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116

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116.悪魔と獣


「おや、戻って来ちまったね」

常緑樹の林の中に、♀ローグの緊張感のない声が響く。
♂GMの爆発現場から離れようと、小走りで進んだのは良かったが
結局その前に居たタヌキの丘付近に戻って来てしまったのだ。
彼女の目の前には、少し前に彼女自身の手で葬り去った♂クルセイダーの遺体が放置されている。

「・・・まいったねぇ」

言いながら、♀ローグは頬をかく。
てっきり北に向かっているとばかり、思っていたのに。
ひとつため息をつき、その場に腰を下ろす。
目の前の♂クルセイダーは、彼女が手にかけた後と、ほぼ何も変わらない状態だった。
ひとつ、変わったことといえば、死に際に流した涙が乾いているといったことぐらいか。
♀ローグは、何気なく♂クルセイダーの頬に触れる。
死後硬直が始まっているのか、その肌は硬く、冷たかった。

「あぁ、そうだ」

ふと思い立ったように、♀ローグは自分の鞄の中をあさり始める。

「重い上に使えないもの、持ってても仕方ないからさ。返すよ」

そう一人呟いて、♂クルセの傍にプレートを置く。
脱がすことは出来たが、死後硬直の始まった体にプレートを装備させることは無理だった。
♀ローグは、お手上げといった風に笑い、肩をすくめた。

「さて、と」

言って、♀ローグは立ち上がった。
服についた草を軽く払いのけ、重いプレートを運んで凝った肩をならす。

「これで軽くなった」

満足げに呟いて、元来た道はどっちだっただろうと、周りを見渡す。
周りは木漏れ日の差す林に囲まれ、元来た方向は容易には分からない。
見た事のある木や、小さな広場を辿りながら、彼女は注意深く林の中を進んだ。

「・・・?」

タヌキの丘をもうすぐ抜けるかといった所で、♀ローグは、ふと妙な気配を感じて立ち止まった。
それを長年の経験から殺気だと感じ取った彼女は、すぐにハイディングで身を隠す。
自分の後ろ方向。オークの森のほうから来たと思われるその人物は、
手に血のついた大斧を持ち、まっすぐ♀ローグのほうへと歩いてくる。

――♂ブラックスミスか。

心の中で小さく舌打ちをし、彼女はトンネルドライブでその場から離れる。
♀マジシャン、♂クルセイダー、♂GMと3人を葬ってきたが、今回ばかりは相手が悪いらしい。

――厄介な奴に関わるのはごめんだね。

♂ブラックスミスの、心が通わない虚ろな目を見、彼女は眉をひそめた。
しかし、その目は確実に――トンネルドライブで歩きながら隠れているはずの彼女を見ている。
ブラックスミスから離れようと歩いていたはずが、何故か差も縮まるばかり。

「・・・っくそ!」

♀ローグはこのままトンネルドライブ状態で居るのに危険を感じ取り、姿を現して走ることを選んだ。
途端、♂ブラックスミスも彼女を追って走り出す。
丘を抜け、林を抜け、道は砂漠へと達した。もう木々に紛れて逃げることも出来ない。

――どうする・・・?

♀ローグが前方を睨んで唾を飲んだ瞬間、♂ブラックスミスの気配が、すぐ背後まで迫った。

「っく・・・」

重い斧が耳元をかすめる音。
それを持ってこの速さで走っているのに、全く息を荒げない♂ブラックスミスの攻撃を、
♀ローグは両手で浮け流した。
次いで、二度目の攻撃。
横薙ぎに振られた斧を、バックステップで避ける。

――仕方ないね――。

逃げるのを諦めて反撃しようとダマスカスを構え、
♀ローグはそのまま♂ブラックスミスの腕を切り裂こうと、素早く短剣を振り下ろした。
腕さえ使えないようにしてしまえば、この大斧は使えまい。
そう思ってのことだった。
しかし―――

「・・・え?」

彼女のダマスカスの刃先は、♂ブラックスミスの肌に触れることなく、何かに阻まれたように宙を薙ぐ。
その上、反撃を避けるためにバックステップでとった間合いも、常人より早く詰められた。

「この野郎・・・」

再度バックステップで距離をとりながら、彼女はようやく理解した。

「運のいい奴も居たもんだね!」

言って、大きく後ろに跳ぶ。
♂ブラックスミスは、やはりそれを追って高速で移動した。
大斧が髪をかすり、衣服をかする。
全て紙一重で避けながら、彼女はどうにか隙をつこうと♂ブラックスミスを睨み続けた。
軽い身のこなしが得意なはずの自分を、ここまで正確に狙ってくる相手を
必死でやり過ごそうとバックステップで間合いを取り、避け続ける。
足場が悪いせいか、バックステップをする度に、砂漠の乾いた砂が巻き上げられ、辺りには砂煙が立っていた。
砂漠の中に聳える一本の木を見つけ、♀ローグがそれに近づいた時になって
いつまで続くとも分からない二人の攻防が、一瞬だけ動きを止めた。
突然、♀ローグがその場に立ち止まったのだ。
深く考えない――否、その思考すらも奪われた♂ブラックスミスは、そのまま大きく斧を振りかぶる。
ようやく目の前の獲物を捕らえられる歓喜に、♂ブラックスミスの顔がうっすらと笑みを刻んだ。
そのとき。

「ストリップウェポン!」

♀ローグの声が響く。
血のついた大斧は、♂ブラックスミスの腕からゆっくりと、滑り落ちた。
突然の出来事に、♂ブラックスミスは呆然とした表情を浮かべる。
しかし、それはすぐに怒りへと変化した。

「殺す・・殺す―――殺してやる」

低く、とりつかれたかのように繰り返し呟く♂ブラックスミスを見、♀ローグは背筋をぞくりとさせる。

――ったく・・・!

なにか、捨て台詞でも吐いてやろうかと思いながらも、
彼女は本能的に危険を感じ取り、バックステップで距離をとって走り出した。
♂ブラックスミスは、鬼のような形相で彼女を追ってくる。
しかし、斧を装備できない彼には、バックステップで逃げる♀ローグに追いつく術はなかった。


<♂BS 状況変わらず 現在位置:砂漠>
<♀ローグ ダマスカス1個、ロープ、ロザリオ1個、赤P食料>

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