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198

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198.激闘プロンテラ南フィールド 前編


深淵の騎士子はペコから飛び降りると、一足飛びに踏み込んで♀ローグに斬りかかる。
その予想以上に鋭い踏み込みに、♀ローグは大きくその場から飛ぶ事にした。
そして、ツヴァイハンターが振るわれるが、その軌跡を見て♀ローグは自らの判断が正しかった事を知る。

『早いっ! それにこんな巨大な剣振っておきながら、全く体勢崩れないなんざ大したもんさね』
しかし深淵の騎士子は逃がさぬとばかりに、大剣を横凪ぎに振るう。
それを♀ローグは深淵の騎士子の方に踏み込みながら思いっきりかがんでかわしにかかる。
『猪口才な!』
深淵の騎士子はその卓越した技術と腕力で、無理矢理剣の軌道を低くする。
予想していた剣筋よりも低く剣が襲ってきた事で♀ローグは即座にやり方を変える。
『こなくそっ!』
ダマスカスでなんとかそれを受け止めるが、
ツヴァイハンターの重量に深淵の騎士子の腕力が加わった一撃を受けきるには、荷が重すぎた。
受け止めたダマスカスごと後ろに吹っ飛ばされる♀ローグ。
『こーりゃまずいね。このお嬢ちゃんとんでもないわ……んじゃこういう手はどうかしらね?』
すぐに立ち上がると、深淵の騎士子に向かい数歩進む。
深淵の騎士子はツヴァイハンターを真後ろに持っていき、
剣を♀ローグから見えないようにしつつ、一撃の重さを最大限まで引き出せるよう構える。
そこで不意に深淵の騎士子の視界から♀ローグが消え失せる。
『何っ!?』
『残念、相手はこっちよ』
♀ローグはバックステップで倒れ伏している♂ケミの方に向かっていたのだった。
すると、♀ローグの真横から巨大な影が襲いかかる。
いななきと共に両の前足で♀ローグに襲いかかったのは深淵の騎士子の黒馬であった。
それをかわしながら、♀ローグは更に♂ケミの側に駆け寄ろうとするが、
今度はその真正面からペコペコの嘴が襲いかかる。
『っだー! なんなのよこのアニマル軍団!』
体を捻ってなんとかそれもかわすが、
黒馬も更に攻撃をしかけんとしている事から、一度この場から少し距離を取る♀ローグ。
そこに、深淵の騎士子が駆け寄ってくる。
「卑怯者が……貴様程度の浅知恵なぞ我々に通用するものかっ!」
二匹は♂ケミの側に立ち、♀ローグを威嚇している。
そして、♂ケミも自らの治療の為にもぞもぞと動き始めていた。

