「224b」(2005/11/01 (火) 15:15:38) の最新版変更点
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224-B.静止した時の中で
さくり。
時の停まった世界で♂ローグのスティレットが秋菜の喉に深々と突き刺さる。
「ざまぁねぇな、秋菜よぅ。俺には飛び切りの女神様がついてたみたいだぜ」
争いのない世界、平和な楽園を最後まで信じた少女。
アラームカードが何故時間を停めたのか、それは♂ローグには分からなかった。
それでも♂ローグは思う。アラームはもしかしたらいつでも時間を停められたのではないかと。
時計の名を冠するアラームが時を停める力を持つ。それが本当にアラームの持っていた力だとしたら───
それでも、アイツは時間を停めたいなんて思わなかっただろうな。
アイツは他の誰よりも未来を夢見ていた。時間がいつの日か紡ぐ優しさに満ち溢れた世界を。
だからきっとアイツは時間を停めたことなんて一度もなかったんだろう。
停めたいと思ったことなんて一度もなかっただろう。
なのに・・・
「アラーム、ありがとよ。お前のお陰で俺は───」
不意に♂ローグの視界が揺れた。
傷は深くなかったはず、♂ローグは混濁した意識の中で必死に腹部の傷を覗き見る。
どくどくと滝のように溢れ出る赤い血。
自らが流した血で真っ赤に染まった下半身に、♂ローグは自分の考えの甘さを知った。
腹部を僅かに貫いただけのはず、傷は決して深くは無い。
それでも血が、まるでこんこんと湧き出る泉のように止め処なく、溢れる。
♂ローグは知らなかったのだ、バルムンの呪いの力を。
全てが停まった中でただ一人動くことのできた♂ローグ、それは同時に彼だけが血を流すということを意味していた。
現に♂ローグによってスティレットを喉に突き立てられた秋菜の体には何の変化も無い。
心臓が動いているのも呼吸をしているのも今は♂ローグだけだった。
♂ローグの瞳が急速に輝きを失う。
♂ローグは消えてゆく自我の中で想いの欠片を集めて先の言葉の続きを紡ぐ。
天を仰ぎ、うわ言のように口をぱくぱくさせながら声を発する。
「お前のお蔭で俺は───♀クルセを守ることができた」
ローグとして生きてきた自分。そのことを悔いたことは無かった。
始まりはあの♀プリーストとの出会い。
自分はどうしようもない悪党で、それでも自分を変えられるはずもないから、
だから俺は子供の頃の夢とか憧れ、そういったものを全て無かったことにしてローグとしての自分を通すつもりだった。
「お優しいんですね」
あの女は本当に、心の底から俺のことをそう思って口に出したんだろう。とんだお人良しの甘ちゃんだ。
だからそんな女は俺が殺すまでもなく他の誰かによって殺される、そう思った。
───いや、本当はただ嬉しかった。彼女の言葉に俺はどうしようもなく嬉しいと思っちまった。
振るう剣は守るべき弱者のために。
それは俺の心にずっと焼き付いていた幼い頃の憧憬。太陽の下で光り輝く鎧に身を包んだ白銀の騎士。
今さらと笑われるだろうし、自分でも笑っちまう。
この俺が、たったあれだけの言葉で変えられちまったんだからよ。
お陰で散々な目にあっちまった。やたらとうるさく文句ばかり言いやがる子バフォにおっそろしいほどの怪力アジャ子。
♀プリーストを更に何倍もバカ正直にしたアラームに、いつも弱いやつの心配ばかりして自分を大事にしないあの♀クルセ。
全く俺としたことが、なんであんな奴らを必死に守ったりしたんだか。
でも───
──楽しかったぜ
めんどくせぇだの、やってられっかだの口にはしていたが、俺はいつの間にかあいつらが気に入っちまってよ。
だから♀クルセ以外の連中が逝っちまった時、俺は心にぽっかり穴が空いたみたいな気分になっちまった。
それでも、そんな俺の心を、今にも崩れ落ちて動けなくなっちまいそうな俺の心を支えてくれたのは♀クルセだった。
恋とか愛とかそういうのじゃねぇぜ。勘違いしないでくれよ。
俺はあの晩、アイツに1本だけ俺の煙草を預けた。アイツにとってそれがどういう意味を持つか──そんなことは良いんだ。
悪党ローグ様とクルセイダー、そんな2人にまともな恋愛なんてできるはずがねぇからな。
だから俺にとってあの煙草は形見のつもりだった。
俺はどんなことをしても♀クルセの奴だけは守ろうと、
せめてアイツの前でだけは最後まで騎士として、心は騎士として守り抜こうと誓った。
それなのによ、あのバカ・・・なにが「ここから帰ったなら二人で一緒に、街を歩こう」だ。何が約束だ。
約束を最も重い物とするクルセイダーが自分から約束を破ろうなんてしやがってよ。
そんなことを、はいそうですかなんてむざむざとやらせるわけねぇだろうがっ。
───バカヤロウ・・・お前だけは生きろよ
お前だけは真直ぐに胸を張って生きろよ。
「わりいな、どうやら約束破っちまったのは俺の方だ。なんせ俺はローグだからよ」
その言葉が♂ローグの最後だった。
そして、箱庭の世界は再動する。
<♂ローグ 死亡 所持品:アラームたんカード/所持者が負傷すると稀に時を止める効果。バルムン貫かれ破れてしまった>
<GM秋菜 時間停止 喉元に♂ローグのスティレットが突き刺さったまま停まっている 時間は動き出す寸前>
<その他のメンバー 時間停止 時間は動き出す寸前>
