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外伝 カプラW
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森の中で腰を下ろして休むグラリス。
Wは未だ見つからず、さりとて約束の殺害人数は遠く。
不意に強い風がグラリスの頬をなでる。
胸元まで伸びた髪が揺れ、グラリスは慌ててそれを手で押さえる。
同時に聞こえる草を踏む音。
グラリスははっとなってそちらを見ると、そこにはWが居た。
「久しぶりです」
守りたくて、傷つけたくなくて。
そう思い続けていたWを遂に見つけたグラリスは、しかし声をかける事が出来なかった。
彼女の背中に、彼女の身長を大きく凌駕する真っ白な翼が生えていたから。
「……あ……」
あまりの事に、驚き大きく目を見張るグラリス。
Wは自らの翼を優しく撫でる。
「W、私の名前です。Wingって意味なんですよ」
そう言うとグラリスを掴み、Wは大きく羽ばたいた。
一瞬で上空高く舞い上がる。
「しっかりつかまっててね」
グラリスが何を言う間も無く、Wはその翼を羽ばたかせ、一気に海を越える。
大陸が見えたかと思うと、あっという間に懐かしきプロンテラの街が見えてきた。
「ほら見て、みんなもあそこに居る」
図書館の前にはソリンが居た。
「ちっちっち、そんな攻撃じゃ私には当たらないわよ」
ウィザードに囲まれる彼女は、しかし全ての魔法をかわしていた。
「私の名はソリン、逃げも隠れもするけど嘘は言わない。魔法は私には当たらない!」
そして手に持った大鎌で次々と敵をなぎ倒していく。
「……ハイドで魔法をかわしてる? あの子そんなスキル使えたかしら?」
騎士団の前にはビニットの姿が見えた。
「カプラナック隊全軍射撃かいしー!」
カプラの扮装をした筋骨隆々たる大男達が合図に合わせて射撃を開始する。
それで前面の騎士、剣士をなぎ払うと、ビニットは両手につけたカタールのような物を振りかざして切りかかっていった。
「キモッ!」
大聖堂の側ではテーリングが敵を睨みつけていた。
「私の行く道を塞ぐなんてね。迷子になる研修生より愚かよあなた達」
テーリングの手から炎の柱が伸び、大聖堂はあっという間に炎に包まれた。
「て、テーリングまで……ああっ、何か手が伸びてるし」
ディフォルテーは十字路のど真ん中に立ち、四方から迫り来る敵に対し、いつもの穏やかな笑顔を見せる。
「ごめんなさい、全弾発射です」
全身からバルカンやらミサイルやらビームやらレーザーやらが雨嵐と降り注ぎ、その様はまるでふぁいなるべんとでえんどおぶわーるどな世界の終わりすら思わせる壮絶無比さである。
「謝ったからってきっと許してくれないわよディフォルテー」
一々一人づつに律儀につっこんでいたグラリスを、Wは建物の屋上に静かに降ろす。
「見ててね、これがこの国に打ち込まれた五つの流星最後の一つ。カプラウィング!」
Wの手に長大なライフルが現れる。
Wはそれを持ったまま上空に舞い上がり、その強大な火力を城へと放った。
グラリスはうさんくさそうに周囲を見渡す。
「カプラデスサイズにカプラサンドロックにシェンロンカプラにカプラヘビーアームズ? 誰よ、こんな事考えたの」
上空のWが手に持ったライフルを真ん中から二つに分け、両手に持つ。
「……Wよね、あれ撃つの。あの子の事だからきっと……」
ぐるぐる回りながらそのライフルを放ち、プロンテラを火の海に変えるW。
最初の内は見事に敵のみをなぎ払っていたのだが、段々と回転の仕方が不安定になる。
「あー、やっぱり目を回してるわね。だぶりゅー! いいからそろそろ降りてきなさーい!」
グラリスの声が聞こえたのか、Wはふらふらしながらもグラリスの方に降りてくる。
「ちょ! あなた銃の引き金から指を離しなさ……っきゃーーーーーーーー!!」
がばっと身を起こすグラリス。
そして冷静に思考をまとめる。
「今のは私の夢だった。つまり……アレを考えたのってば……私?」
疲れている、そう心の底から実感した瞬間であった。
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