に入った時に見かけた看板の文句を思い出した。 『殺伐を禁ず』 「ま、いいけどね」 ♀ローグも、素直に河原に行くことにした。 穏やかな丘陵を越え、河原にたどり着くと、そこでは既にみなが思い思いに食事を楽しんでいた。 それを素通りし、この度の主役の居場所にたどり着く。 そこでは、女性陣によってたかっておもちゃにされてる♀剣士と、何が楽しいのか満面の笑みの♂ノービスが居た。 「いいかげんにしろきさまらーーーー!!」 遂にキレた♀剣士が立ち上がる。 全身にふりふりレースやら、リボンやら、花やら蝶々やらをまぶしまくられて居る模様。 正直、相当に笑える。 ♀剣士がこの調子では結婚式を執り行うのは無理と思われたが、集まった連中はそんな事どーでもいいのか、勝手に好き放題騒いでいた。 「何をしてんだか……ん?」 ♀ローグは、一瞬自分の手が透けてみえた気がして立ち止まった。 それはすぐに元に戻ったが、何やら心当たりのある♀ローグは、周囲を見渡す。 すると全く同じ行動をとっていた、♀セージと目が合った。 ♀セージは、♀ローグに近づくと訊ねる。 「どう思う?」 「そろそろ……って事じゃないかしら?」 「だな。皆には私が伝えよう」 後ろでそれを聞いていた♀ウィズが嘆息する。 「相変わらず貧乏くじ引きたがる子ね、あなた」 振り返って応える♀セージ。 「それが私の役回りなのだろう……みんな聞いてくれ!」 ♀セージの凛とした良く通る声に、皆が注目する。 「どうやら、ここでの時間もそろそろ終わりが近づいているらしい。心の準備はいいか?」 誰しも気が付いていたのだろう、だが、それを認めた瞬間に全てが終わってしまいそうで、誰も口にはしなかったのだ。 会場全体が沈黙する中、♂ローグが陽気に言った。 「まあ待て。最後に……あいつの顔、拝んでからにしねーか?」 ♂ローグが指さす先、川の水面にはプロンテラを歩く♂アーチャーの姿が映っていた。 全員が祈りを込めて、♂アーチャーを見る。 水面に映る♂アーチャーは、何かに気付いて上を見上げようとしていた。 「……雨?」 空は快晴、突き抜けるような青空から、水滴が滴る。 プロンテラ広場を歩く人々は、慌てて軒下に隠れ、雨を避けていた。 「にわか雨か。今日は……濡れてこっかな。たまにはこういうのも気持ち良いし」 空を見上げながら、歩き続ける♂アーチャー。 路傍の商人が♂アーチャーに声をかける。 「よう♂アーチャー! 良い弓が入ったんだ! 見ていきなよ!」 「ありがとう、後でよらせてもらうよ」 女プリーストと、アコライトの集団が♂アーチャーを見て、嬉しそうに声をかける。 「♂アーチャー君じゃない、私達これから狩り行くんだけど、一緒に行かない?」 「ごめん、今日は約束があるんだ。また誘ってよ。この間の狩りみたいに良いレアが出る事祈ってるよ」 何人かが、残念そうな顔をするのを後にし、プロンテラのメインストリートを進む。 騎士達二次職PTが♂アーチャーに手を振っている。 「よう♂アーチャー。早く二次職になれよー。一緒に冒険行こうぜー!」 「ああ、楽しみにしてるよ。ありがとう」 その後も、たくさんの人に挨拶しながらプロンテラ中心の噴水を抜け、その奥のポタ広場に辿り着く。 そこで、一人の女商人が彼を待っていた。 「おっそいで~。まーたみんなに引き留められたんやろ?」 「ごめんごめん。さ、行こっか」 女商人は、突然♂アーチャーの顔をまじまじとのぞき込む。 「何?」 「いやな、なんやエライ機嫌良さそうやから。何かええ事でもあったん?」 「そういう訳じゃないんだけどね。何か……今日はすごく元気が出てさ」 「そか。んじゃー今日も頑張っていこか」 「ああ、今日も一日頑張ろう!」 二人は並んで歩き出す。 雨はもう、止んでいた。       バトルROわいあるあの世シリーズ ~FIN~

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