バトルROワイアル@Wiki

179

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179.真なる最適解



瓦解した建物からしばし離れた別の家屋の中に、♀セージたちはいた。

先の実験で多くの魔力を浪費し、以前目を覚まさない♂プリーストを休ませるためだ。

♀セージは、静かな寝息を立てている♂プリーストの傍らで、傷の残る背を柱に預け、座り込んでいた。

本当ならばこんなところで足止めを食っている場合ではない。

こちらの目論見をGMに気付かれてしまえば、おそらくこの辺一帯は瞬く間に禁止区域にされてしまうだろうし、

そうでなくても、ルイーナ砦へ進む道はすでに限られている。

ほんの気まぐれでこのかすかな希望が閉ざされてしまうことも、想像に難くない。

だが、かといって♂プリーストを休ませない選択肢もなかった。

彼の魔力なくしては、首輪外しの成功などありえないのだ。

ほぅ、と深く息をつき、先の実験を思い返す。

私は間違っていなかったはずだ。しかし、歯車は狂ってしまった。

たった一つだけ、見落としていたのだ。

♀ウィズの、彼女の情の厚さを見落としていたのだ。

あの状況で私を助けに来るなどということは、微塵も想像できなかった。

その想像力の欠如が、優先されるべき命を損なわせた。

今は後悔している時間などない。

彼が眠っている間にも、やれるべきことはあるはず。

そう思っても。そう分かっていても。

彼女は、動くことが出来なかった。

別室から♀クルセと♂アーチャーが戻ってくる。

だが、二人は依然としてそのままだった。

♂プリーストはまだ目を覚ましていないし、 ♀セージもまた、空ろな目で♂プリーストの寝顔を見下ろしているだけだ。

「♀セージさん・・・」

♂アーチャーが声をかけるが、そっと視線をもちあげて♂アーチャーの顔を一瞥すると、また♂プリへと視線を戻してしまう。

『気にしているのか?』

♀クルセが、おそらくは別室で見つけてきたのか、ノートにさらさらと書いて♀セージに見せた。

♀セージがそのノートを受け取り、たった一言書き足した。

『当然だ』

たったそれだけの文字。

だがそれは、♀クルセを激昂させるには十分過ぎる投げやりさだった。

憤怒の表情でノートをひったくり素早く書き足すと、♀セージの胸倉をつかみ、空いた手でその顔にノートを押し付ける。

『なんだその無様な面は!

そのような腑抜けで、♀ウィズの代わりが務まるつもりか!』

♂アーチャーがこっそりと差し出したノートを受け取り、セージもまた睨み返す。

『私に代わりなどできるものか。

あそこで死んでおくべきは私だったのだ。

私が今生きていることが、既に計画の失敗だ。』

「ふざ・・・」

叫ぼうとした♀クルセの口を慌てて後ろから♂アーチャーが塞ぐ。

♀クルセが改めてノートで言葉を返す。

『ふざけるな!

♀ウィズも骨抜きのお前を残すために火の中へ飛び込んだのではあるまい。

皆で脱出するのが我らの計画だろうが!

今度はお前の命を以て裏切るつもりだったというのか!』

その一言が、♀セージの心を捕らえた。

私の命を以て裏切る・・・

そんなこと、考えもしなかった。

ただ、私は自分の命を秤からおろしただけのつもりだった。

首輪に死を錯覚させる方陣が♀ウィズにも描けるのなら、私の魔力など、存在などその廉価に過ぎないと。

故に、この命は♂プリーストの魔力よりもずっと軽いと、そう考えていた。

しかし、違っていた。

♀クルセの言うとおりだった。

私が欠けてはいけなかったのだ。

皆で生きて帰る計画、その中には私の命も含まれていたのだ

故に、私が欠ける事はそれ事体が計画の失敗なのだ。

誰かの命を犠牲にして他の誰かが生き残ればよいのなら、結局はゲームに乗ればいいだけの話なのだから。

それはあまりに簡単な盲点だった。

♀ウィズはその事を分かっていたのだろうか?

・・・違うな。

そこで♀セージは小さく笑みを浮かべた。

最初からそのような愚かしいことを考えたのは私だけだったのだろう。

♀ウィズは間違いなく全員で助かるために、燃え崩れる家の中へと飛び込んできたのだ。

それは決して冷静な行為とはいえないが、しかし。

間違いなく、計画のための最善手。

真なる最適解だった。

♀セージがノートを見せる。

『済まない、私がどうかしていた。もう大丈夫だ。』

その瞳に魂が宿っているのを見て、♀クルセは満足げにうなずき、立ち上がる。

「本当に大丈夫か?」

♂アーチャーが問いかける。

「ああ。」

♀セージは迷いなく答えた。

「セージがこれ以上、理屈でウィザードに遅れをとるわけにはいかないからな。」

と、不適に笑ってみせる。

その顔に、黒くふかふかした塊が投げつけられる。

「ぶっ!?」

目の前にぽとりと落ちたそれをよく見れば、垂れ猫の人形だった。

飛んできた先を見上げると、♀クルセがいた。彼女が投げた物らしい。

『故意か偶然か・・・屋敷に走り出す前に♀ウィズが落としていったものだ。

お前が使うのが一番だろう。』

♀セージは頷くと、それをちょこんと頭に乗せる。

『ここから見守ってあげるから、しっかりやりなさいよね。』

♀セージの頭の中に、♀ウィズの声が聞こえた気がした。



<♀セージ、所持品/垂れ猫 クリスタルブルー プラントボトル4個、心臓入手(首輪外し率アップアイテム)>

<♂アーチャー所持品/アーバレスト、銀の矢47本、白ハーブ1個>

<♀クルセ、所持品/青ジェム1個、海東剣>

<♂プリースト、所持品/チェイン、へこんだ鍋>

<現在地/ゲフェン市街>

<以降このPTは筆談にノートを用いることができる。

ROの世界にもノートくらいはあると・・・思います>



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