にらみ合う一同、そこに雄叫びと共に突撃してくる影があった。
その人物を見た♀ローグは顔を引きつらせる。
『ブラックスミス!? なんてタイミングで出てくるのよこいつは!』
その突撃の先に居たのは、誰あろう♀ローグ。
形勢不利と見た♀ローグだったが、ちょうど♀ローグを挟むようにして、深淵の騎士子と♂BSが位置している為、とても逃げずらい。
それでも背後にどっちかを抱えるのは、
精神衛生上とてもよろしくないので、開き直って逆に♂BSの方に向かって駆け出す♀ローグ。
『一発勝負っ!』
♂BSは左腕しか無い。
ならば得物が斧ならば向かって右上からの斬り降ろしが一番最適かつ、効果的な攻撃になる。
♂BSの攻撃をそれと決めつけて、その瞬間を計る。
幸い♀ローグの読みは当たったようで、♂BSの斧が♀ローグの右肩口に向かって振り下ろされる。
その瞬間、♀ローグは移動の歩幅を更に大きく取り、一気に♂BSの左側を駆け抜ける。
本来ならば、♂BSの膂力があれば通り抜ける♀ローグを
右腕であっさりと捕まえる事も出来たであろうが、片腕の♂BSには無理な芸当であった。
そのまま転がって♂BSの背後に回り込むが、
♂BSは♀ローグには構わずに、今度は更に奥に居る深淵の騎士子に斬りかかる。
「ぬうっ! 見境無しとは……やはり貴様がドッペルゲンガー達を!」
真横から振るわれるブラッドアックスに、ツヴァイハンターを叩きつける深淵の騎士子。
派手な激突音が響き、双方の武器が弾かれる。
♂BSは弾かれた位置から再度反動を付けて、
深淵の騎士子の頭頂目がけてブラッドアックスを振り下ろす。
深淵の騎士子も全力で下からツヴァイハンターを振り上げる。
長い刀身を器用に扱い、剣の柄に近い所でブラッドアックスをはじき返す。
そして、ツヴァイハンターの刀身を器用に空中で半回転させ、
勢いを付けるとそのまま♂BSに真横から斬りかかる。
対する♂BSも同じようにブラッドアックスを振るって勢いをつけながら、ツヴァイハンターにそれを叩きつける。
火花を散らす二本の武器。
その様を見ていた♀ローグは、冷汗が止まらなかった。
『うっわ。あの♂BS相手に全然力負けしてないじゃないあの子……でもね』
♀ローグも指をくわえて見ている気は無い。
『どっちも邪魔なのよ!』
深淵の騎士子の側面に回り込んだ♀ローグは、♂BSが斬り込むのと同時に深淵の騎士子に斬りかかる。
頭頂を狙い大上段に振り下ろされるブラッドアックス。
そして真横から脇腹を狙い突き込んでくる♀ローグ。
ツヴァイハンターを振り上げている余裕は無い。
深淵の騎士子は、ツヴァイハンターから片手を離しながら
♂BSに向かって一歩踏み込み、振り上げられたブラッドアックスの柄を真横かた手でひっぱたく。
それで軌道を変えきれた訳ではないが、なんとか肩の先を削られるだけで済んだ。
そして、軌道変わったブラッドアックスは、真横から襲いかかる♀ローグへと振り下ろされる。
♀ローグは慌てて突こうとした手を引っ込め、
♂BSは予想外の場所にブラッドアックスが振り下ろされた事により、♀ローグ側へと体勢を崩す。
深淵の騎士子は、片手に持っていたツヴァイハンターを真後ろに思いっきり引く。
両足で大地を強く踏みしめ、剣を握った左腕に筋肉が漲る。
腰は既に限界まで捻りきってある。
「ブランディッシュスピアッ!」
ミッドガルド広しといえど、この技を剣にて行える者は数える程であろう。
それ故に、♀ローグは完全に深淵の騎士子の動きを見誤った。
そしてそれは♂BSも同様であった。
まともに喰らい、吹っ飛ぶ二人。
余りの衝撃に、♀ローグは少しの間ショック状態に陥る。
しかし、深淵の騎士子は慎重で執拗であった。
「とどめだっ!」
吹き飛び倒れる二人に向かって駆け寄ると、再度ブランディッシュスピアを放つ。
朦朧とした視界の中、しかし♀ローグは深淵の騎士子のその癖を一発で見抜いていた。
『ここっ!』
ブランディッシュスピアを放つ瞬間、ほんの僅かだが深淵の騎士子の動きが止まる。

その瞬間に♀ローグはバックステップで転がるようにその場から逃げ出す。
辛くも逃れた♀ローグ。だが♂BSはまたもまともに喰らい、その場から吹っ飛ぶ。
そして、♂BSは今度は倒れたりはしなかった。
「なんだとっ!?」
驚きの声を上げる深淵の騎士子。
♂BSはそんな深淵の騎士子に、ブラッドアックスを振るう。
その一撃を受け損なった深淵の騎士子は、斬撃こそ剣で受けたものの、その勢いを止める事は出来ずに地面に叩きつけられる。
激しく胸部を打ち付けた事で、一瞬呼吸が止まる。
そこに振り下ろされるブラッドアックス。
ごろごろと横に転がってそれをかわすが、♂BSはそんな深淵の騎士子を全力で蹴飛ばす。
今度は背中を強打され、小さく悲鳴を上げて倒れる深淵の騎士子。
♀ローグはその様子を見て確信した。
『勝負あったね。切り札が効かないんじゃどうしようもないさね……さて、私は残った連中片づけてさっさと退散するとしますか』
ゴーストリングC持ちをなんとかする手段は未だ手元に無い。
この場で♂BSを仕留めるのは不可能と考え、♀ローグはこいつを利用しつつ他の連中を殺す事にした。


