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128

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128.♂ノビの戦い


♀剣士からの手紙、その序文は今まで♀剣士が♂ノビに語ってきかせたもの、そして態度で教えてきたもの。
それらを言葉にした物であった。
『経験、知識、技術、これらは人が生きる為の工夫の一つにすぎない。
それらを支える心が強くなければ、全ては無用の長物と化す』
『現実を、それがどんなものであれ正確に受け止めろ。そして現実を把握する為の努力を怠るな』
『傲らず、さりとて卑屈にならず、常に心を平静に保て』
『それが出来ぬのなら、以下の文章は破りすてろ。そしてひたすらにその身を隠せ』

♂ノビの文章を読む手が止まる。
♂プリは♂ノビがその手紙を読み終える迄は少し離れた場所に居てくれると言っていた。
文章を読んでいると、まるで♀剣士が語りかけてくれているように思えた♂ノビだが、涙はもう出なかった。
「……ボクに……出来るかな?」
♂ノビは自分を取り巻く現実を思い返してみる。
「…………」
そして今まで出会った人達の事を思い返してみる。
「…………」
彼らが何を思い、何を望んでいたか。そう考えた彼らがどう行動したか。
そんな中で、自分が出来た事は何で、何が出来なかったのか。

そして自分の望みが一体何なのか。

♂ノビが立ち上がり空を見上げる。
作られたはずの空は、何処までも蒼く透き通り、ただまっすぐに♂ノビの視線を受け止めた。

時間が経ちすぎる事に心配した♂プリが戻る頃には、♂ノビは全ての文章を読み終えており、声をかける♂プリに笑みを返したのだった。

♂ノビが旅支度を簡単に整え終わる。
既に理由を聞いている♂プリが再度不安げに♂ノビを呼び止める。
地面を指さし、そこに文字を書いて意志を伝える♂プリ。
『おい、ほんっっっっっとーーーーーーーーーにいいのか? 危険なんてもんじゃないぞその手』
♂プリの言葉に♂ノビは同じく地面に文字を書いて答える。
『もちろんです、♂プリさんはここで待っていて下さい。今度こそ……ボクはここに仲間を集めますから!』
♂ノビが♂プリに語った理由は説得力に満ちた内容であった。
そしてそれが勝利に繋がると考えられる、そんな内容であったのだ。
『わかった……だがな、その取引材料だけはすぐに出すんじゃないぞ。
それが目的で組まれても俺達の目的は果たせないんだからな』
♂ノービスはうなずき、青箱から出したばかりの取引材料を軽く叩いてみせた。

そして♂ノビは移動を開始した。
すぐに誰かに出会えるとは思わない。
だが、今までの遭遇頻度を考えるとそれは一日と待たず来ると知っていた。
後は、それがどんな相手かだ。
そして森を行く♂ノビ、果たしてその前に現われたのはモンスター、アーチャースケルトン・バドスケであった。
てっきり人間が出ると思っていた♂ノビは驚きに目を大きく見開く。
バドスケはマンドリンを構え、いつでも必殺の一撃を放つべくしながら、周囲を警戒していた。
『ノービス? 冗談だろ? なんだってこんなのがまだ生き残ってんだ?』
バドスケの戸惑いから、即座の攻撃は喰らわずに済んだ♂ノビ。
ここからが正念場である。
「えーっと、そこのモンスターさん。話を聞いて下さい。ボクに戦う意志はありません」
そんな♂ノビの言葉にも一切警戒を解こうとしないバドスケ。
しかし、♂ノビは落胆した風も無く次の行動に移った。
ゆっくりと、出来るだけゆっくりと後ろに背負ったバッグから大きな板を取り出す。
そこには、♀剣士から伝えられたこのゲームの真実の姿が書かれていた。

『 言葉は、その全てがGMの管轄内にある。だが、記された文字はその限りではない。
  このゲームを内より破壊する手段は存在しえない。
  首輪はGMの任意にて爆破可能。
  外部との通信手段はただ一つ。
アルデバラン時計塔最上階の中央部にある制御装置のみ
GMは、装備技術能力知識の全てが常軌を逸しているが、決して倒せぬ相手ではない』