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224-B.静止した時の中で
さくり。
時の停まった世界で♂ローグのスティレットが秋菜の喉に深々と突き刺さる。
「ざまぁねぇな、秋菜よぅ。俺には飛び切りの女神様がついてたみたいだぜ」
争いのない世界、平和な楽園を最後まで信じた少女。
アラームカードが何故時間を停めたのか、それは♂ローグには分からなかった。
それでも♂ローグは思う。アラームはもしかしたらいつでも時間を停められたのではないかと。
時計の名を冠するアラームが時を停める力を持つ。それが本当にアラームの持っていた力だとしたら───
それでも、アイツは時間を停めたいなんて思わなかっただろうな。
アイツは他の誰よりも未来を夢見ていた。時間がいつの日か紡ぐ優しさに満ち溢れた世界を。
だからきっとアイツは時間を停めたことなんて一度もなかったんだろう。
停めたいと思ったことなんて一度もなかっただろう。
なのに・・・
「アラーム、ありがとよ。お前のお陰で俺は───」
不意に♂ローグの視界が揺れた。
傷は深くなかったはず、♂ローグは混濁した意識の中で必死に腹部の傷を覗き見る。
どくどくと滝のように溢れ出る赤い血。
自らが流した血で真っ赤に染まった下半身に、♂ローグは自分の考えの甘さを知った。
腹部を僅かに貫いただけのはず、傷は決して深くは無い。
それでも血が、まるでこんこんと湧き出る泉のように止め処なく、溢れる。
♂ローグは知らなかったのだ、バルムンの呪いの力を。
全てが停まった中でただ一人動くことのできた♂ローグ、それは同時に彼だけが血を流すということを意味していた。
現に♂ローグによってスティレットを喉に突き立てられた秋菜の体には何の変化も無い。
心臓が動いているのも呼吸をしているのも今は♂ローグだけだった。
♂ローグの瞳が急速に輝きを失う。
♂ローグは消えてゆく自我の中で想いの欠片を集めて先の言葉の続きを紡ぐ。
天を仰ぎ、うわ言のように口をぱくぱくさせながら声を発する。
「お前のお蔭で俺は───♀クルセを守ることができた」
ローグとして生きてきた自分。そのことを悔いたことは無かった。
始まりはあの♀プリーストとの出会い。
自分はどうしようもない悪党で、それでも自分を変えられるはずもないから、
だから俺は子供の頃の夢とか憧れ、そういったものを全て無かったことにしてローグとしての自分を通すつもりだった。
「お優しいんですね」
あの女は本当に、心の底から俺のことをそう思って口に出したんだろう。とんだお人良しの甘ちゃんだ。
だからそんな女は俺が殺すまでもなく他の誰かによって殺される、そう思った。
───いや、本当はただ嬉しかった。彼女の言葉に俺はどうしようもなく嬉しいと思っちまった。
振るう剣は守るべき弱者のために。
それは俺の心にずっと焼き付いていた幼い頃の憧憬。太陽の下で光り輝く鎧に身を包んだ白銀の騎士。
今さらと笑われるだろうし、自分でも笑っちまう。
この俺が、たったあれだけの言葉で変えられちまったんだからよ。
お陰で散々な目にあっちまった。やたらとうるさく文句ばかり言いやがる子バフォにおっそろしいほどの怪力アジャ子。
♀プリーストを更に何倍もバカ正直にしたアラームに、いつも弱いやつの心配ばかりして自分を大事にしないあの♀クルセ。
全く俺としたことが、なんであんな奴らを必死に守ったりしたんだか。
でも───
──楽しかったぜ
めんどくせぇだの、やってられっかだの口にはしていたが、俺はいつの間にかあいつらが気に入っちまってよ。
だから♀クルセ以外の連中が逝っちまった時、俺は心にぽっかり穴が空いたみたいな気分になっちまった。
それでも、そんな俺の心を、今にも崩れ落ちて動けなくなっちまいそうな俺の心を支えてくれたのは♀クルセだった。
恋とか愛とかそういうのじゃねぇぜ。勘違いしないでくれよ。
俺はあの晩、アイツに1本だけ俺の煙草を預けた。アイツにとってそれがどういう意味を持つか──そんなことは良いんだ。
悪党ローグ様とクルセイダー、そんな2人にまともな恋愛なんてできるはずがねぇからな。
だから俺にとってあの煙草は形見のつもりだった。
俺はどんなことをしても♀クルセの奴だけは守ろうと、
せめてアイツの前でだけは最後まで騎士として、心は騎士として守り抜こうと誓った。
それなのによ、あのバカ・・・なにが「ここから帰ったなら二人で一緒に、街を歩こう」だ。何が約束だ。
約束を最も重い物とするクルセイダーが自分から約束を破ろうなんてしやがってよ。
そんなことを、はいそうですかなんてむざむざとやらせるわけねぇだろうがっ。
───バカヤロウ・・・お前だけは生きろよ
お前だけは真直ぐに胸を張って生きろよ。
「わりいな、どうやら約束破っちまったのは俺の方だ。なんせ俺はローグだからよ」
その言葉が♂ローグの最後だった。
そして、箱庭の世界は再動する。
<♂ローグ 死亡 所持品:アラームたんカード/所持者が負傷すると稀に時を止める効果。バルムン貫かれ破れてしまった>
<GM秋菜 時間停止 喉元に♂ローグのスティレットが突き刺さったまま停まっている 時間は動き出す寸前>
<その他のメンバー 時間停止 時間は動き出す寸前>
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