バトルROワイアル@Wiki 181


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181.視点


 一人と一匹が出会う少し前に視点を定める。
 プロンテラ北の森の中を子バフォは走っていた。
 目指す目的は一つ。♂ローグ達と再開する事。

「我が戻らぬ間に先行してくれるなよ、♂ローグ…っ」
 下草を踏み、低木を掻き分け、時には段差を飛び越えて、道行を急ぐ。
 早くしなければ。全てが終わった後では遅すぎる。
 しかし、幾ら自分でも、このまま進んでローグ達と会えるかどうか。
 焦りばかりが、蟻の様に背筋を這い登って来るのを感じる。

 木々に切れ目が。石積みの扉の様な、祠の様な建造物が見えた。
 森の出口だ。この先には、ヴァルキリーレルムに隣接した一帯と繋がっている。

 森が、途切れた。丁度、北の森の出口は見晴らしの良い小高い丘。
 赤い夕日。砦の群れと、鏡の首都が。しかし、見渡す限り何処にも♂ローグ達の姿は無い。
 事実を認識して、子バフォは荒い息を付きながら、落胆に肩を落とした。

「糞…っ、間に…あわなかったかっ」
 自ら移動したか、或いは殺人者(マーダー)に追われたか。
 判断は付け難いが…どちらにしろ、目の前の現実は変わらない。

「あ奴等が行きそうな場所を考えねばな。一体、何処に行ったか」
 どっ、と噴出してくる疲れを荒く息を吐いて押さえ込みながら、
子バフォは、周辺の地理を脳裏に思い浮かべようと、目を瞑る。

 ──ヴァルキリーレルムは、封鎖されていた筈だ。
 閉鎖区域しか先がない迷いの森に行く可能性は低い…と思う。
 (最も、例えば先の♂BSに追われて逃げたなら、迷いの森の更に深部に行くのも悪い選択ではないだろうが)
 だが、そもそも殺人者と鉢合わせる可能性はどのくらいか、という問題がある。
 ならば。

「…子バフォ?」
 そこまで考えていた時、頭上からそんな声。
 彼?が見上げるよりも早く、樹上から人影が降って来た。
 どうやら、木の上に姿を隠していたらしい。

 見慣れた赤い髪。けれど、片腕には痛々しく包帯を巻いていて、体中に細かな傷。
 ♀アーチャーが、胡乱げな顔でこちらを見ていた。


 さて視点は今に、草むらに伏せた弓手に。


「………」
 地に伏せ、弓手はじっと息を殺していた。
 問題の♀ローグとの距離は…およそ、彼女の弓が届くか届かないか程。
 相手がこれから此方に気づくかどうかは…微妙な距離。
 幸いにして、今は気づいていないようだが。

 他にも、色々疑問が浮かぶ。
 ♀ローグは死んだ筈ではないのか?とか。
 ♂ローグはどうなったのか、とか。

 バクバクと心臓の音が酷くうるさい。
 浮かんだ疑問を考えている余裕も無い。
 今ばかりは、生きている事が疎ましかった。
 勿論、自殺願望は無いのだけれど。

 ──なんだか、今のあたし、アイツみたいね。

 ふと、そんな思考が浮かぶ。
 伏せて、息を殺して、身を潜める。
 敵を前に只、耐える。

 言葉にするのは、簡単だ。
 けれども。

 ──簡単な事ほど難しいって言うけど…本当ねぇ。

「…弓手殿、何を笑っておる?」

 隣から、子バフォの囁き声。
 どうやら、知らない間に笑っていたらしかった。
 こんな時に、あの馬鹿ローグの事思い出して笑うなんて、我ながら緊張感が無いことだ。

 でも。

 ──あたしは誰?あいつに護られて、一人になったらガタガタ震えてるだけで。
 そんなの認めない。あんな糞年増のオバハン如きが、このあたしの事舐めないでよ!?

