002.青箱1ヶ、空ける
青々としげる森の中。僕は、一人その中で座り込んでいた。
…いや、緊張から開放されてへたり込んでいる、と言った方が正しいのかもしれなかった。
黄色い助祭の法服の下には、じっとりと嫌な汗がにじんでいる。
神よ。どうして、貴方は僕にこの様な試練を貸すのですか?
胸の内で、自らの信じる神へと疑問を投げてみる。
だが、勿論答えは返らない。そもそも、その神様の御使いが、彼の置かれている状況を作っているのだから、どうしようもない。
僕は、余り敬虔な信徒ではないけれど、それでも人並みには、信仰に励んできた筈なのに。
そこまで考えたところで、♂アコライトは自分の思考を打ち切った。
というか、これ以上考えていると、なんとなく泣きそうな気分になりそうだったので、やめた。
…いや、緊張から開放されてへたり込んでいる、と言った方が正しいのかもしれなかった。
黄色い助祭の法服の下には、じっとりと嫌な汗がにじんでいる。
神よ。どうして、貴方は僕にこの様な試練を貸すのですか?
胸の内で、自らの信じる神へと疑問を投げてみる。
だが、勿論答えは返らない。そもそも、その神様の御使いが、彼の置かれている状況を作っているのだから、どうしようもない。
僕は、余り敬虔な信徒ではないけれど、それでも人並みには、信仰に励んできた筈なのに。
そこまで考えたところで、♂アコライトは自分の思考を打ち切った。
というか、これ以上考えていると、なんとなく泣きそうな気分になりそうだったので、やめた。
「どうしようか…」
あたりでは、もう殺し合いが始まっているのかもしれなかった。
視界は僅か10M先も真っ黒い木々に覆われて、確かめる術は彼にはないのだけれど。
けれど、その中に、自分を狙う誰かの影が見えたような錯覚を覚えた。
…ふと、冷静になる。
そして、どうしようもない周囲の事は、取り敢えずは棚上げにすることにした。
それから、先ほど秋菜と名乗っていた女性の言葉を、ゆっくりと思い出す。
視界は僅か10M先も真っ黒い木々に覆われて、確かめる術は彼にはないのだけれど。
けれど、その中に、自分を狙う誰かの影が見えたような錯覚を覚えた。
…ふと、冷静になる。
そして、どうしようもない周囲の事は、取り敢えずは棚上げにすることにした。
それから、先ほど秋菜と名乗っていた女性の言葉を、ゆっくりと思い出す。
『またー、皆さんには、ゲームを始めるに当たって、食料、赤ぽ、地図、それから特製容器入りの物品二点入りの袋が与えられまーす』
闇ポタで飛ばされる前、何時もの荷物の変わりに与えられた大きい鞄を持ち上げてみる。
なるほど。この中に、あの女性の言う物が入っているのだろう。
だが…言葉に従ってその蓋を開けてやるのが、どうしようもなく癪だった。
名前も知らぬ♀ノービス。あの無残な死に様が、脳裏にフラッシュバックする。
僕は、この中に入っている物で、他の人達をあんな風に殺してまわるのだろうか?
…その答えは、でない。出るはずもない。
僕は、聖職者だ。たとえ見習いでも。神に見放されていたとしても。
けれど、同時に一人の人間であり、男でもあった。心残りなど、腐るほどある。
二つの気持ちが、正反対の方向に、僕を引っ張りつづけている。
けれど、なんにせよ、まずは生き延びなければならなかった。
この場所に抜け出る、少なくともそのチャンスを得るためには、それしか道が無い。重い浮かばない。
震える手で、鞄を開く。
赤ポーションと、いくらかの保存食、上質紙に刷られた地図と…青く古い箱が二つ。
なるほど。この中に、あの女性の言う物が入っているのだろう。
だが…言葉に従ってその蓋を開けてやるのが、どうしようもなく癪だった。
名前も知らぬ♀ノービス。あの無残な死に様が、脳裏にフラッシュバックする。
僕は、この中に入っている物で、他の人達をあんな風に殺してまわるのだろうか?
…その答えは、でない。出るはずもない。
僕は、聖職者だ。たとえ見習いでも。神に見放されていたとしても。
けれど、同時に一人の人間であり、男でもあった。心残りなど、腐るほどある。
二つの気持ちが、正反対の方向に、僕を引っ張りつづけている。
けれど、なんにせよ、まずは生き延びなければならなかった。
この場所に抜け出る、少なくともそのチャンスを得るためには、それしか道が無い。重い浮かばない。
震える手で、鞄を開く。
赤ポーションと、いくらかの保存食、上質紙に刷られた地図と…青く古い箱が二つ。
「と、特製容器…って、青箱のこと?」
一瞬、『ゼロピー一個、獲得』という文字が脳裏を掠める。
しかし、まさか、いくらなんでも本物ではあるまい。
殺し合いをさせたいなら、そんな不確実な手段をとるはずが無い。
ゼロピーなど、一体何の役に立つというのか。
その証拠に、二つの箱は、その大きさが異なっていた。
しかし、まさか、いくらなんでも本物ではあるまい。
殺し合いをさせたいなら、そんな不確実な手段をとるはずが無い。
ゼロピーなど、一体何の役に立つというのか。
その証拠に、二つの箱は、その大きさが異なっていた。
「小さいつづらと大きいつづら…欲張り者が馬鹿を見る、か。
でも、どっちも空けるしかないんだよなぁ…」
でも、どっちも空けるしかないんだよなぁ…」
二つを地面に並べ、しげしげとそれを見つめる。
こんこん、と叩いたり、振ってみたり。
勿論、それぞれの行動に大した意味は無い。
こんこん、と叩いたり、振ってみたり。
勿論、それぞれの行動に大した意味は無い。
…けれども、この二つの箱は、これから先の僕の行き先を、大きく決める事になるだろう。
「…よし」
誰に言うでもなく、呟き、唾を飲み込む。
そして、大きな青箱に、手をかけた。
…決して欲望からではなく、きっとサイズ的に、こちらの方が役に立つものが入っているだろう、という判断からだ。
そう。決して、変な気持ちがあるわけではない。
何となく邪な思考に偏りながら、ゆっくりと、その箱を開いていく。
誰に言うでもなく、呟き、唾を飲み込む。
そして、大きな青箱に、手をかけた。
…決して欲望からではなく、きっとサイズ的に、こちらの方が役に立つものが入っているだろう、という判断からだ。
そう。決して、変な気持ちがあるわけではない。
何となく邪な思考に偏りながら、ゆっくりと、その箱を開いていく。
『逆毛一個、獲得』
大きな箱の代わりに残されたのは、堂々と天を突く赤毛の逆毛(頭に被るカツラの様なもの。人間ではない)。
現実は、僕の想像の遥か斜め上を華麗にスッ飛んでいた。
現実は、僕の想像の遥か斜め上を華麗にスッ飛んでいた。
<♂アコライト 逆毛一個、獲得 もう一つの中身は不明>
<残り48名>
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