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---- 292.そして彼だけになった。 ♀アルケミストの前には、死神がいた。 全身から力はどんどん抜けていき、それに反比例して全身の痛みはますます増している。 それでも――意志は、まだある。 そう、生き残る。 どんな手を使ってでも、生き残る。 そうじゃないと――これまでの人生で行ってきた全てが、無駄になる。 幸せになるために、なんでもやった。 笑顔で笑う自称友人を陥れた。 純朴な青年を誘惑した。 自分を幸せにしてくれない親を――殺した。 それも、全ては幸せになるため。 そう、自分は正しい。 人はみな自分が幸せになるために生きている。 私はそのハードルが他人よりも著しく高かっただけ。 私は常に最善の結果が出るようにと行動してきた。 その私が何故、こんな血と埃に塗れた辺境の島で、一人寂しく死ななければならないのか!!! 理不尽だ! 理不尽だ! 私は生きたい! 生きて、幸せになりたい! そのためにはこんなところで死んでいられるか!!! そこで、死神の手が、私に触れて。 瞬間、全身を蝕む苦痛が薄れていくのを感じて。 私は、自らの人生の徒労を理解し、また自分が幸せに包まれているのだと理解した。 ♀アルケミストが息を引き取ったを確認して、ようやくグラサンモンクは彼女の首から手を離した。 彼女は――生きようとしていた。決して、生き延びられる筈がないのに。 その執念、あるいは妄執は彼女の全身あるいは全霊を蝕んでいた。 このままでは、彼女はきっと無念のまま死んでいくだろう。 そう理解したグラサンモンクは――♀アルケミストの首に、手をかけた。 せめて、彼女が安らかな死を迎えられるように、と。 医学的な話をするならば、首を絞めることで脳に血液が送られなくなるため、正常な思考ができなくなる。 しかし、それ故に彼女の思考を蝕む妄執を取り払った状態で、彼女を逝かせることができた。 事実関係を確認するならば、彼は♀アルケミストを殺したことになる。 それでも彼は後悔はしていなかった。彼女を妄執から解き放ってから逝かせられたのだから…… 「さて、と」 もう一人、重傷者がいた。 ♀騎士だ。 彼女は生きているだろうか。 グラサンモンクは彼女に近づき、露わになっているその首筋に触れる。 はたして――彼女は、冷たくなっていた。 グラサンモンクは、ほんの数秒だけ、目を閉じる。 それは、やけになって叫んで走り出したくなる自分を抑えるため。 そして、死んだ♀ハンター、♀アルケミスト、♀騎士への黙祷でもあった。 そして、残ったのは彼と、♀ハンターを殺した鷹だった。 この鷹には見覚えはないが、先ほど♀ハンターを倒した手並みをみると、まさか野生ではあるまい。 彼は先ほどからぴぃぴぃと泣いている。 グラサンモンクには彼の言葉がわからないが――なんとなく悲しげな響きを感じ取っていた。 ともかく、彼をこのままにしておくわけにはいかない。 このゲームの参加者でないのなら、なおさら。 「なあ、鷹よ」 それが、自分に向けられた言葉だと理解したのか。 鷹は、グラサンモンクに寄ってくる。 結構躾けられているな、と感心しつつも、グラサンモンクは続ける。 「お前は、もう帰れ」 ぴぃ、と鷹が悲しそうに鳴いた。 「この島は――地獄だ。 どいつもこいつもいい奴で、誰も彼もが生きたいと思っているくせに、全員死んでいく」 だが、と続ける。 「お前は、ゲームの参加者じゃない」 ぴぃ 「お前は、帰れ。帰ってくれ。このままだと、きっとお前は死ぬ」 ぴぃ、ぴぃ。 「だから、頼む、帰ってくれ。そして新しい生活を見つけて――せめてお前だけは、幸せに生きてくれ」 両手、両膝、さらに頭を地面につける。 獣に自分の意思がどこまで伝えられるのかわからなかったが、彼にはこれしか方法が思いつかなかったのだ。 「頼む、お前だけは――帰って、幸せに――」 1分、2分、それ以上。 長い長い間、グラサンモンクは土下座をしていた。 そして、ようやく目の前の気配が消えたことを感じて――立ち上がった。 ふぁるは、大空を周回していた。 そして、グラサンモンクが立ち上がったのを視認すると、ぴぃ、と一言だけ鳴いて、ねぐらへ向かって飛び立った。 <♀アルケミスト> 現在地:E-6 所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食 外 見:絶世の美女 性 格:策略家 備 考:製薬型 悪女 ♂スーパーノービスと合流したい(ひとりは怖い) 状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態 喉元に矢 毒 モンクの手によって安らかに死亡 <ふぁる> 現在地:E-6 所持品:リボンのヘアバンド スキル:ブリッツビート スチールクロウ 備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視     寄生虫に捕食されかけた事で異様な姿になった♀ハンターを♀ハンターと認識できず 状 態:JTによる負傷、♀ハンターが殺されたかと激昂。グラサンモンクの意思を受け取り、島から脱出。 <♀騎士> 現在地:E-6 所持品:S1シールド、ツルギ 外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳 備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように 状態:死亡 <グラサンモンク> 現在地:E-6 所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス 種別不明鞭 容 姿:csm:4r0l6010i2 スキル:ヒール 気功 白刃取り 気奪 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳 備 考:特別枠 右心臓 したぼく二号 悪ケミを護る デビルチを警戒 状 態:掌と肩に打撲 SP微妙に枯渇 参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】 作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記) <残り10名+3匹> ---- | [[戻る>2-291]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-293]] |
---- 292.そして彼だけになった。 ♀アルケミストの前には、死神がいた。 全身から力はどんどん抜けていき、それに反比例して全身の痛みはますます増している。 それでも――意志は、まだある。 そう、生き残る。 どんな手を使ってでも、生き残る。 そうじゃないと――これまでの人生で行ってきた全てが、無駄になる。 幸せになるために、なんでもやった。 それも、全ては幸せになるため。 そう、自分は正しい。 人はみな自分が幸せになるために生きている。 私はそのハードルが他人よりも著しく高かっただけ。 私は常に最善の結果が出るようにと行動してきた。 その私が何故、こんな血と埃に塗れた辺境の島で、一人寂しく死ななければならないのか!!! 理不尽だ! 理不尽だ! 私は生きたい! 生きて、幸せになりたい! そのためにはこんなところで死んでいられるか!!! そこで、死神の手が、私に触れて。 瞬間、全身を蝕む苦痛が薄れていくのを感じて。 私は、自らの人生の徒労を理解し、また自分が幸せに包まれているのだと理解した。 ♀アルケミストが息を引き取ったを確認して、ようやくグラサンモンクは彼女の首から手を離した。 彼女は――生きようとしていた。決して、生き延びられる筈がないのに。 その執念、あるいは妄執は彼女の全身あるいは全霊を蝕んでいた。 このままでは、彼女はきっと無念のまま死んでいくだろう。 そう理解したグラサンモンクは――♀アルケミストの首に、手をかけた。 せめて、彼女が安らかな死を迎えられるように、と。 医学的な話をするならば、首を絞めることで脳に血液が送られなくなるため、正常な思考ができなくなる。 しかし、それ故に彼女の思考を蝕む妄執を取り払った状態で、彼女を逝かせることができた。 事実関係を確認するならば、彼は♀アルケミストを殺したことになる。 