驚くバドスケに、♂ノビは続ける。
「ボクと一緒に戦いませんか?」
これが♂ノビの考えに考え抜いた結果出した戦い方である。
ノービス故に攻撃能力が低く、戦闘時の撃破優先度が低い。
話を聞いてもらう、他者を説得するにこれ以上の適職はありえない。
後は、話す内容が説得に足る物であるかどうか?
そしてその時、相手に警戒されずにGMに感づかれずに事を進める工夫はどうするか?
予想される反論の為の返答も考えてある。
バドスケもそれに気付いたのか、即座に地面に文字を書く。
「上から三番目と一番下が矛盾しているぞ」
♂ノビも即座に切り返す。
『任意、これは念じただけで即座に爆破可能という事ではありません。とても可能性は低いですが、GM撃破は可能です』
バドスケはこの内容に興味を持ってくれたようだ。♂ノビはここぞとばかりに畳みかける。
「現状でボクが知っている事はこれが全てです。
けど! きっとこれとは別の知識を持っている人がいるはずです! そしてそれは増えた人数分だけその可能性が上がるはずなんです!」
最後に、♂ノビが自身の考える結論を述べる。
「GMの言葉は、信用出来ません。残った最後の一人を生かして返さない理由はあっても、生かして返す理由はありませんから」

バドスケは天を仰ぐ。そして言葉に出して言った。
「お前……すげぇよ……本気でそう思う。俺なんかじゃ考えもつかなかった……」
♂ノビはバドスケの言葉に喜びを顕わにする。
「じゃあ! 協力してもらえ……」
バドスケは躊躇無くそのマンドリンを弾いた。
「だからこそてめーに生きてられちゃ困るんだよ!」
マンドリンが生んだ殺人音波は♂ノビの持つ板を真っ二つに割き、後ろの♂ノビの腹部を大きく切り裂いた。
♂ノビはその場に倒れ臥し、信じられないといった表情でバドスケを見る。
バドスケの骸骨の顔からその表情を見て取る事は出来なかった。
「すまねぇ……すまねぇ……俺は……ちくしょうっ!」
再度マンドリンを構えてトドメを刺さんとするバドスケ。
だが、♂ノビは這いずりながらも、バドスケに向かう。
「……お願いします……戦って……みんなの為にも…………あなた自身の為にも……」
「ばっかやろう! 逃げるんじゃねーのかよてめーは!」
「戦って……でないと……本当の意味であなたは生きて……いけない……」
「うるせー! うるせー! うるせーーーーーー!! それでも俺にはあいつを助ける事しかできねーんだよ!」
マンドリンにかけた指が震える。力を込め、いつもの通りに曲を奏でようとするが音は出なかった。
「なんだよ!? なんで音がでねーんだよ! 俺はどいつもこいつも殺して回るって決めたんじゃねーかよ!」
♂ノビは少しづつ、少しづつバドスケに近づく。
「辛くても……苦しくても……きっとそれが……あなたの」
「く、来るなーーーーーー!!」
バドスケは一歩、一歩と後ろに下がると、ついに耐えきれなくなったのか、その場を走り去ったのだった。



♂ノビは、腹部を襲う激痛と戦っていた。
それが致命傷なのかどうなのか自分ではよくわからない。でも正直、結構ヤバイと思った。
だが、襲い来る死の恐怖に屈するのは、あの人と共に生きた者として、決して許される行為ではなかったのだ。
『痛いよ……痛いよ……ボク死んじゃうよ……』
心の中で泣き言を言いながら、生きるために地面を這いずる。
そこに、一部始終を見ていた♀アサシンが現われたのだ。
「あんたも大した根性だったけどね。ま、運が悪かったと思いなさい……で、私はその上前をいただくと♪ こーんどこそ武器かもーん!」
♂ノビのバッグを漁ろうと近づく♀アサシン。
♂ノビは♀アサを見つけると、這いずるのを止めて、足下に転がっているはずの物に手を伸ばす。
鼻歌交じりの♀アサだったが、♂ノビの奇妙な行動に気付いてそちらを見る。
♂ノビは仰向けになり、二つに割れた板を一つに合わせて、それを空に向けていた。
「……こ、これを……見て……ください……ボク達と一緒に……戦って……」
♀アサは遠目にそれを斜め読みするが、即座に判断を下す。
「私、人とつるむの好きじゃないの。それにこういっちゃなんだけど、あんたもう手遅れじゃない?」
「ボクは……死にません。この戦いが終わるまで……決してボクは……だから、お願いし……」
そこまでが♂ノビの限界であった。
二枚の板は、♂ノビの上に落ち、彼の目から光が消えた。
♀アサはそれを確認すると、最早興味も無いといわんばかりにバッグを手に取る。
そして中から出てきた物を見た瞬間、歓喜にまみれ、そして直後に愕然とする。
「おおおっ! これぞ私の求めてたジュルじゃないー! ん~~ノービス君エライ! 君、引き良すぎよ♪ ……ってカードが刺さってる?」

