095.穢れた歌い手
エプロンドレスを着た少女は悲しみで張り裂けそうな胸を押さえ、
力なく歩いていた。
力なく歩いていた。
管理者の手により連れ去られてきたこの場所で、殺し合いをさせられるという事実とすでに幾度かの放送で様々な人たちがその命を終えている。
魔物として、古城をさ迷う人形として生まれながらも、
港町での優しい商人の少女との出会い等の僅かな暖かな記憶も遠い世界のように感じられる。
(私は…)
管理者の言葉には従えない。
だから、せめて最後に自分がいた世界をこの目に焼き付けたかった。
(綺麗な風景……)
夜が開け、陽の光が世界を染め上げていく光景と、
暖かな風が自分の髪を優しく撫でて行くのを感じ、ほんの僅かに顔を綻ばせる。
こんなに綺麗な世界の下で、悪夢のような殺し合いが展開されているとはとても信じきれないだろう。
自分の背後に大地を踏むかすかな音を聞き、微かに目を閉じる。
それと同時に空を切る音と同時に自分の胸に熱い感触が通り過ぎる。
「はっ、あぁ…」
意識が途切れていく中、過ぎ去った暖かな記憶を思い出し、
顔を微かに微笑ませながら少女は眠りについて逝く。
「まずは一人」
バトスケは眼前に倒れている少女――アリス――を見下ろしながら、
自嘲気味に笑う。
自嘲気味に笑う。
「…もう後戻りは出来ないな」
何処かアラームに似ている雰囲気、争いを望まないであろう存在をこの手にかけたのだ。
迷いや情は全て捨てるしかない。
例え、この手が血に塗れても、自分の行為が独善だとしても
アラームを必ず、あの時計塔へと戻すために。
「せめて安らかに…」
血に塗れた歌い手は、アリスの亡骸に僅かな黙祷を捧げると、
背を向け、狩るべき相手を探し始める。
時計塔の少女のために、楽園を探す少女のために、
少女が最も悲しむであろうであることを知りながらも歩み始める。
<バドスケ 所持品:マンドリン、アラーム仮面、青小箱、青大箱>
<アリス死亡>
<参考スレ:RAGNAROK THE ANIMATIONより >
<残り35名>
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