バトルROワイアル@Wiki 139


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139.温もりの笑顔と冷たい笑顔


「待て、止まれ」
突然の静止命令を聞いて、止まる。
「見ろ…誰かが通った後がある…この方向は、迷いの森か…?」
地面を調べつつ、ブツブツとセージは何かを考えているようだ。
「この足跡の主は乗っているか否か…多数の足跡がある…きっとパーティを組んでいるな」
「ほなら、うちらと同じでなんや考えてるかもしれへんなぁ」
「…待て、そっちから誰か来るぞ。一旦身を隠そう」
森の方から聞こえる足音にただならぬ予感を感じたので、オレ達は少し距離を置いて様子を見ることにした。

「あれは…♂BSか…一人のようだ」
視界のぎりぎり届く範囲に写る人影を見、詳細を報告する。
「得物はブラッドアックス、スマイルマスク…右腕が無い…
見る限りでは相当殺しまわってるようだが…む?」
確かな殺気を覚えた。馬鹿な、この距離で弓手以外が相手を捕捉出来るわけが――。
「やばい…あいつ、こっちにまっすぐ向かってくる…おい、どうするんだ?
逃げるか…もしくは、やるのか…」
語尾が震えているのが自分でもわかった。
ブラッドアックスを装備していることで移動速度が格段に速い。
あんな化け物に勝てるはずが――。
「やるぞ」
それだけ言うと、セージが一歩前に歩み出る。
その背後ではウィザードが既に魔法の詠唱を始めていた。
「距離、あと百メートル…」
さすがのセージも冷や汗をかいているようだ。
「ブルージェムさえあれば…セイフティウォールが使えたんだが…」
だがその汗さえも止め、全精神を集中させる。
「倒すとか止めるとかそんなことは考えるな。
あれは『殺す』。そうしなければこっちがやられる」
いつもの調子に戻り、セージも詠唱を開始する。
「残り…五十メートル」
「おっけー、こっちは一応準備万端やわ…まあ、どれだけ時間稼げるかわからへんがな」
ダマスカスを握り締め、臨戦態勢に入るアルケミスト。
「よし…くるぞ」
全神経を使い、集中力を爆発的に高める。
相手はかなり素早いが、手に馴染むこの得物なら当てることなら出来るだろう。
「…ファイヤーウォール」
静かにセージの詠唱が完了する。
二十メートルほど離れた場所に燃え上がる炎の壁。
そしてそこに猛スピードで突入する化け物――♂BS。
「…む」
まるで熱さを感じないような表情――顔は見えないが――で、
炎の壁を迂回し、さらに歩を進めるBS。
その周りにはアルケミストが植えた食虫植物。
しかしBSは、絡みつく蔦を振りほどき容赦ない一撃でそれらを潰してゆく。
十数体の食虫植物は瞬きする間に殲滅された。
「まずい………、フロストダイバー!」
この状況で頼りになるのは、ウィザードの魔法。
相手を凍らせ、ウィザードの詠唱完了を待つつもりだった。
しかし、魔力が制限されるこのフィールドでは無謀な賭けだったようだ。

ガキンッ!

一瞬の内に詰め寄るBS、そして片手とは思えない速度で振り下ろされる斬撃。
そして、それを受け止めるアルケミスト。
「くぁ…無理やわ…っ!」
ダマスカスは根元から折れ、最早使い物にならなくなっていた。
ゆらり、と体勢を立て直すBS。
そして一瞬。アルケミストに向かって斧を振り上げる。
「させない…チャージアローッ」
思い切り振り絞った矢を、BSに向かって撃ちつける。
狙いを定めた銀色の閃光はまっすぐと目標へと向かい、その心臓を貫く――はずだった。
「な…っ」
人間とは思えない動きで、銀色の矢をその斧で叩き落す。
にっこりと微笑む仮面の下から、ゾクリと来るような殺気が感じ取れた。
次の矢を弓に番えたその瞬間…悪鬼が、目の前にいた。
そして、オレが打つ矢より早く振り下ろされる斧。