 笑みが、深くなる。

「こーんな事程度でビビッてちゃ、再開した時♂ローグに笑われるって思ってね」
 子バフォに、そう囁きを返す。
 最も、だからって考え無しに年増に突撃する様な無謀はしない。
 ♂ローグならば、そうする筈だ。

 じっと、息を潜める。
 クールになれ。自分に出来る事を考えろ。
 ひょっとすると…この時、♀アーチャーは一度『死んだ』のかもしれない。
 子供は、大人になる時。一度自分自身を殺すものだから。
 だから、さっきまでの心臓の音はいつの間にか聞こえなくなっていた。

 二、三度♀ローグはきょろきょろと辺りを見回す。
 しかし、そのまま二人の居る方とは別の場所へと歩いていった。


 視点は更に流転。♀ローグが去りて後の一人と一匹へ。


「すまぬ。尋ねたいことは色々あるが、先ず再確認させて欲しい」
「あたしも聞きたい事とかはあるんだけど…まぁ、いいわ」

 そう言ってから、♀アーチャーはこれまでの事をもう一度とつとつと話し始めた。
 森を出るまでは♂ローグ達と一緒に居た事。♀ローグの事。
 そして、自分はそいつから逃げる為に崖から飛び降り、この傷を負ったという事。

 そして、思い出したかのような仕草を見せると、一つ付け加える。

「もうちょっと抜けて、ヴァルキリーレイムの手前まで行ってたんだけどね。
何か手掛かりになるものはないかって、又戻ってきたわけ。結局、何も見つからなかったけど」

 自嘲する様に言う弓手に、しかし真剣な面持ちを向ける。

「待て。『何も見つからなかった』。今、主はそう言ったな?」
「そうだけど…それがどうかしたの?」
「大収穫だ。よく考えてみろ」
「?」

 いまいち理解が追いついていない、といった風な弓手に子バフォは続ける。

「もし、♂ローグ達に何かあったのなら、その痕跡ぐらい残っていてもおかしくないだろう?」
「…成程。確かに、何も残ってないって方が変だし」

 その答えを聞いてから、鎌の柄で何か文字を書き始める。

『簡潔に言う。♂ローグ達は生きていて、多分、ここから移動している。
ここまでは了解していると思うが…恐らく奴は、フェイヨンの砦に向っていると思う』
『どうしてフェイヨンに?別の所かもしれないじゃない』
『消去法だ。我等は脱出の為に行動している訳だが、まだ封鎖されずに残っている目的地はフェイヨン砦かゲフェンの砦しかない。
そして後者は♀セージ達が向っている。と、なれば一番選びそうなのはフェイヨンなのだ』
『♀セージさん達と合流しようとするのも考えられるんじゃないの?』

 その問いに、子バフォは首を横に振った。

『確かにその通りだ。だが、奴にフェイヨン砦に向われるのは決定的に不味い。
推測に過ぎぬが…もし、フェイヨンのエンペリウムを取られれば、このゲームは最悪の結末を迎えかねない』
『それってどういう事?』

 弓手は、眉を潜めながら筆を進める。
 一方の子バフォは、返すべき言葉を慎重に吟味し……多分に専門的な知識が入る上、単なる推測だからだ…そして、筆を執った。

『この箱庭は、四箇所の柱が支えているテーブルの様なものかも知れぬ、と言うことだ。
セージ達がゲフェンのエンペリウム、つまりこの世界の柱を外した後、ローグ達がフェイヨンのそれを外したらどうなることか。
あくまでこれは我の推測だが、最悪そうなる可能性もありうると思うのだ』
『バランスを失って…ガシャン、という訳ね。でも、それだと他の参加者達が首輪外しの方法に気づいてたらどうするの?』
『それは運を天に任せるしかないな。我とお主だけで他の参加者達を説得して回る訳にもいかぬ』

 弓手が、筆記に使っていた小枝を投げ捨てて立ち上がる。

「それなら、早いこと♂ローグ達と合流しなきゃね。それから、ゲフェンに向いましょ。♀セージさん達とも会わなきゃ」
「…ああ。そうだな、弓手殿」

 こうして、一人と一匹は再び歩き始める。
 目的は一つ。この腐ったゲームを終わらせること。
 道は、もう見えている。後はその上を歩くだけ。


 そして、視点はまだ見ぬ未来へ。


<子バフォ&♀アチャ 持ち物&状態変わらず 移動プロ北D出口付近からフェイヨンルートに 目的:♂ローグ達と合流>

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