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176.根本価値の齟齬~ 遭遇



 ──もしも、二者の根本的に価値観が食い違い、尚且つお互いに自分こそが正しいと認識している時。

 そのどちらかの主張が通される時に、もう一方の主張が著しく制限される場合。

 彼等(或いは彼女等)は激しい対立を、その結論から授かる事を識らなければならない。

 …

 二度目の黄昏を迎えている空の下で、闇がわだかまり始めた森の中で。

 ♂アルケミストと深淵の騎士子は、穴を掘っていた。

 見れば、辺りには幾つかこんもりと盛られた土饅頭が見える。

 つまり、二人は墓を作っていた。

 ♂アルケミは、♂アコライトの遺体を抱え上げると、穴の中に横たえ、その上から土を被せた。

 ゆっくりと、血に濡れたアコライトが埋まっていく。

「ごめんな。こんなことしかしてやれなくて」

 ぽつり、と呟いてから新しい墓の上に、形見の逆毛を置いた。

 それは、相変わらずぴん、と空に向って伸びて、風に揺れていた。

 少年の本当の髪は、少女の様にさらさらの栗毛で。それとは全く違っていたけれど。

 彼は、そのどちらもが少年に相応しい、そう感じていた。

「我が友よ。私は汝の意志を継ぐ。…だから、全てが終わる時まで、静かに眠れ」

 相変わらず真面目に、けれど何処か悲しそうに、深淵は呟きながら目を瞑った。

 手にした剣は折れているとしても。心はもう折れる事を知らない。

 誓いの言葉は、冥府の川さえ飛び越えて、二人と優しい助祭とを永遠にする。

 じんわりと浮かんでいた汗を拭ってから、錬金術師は騎士の方を向いた。

 決意を秘めた目を、じっと深淵は見つめ返す。

「なぁ。深淵さん。さっき、俺の言ってたこと覚えてるよな。

それで…一つ決めた事があるんだ」

 前半分に、騎士が頷くのを確認してから、後ろ半分を口にする。

 鞄から支給された地図兼名簿を取り出すと、一つの名前を指差した。

「これから、この人を探してみようと思う。俺達だけじゃ、どうにもならない」

「ふむ…成程な。確かに、この首輪が呪物であるなら…」

「この人が一番適職ってな」

 その時だ。錬金術師の指先に釣り込まれるようにして名簿の一点を見た騎士の横合い。

 少し離れたあたりで茂みが、がさりと大きくざわめいた。

 深淵の騎士が大鉈を手に身構え、急いで地図をしまい込んだ錬金術師も、初心者用胸当てと、石ころを入れた鞄…即席のフレイルである…を、騎士の後ろで握る。

「誰だ!!」

 亡、と。その姿は見ようによっては森の奥から現れた亡霊の一団にさえ見えた。

 黄昏の森。その奥から現れたのは、幻影が如き二つの人型だったから。

「私だ、深淵殿」

 両手を挙げ、一応交戦の意思が無い事を示しながら、幻影…ドッペルゲンガーは一言、そう答えた。



<場所:moc03&pay01の辺り 状態&持ち物:深淵s=>変わらず DOPs=>♀騎士は目を覚ましている。>



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