ザシュッ

熱い。
熱いものが、顔にかかっている…これは、血だ。
しかし、オレはどこも痛くない。じゃあ、誰の――。
目の前に、背中をばっさりと切られたアルケミストがいた。
「はは…ぼーっとしてたら、あかん…って…」
そして、がくりと崩れ落ちる、華奢な身体。
「う…そだろ…」
「馬鹿、よそ見するなッ、後ろだ!」
後ろだ、という言葉に反射的に前に転がる。その腕にはアルケミストの体を抱いて。
今までオレが居た場所が、抉れる。撒き起きる砂塵。
「観念なさい、化け物…ストームガストッ!」
砂塵を巻き上げるように起こる猛吹雪。
その範囲内にオレは居なかったが、腕の中でどんどん冷たくなる身体に、心が凍りついた。
目の前には一体の氷像。
必殺の一撃を繰り出したが為に、化け物は体勢を立て直せなかったようだ。
「テメェ…そんな簡単に、人の命を奪いやがって…
今までたくさん殺したんだろう…?…その人たちに、地獄で詫びやがれ」
弓に2本の矢を番える。
狙いは2箇所。頭と、心臓。
目の前の悪鬼は凍っている、避けることも出来ないだろう。
「死ね、糞野郎」
矢を放つ。
軌跡はまっすぐと延びていき、BSの頭と心臓を確かに貫いた。
「…ぐ」
「ばかなっ…」
心臓と脳を撃たれて尚、化け物は生きていた。
しかしさすがに戦闘するだけの気力は残っていないのだろう、
夥しい量の血に塗れた斧を担ぎ上げると南方へと逃げ去っていった。

「くそっ…おい、起きろよ!」
つい数十分前まで笑って話をしていた少女。
その笑いは、接客の技術として磨かれたものではない、正真正銘、心からの喜び。
その温もりが今は、冷たい塊となってしまった。
「もう脈がない…残念だが」
「お前…仲間が死んだって言うのに、そんな…」
立ち上がって、セージに向かって拳を放つ。
その拳はセージの顔面に直撃した。
「わかってる…だが、私たちはここで歩みを止めるわけにはいかないんだ」
拳に滴る滴。その冷たさに、オレは気付いた。
――セージという職。それは、常に冷静に、感情に流されていてはいけないのだと。
「…すまん」
少しだけ待ってくれ、と言うとオレは弓を使って、浅いながらも穴を掘った。
そしてそこに、冷たくなった少女の身体を横たえ、黙祷する。
(助けてやれなくて、ごめん。助けてくれてありがとう。
思えばずっと助けられっぱなしだったよ…お前の笑顔にな。
その笑顔…皆が笑えるように、がんばるからな…)
ゆっくりと、その身体に土をかけていく。
ふと顔を上げると、セージもウィザードも、埋めるのを手伝ってくれていた。
「こんなものしか供えられるものがなくてすまんな…」
涙は止まっていたが、やや苦しそうな面持ちで、セージが墓に食虫植物の花びらを添える。
「行こうか…このゲームを、終わらせるために…アルデバランへ」
最後に、命の恩人の少女に頭を下げ、俺らは北へと進路を変えた。

―――

「…ばか、な…」
残った知性を総動員して考える。
負けるはずが無い。最高の道具がそろっていた。
打撃攻撃を弾くゴーストリングのカード。
呪いによって、移動速度と力が増幅するブラッドアックス。
刺さった矢を引き抜く。
砕かれたスマイルマスクを捨て、体力を回復するために、逃走する。

惜しくも、運命とは皮肉なものだろうか。
そこには、彼が殺しかけた彼女――否、壊れた人形がそこに立っていた。


<♀アルケミスト 死亡>
<♂アチャ アーバレスト 銀の矢47本 白ハーブ1個>
<♀ウィザード フォーチュンソード たれ猫>
<♀セージ クリスタルブルー1個 プラントボトル5個>
<現在位置:迷いの森に突入>
<♂BS ブラッドアックス ゴーストロングコート イグドラシルの実>
<♂♀BS 遭遇 プロンテラやや北>
<残り21名>

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