それでも彼は後悔はしていなかった。彼女を妄執から解き放ってから逝かせられたのだから…… 「さて、と」 もう一人、重傷者がいた。 ♀騎士だ。 彼女は生きているだろうか。 グラサンモンクは彼女に近づき、露わになっているその首筋に触れる。 はたして――彼女は、冷たくなっていた。 グラサンモンクは、ほんの数秒だけ、目を閉じる。 それは、やけになって叫んで走り出したくなる自分を抑えるため。 そして、死んだ♀ハンター、♀アルケミスト、♀騎士への黙祷でもあった。 そして、残ったのは彼と、♀ハンターを殺した鷹だった。 この鷹には見覚えはないが、先ほど♀ハンターを倒した手並みをみると、まさか野生ではあるまい。 彼は先ほどからぴぃぴぃと泣いている。 グラサンモンクには彼の言葉がわからないが――なんとなく悲しげな響きを感じ取っていた。 ともかく、彼をこのままにしておくわけにはいかない。 このゲームの参加者でないのなら、なおさら。 「なあ、鷹よ」 それが、自分に向けられた言葉だと理解したのか。 鷹は、グラサンモンクに寄ってくる。 結構躾けられているな、と感心しつつも、グラサンモンクは続ける。 「お前は、もう帰れ」 ぴぃ、と鷹が悲しそうに鳴いた。 「この島は――地獄だ。 どいつもこいつもいい奴で、誰も彼もが生きたいと思っているくせに、全員死んでいく」 だが、と続ける。 「お前は、ゲームの参加者じゃない」 ぴぃ 「お前は、帰れ。帰ってくれ。このままだと、きっとお前は死ぬ」 ぴぃ、ぴぃ。 「だから、頼む、帰ってくれ。そして新しい生活を見つけて――せめてお前だけは、幸せに生きてくれ」 両手、両膝、さらに頭を地面につける。 獣に自分の意思がどこまで伝えられるのかわからなかったが、彼にはこれしか方法が思いつかなかったのだ。 「頼む、お前だけは――帰って、幸せに――」 1分、2分、それ以上。 長い長い間、グラサンモンクは土下座をしていた。 そして、ようやく目の前の気配が消えたことを感じて――立ち上がった。 ふぁるは、大空を周回していた。 そして、グラサンモンクが立ち上がったのを視認すると、ぴぃ、と一言だけ鳴いて、ねぐらへ向かって飛び立った。 <♀アルケミスト> 現在地:E-6 所持品:S2グラディウス ガーディアンフォーマルスーツ(ただしカードスロット部のみ) 矢筒 毒矢数本 望遠鏡 食料二食 外 見:絶世の美女 性 格:策略家 備 考:製薬型 悪女 ♂スーパーノービスと合流したい(ひとりは怖い) 状 態:脇腹に貫通創(治療済) 寄生虫ロシアンルーレット状態 喉元に矢 毒 モンクの手によって安らかに死亡 <ふぁる> 現在地:E-6 所持品:リボンのヘアバンド スキル:ブリッツビート スチールクロウ 備 考:なんだかんだいいながら♀ハンターが心配で堪らない、ツンデレ? GM側の拠点を発見するも重要視せず無視     寄生虫に捕食されかけた事で異様な姿になった♀ハンターを♀ハンターと認識できず 状 態:JTによる負傷、♀ハンターが殺されたかと激昂。グラサンモンクの意思を受け取り、島から脱出。 <♀騎士> 現在地:E-6 所持品:S1シールド、ツルギ 外見:csf:4j0i8092 赤みを帯びた黒色の瞳 備考:殺人に強い忌避感とPTSDを持つが、大分心を強く持てるようになる。刀剣類に抵抗感 笑えるように 状態:死亡 <グラサンモンク> 現在地:E-6 所持品:緑ポーション5個 インソムニアックサングラス 種別不明鞭 容 姿:csm:4r0l6010i2 スキル:ヒール 気功 白刃取り 気奪 指弾 発勁 金剛 阿修羅覇王拳 備 考:特別枠 右心臓 したぼく二号 悪ケミを護る デビルチを警戒 状 態:掌と肩に打撲 SP微妙に枯渇 参考スレ:【18歳未満進入禁止】リアル・グRO妄想スレッド【閲覧注意】 作品「雨の日」「青空に響く鎮魂歌」よりモンク(♂モンクと区別するため便宜的にグラサンモンクと表記) <残り10名+3匹> ---- | [[戻る>2-291]] | [[目次>第二回目次3]] | [[進む>2-293]] |

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