TCJ(トリプルクリティカルジュル)

♀アサはその武器を手に持ったまま硬直してしまう。
「嘘でしょ……ここで……このタイミングで、この武器が、あのノービス君のバッグから出てくる?」

アサシンなら誰もが知っている物語。
アサシン黎明期に生まれたという『あるアサシンの物語』
アサシンの誇りと夢を、先人達はこの武器に託し、そして受け継いでいったのだ。
人を殺す事を生業とする忌まわしき職業に、誇りを持ち、そして夢を賭けた人達。
そんな先人達の研究、戦いこそが今のアサシンの技術を支えている事、アサシンならば知らぬ者は居ない。

「ふざけんじゃないわよ……なんだってよりにもよって私に……他にもっと……らしい人居たでしょ! あーもう腹が立つわね!」
有り得ない展開にTCJを持ったままその辺をうろうろと歩き回る♀アサ。
「あんたねー! 大体ノービスのくせに私の行動制限しよーなんて生意気なのよ!!」
怒りの矛先は♂ノビへと向かったらしい。
「生きてたら容赦なく殺してる所よ! それをこんな……こんな真似……バカ」
不意に物陰から大声が聞こえる。
「♂ノビっ! おい! しっかりしろ!」
慌てて♂ノビに駆け寄ったのは、心配で後を追って来た♂プリーストである。
脈を取り、死んだのを確認すると悲嘆にくれるが、すぐに♀アサへと憎しみの目を向ける。
「お前か……お前がーーーーーー!!」
直後に、怒りの♂プリ以上の大声で怒鳴り返される。
「ばっかじゃないのアンタ! ノービス君の傷は衝撃波の傷! 
私の武器は刃物! そのぐらいプリーストなら一発で見分けなさいよ!」
極めて鋭い傷である事は双方一緒である。
これを一発で見抜けというのは酷であろう。だが、♀アサは更にまくしたてた。
「大体ね! あんたも保護者ならちゃんと保護しときなさいよ!
こんなバカで抜け作で脳天気でお人好しのノービスが……まったく……頭に来るわねっ!」
♂プリはあまりの剣幕に目をぱちくりさせている。
♀アサは少しそっぽを向きながらぼそっと言った。
「……そのノービス君。一緒に戦ってって言ってた。
だから私はそうする。あんたノービス君の仲間なんでしょ?」
♂プリは驚いて♀アサと♂ノビを交互に見る。
♀アサはそっぽを向きながらTCJをその両腕にはめた。
「これと一緒に託された想い……アサシンが齟齬に出来る訳無いのよっ! わかった!?」
♂プリは、涙がこぼれそうになるのを堪えるのに必死だった。
『♂ノビ……お前の想いは伝わったぞ! 俺も……もう迷ったりしないっ!』
二人は♂ノビを埋葬すると進路を北にとる。
目指すはアルデバラン時計塔。
そして出際に♀アサは♂プリに言った。
「ねえ、一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「……そのノービス君の持ってた板。大切な事書いてあるんでしょ? 何が書いてあるか聞いていい?」
「は? お前もしかして読んで無いのか?」
♀アサはしばらくじーっと黙った後、下を向いて頬を赤くしながら言った。
「私……字読めないもん」
直後、♂プリはとんでもない目眩に襲われたのだった。

一応、♂プリが大事な事を口で話す事が危険という事だけ、♀アサに必死のジェスチャーで伝える事は出来たが、
それ以上は彼の体力が持たないのでそこまでで伝達は諦めたのであった。


<♂ノビ死亡>
<♂プリ、♀アサと合流>
<♀アサTCJ(トリプルクリティカルジュル)入手>
<特殊設定:♀アサは文盲>
<残り23名>

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