「彼方に響く、剣激の音~♪ っとくらぁ」
とんでもなく嫌そうな顔をした♂ローグが言った。
相変わらず不真面目な♂ローグの態度に顔をしかめながらも、バドスケはマンドリンを用意する。
「行くか?」
「行くっきゃねえから、腹が立つんじゃねえか。くそっ……どうしてこう厄介事ばっかかねぇ」
「アラームはここに居るんだぞ」
バドスケは優しくそう言うと駆けだした。
後に♂ローグも続く。
残ったアラームもつられて後に続く。
瞬時につっこむ♂ローグ。
「って、だからお前は残ってろって!」
「あれ? 違うの?」
その間にそれなりに走ってしまっているバドスケが叫ぶ。
「おい何やってんだ! ……って嘘だろ? ありゃローグ姐さんじゃねえか!」
その言葉に♂ローグも走り寄って戦場を確認する。
「げっ! なんつーしぶとい……死亡放送までされといてよくもまあ……しかも♂BSまで居やがるよ」
バドスケは既に走り出している。
♂ローグも後を追いながら言う。
「おいっ! とりあえずの敵は♂BSと♀ローグの二人でいいな!?」
「おう! だが深淵の騎士子にゃ注意しろよ! あれまで敵だったら俺達の手にゃ負えなくなるぞ!」
「そん時ぁインティミでてめぇ連れて飛んで逃げるさ!」
駆け出す二人、そしてアラームはその更に奥に居る動物達、そして傷ついて倒れる♂ケミが目に入った。
「た、大変! あの人凄い怪我してる!」
アラームはすぐにその場所目指して駆けだしたのだった。

♀ローグがアニマルコンビに近づく。
二匹は嘶いて威嚇するが、深淵の騎士子は身動きが取れない。恐れる事なぞ何も無いのだ。
「さて、さっさと片づけますかね」
油断はしない。確実に、そして迅速に処理すると決めて二匹に襲いかかろうとする♀ローグ。
「そいつは俺とのケリがついてからにしてくれよ」
振り向く♀ローグ。その視線の先では、♂ローグが首を鳴らしながら♀ローグに向かって歩み寄ってきていた。
「あんた……こいつら助ける気かい?」
「知らねえな。アンタにゃ借りが山ほどあるんでそいつを返したいだけさ」
「ふん。私が生きてる事、驚かないんだね」
「悪党はしぶといって相場が決まってんだ。……心当たりが無いでもないしな」

そう言って♀ローグの首輪を確認する♂ローグ。案の定♀ローグの首輪は外れていた。
「頭の良い男は嫌いじゃないよ……どうだい? 私と組む気無いかい?」
「いいねぇ。悪党同士、手に手を取って愛の逃避行とでも行くか?」
スティレットを構える♂ローグ。
「この期に及んで冗談たー気が効いてるね大将。本気で気に入ったよ、今晩にでもヤらせてやろうか?」
ダマスカスを構える♀ローグ。
「生憎、死体とヤル趣味はねえんだよ!」
スチレで♀ローグの首を狙って突く♂ローグ。
♀ローグはダマスカスでうまくそれを絡み取って狙いを逸らす。
スチレをはじき飛ばすつもりでそれを仕掛けたのだが、♂ローグはすぐさま斬り返して♀ローグの顔面を切り裂かんとする。
それを仰け反ってかわすと、♀ローグは♂ローグの胴にダマスカスを突き立てようとする。
ダマスカスの届くぎりぎりの距離を見切って♂ローグはそれを、簡単に身をよじるだけでかわす。
しかし、♀ローグの攻撃は尽きない。
胴、頭部、四肢を問わず、隙あらば何処にでも斬りつける♀ローグ。
♂ローグはそれを体捌きだけで全てかわしてみせる。
『ちっ、なんてすばしっこいんだい。それにさっきの突き。稲妻みたいな速さじゃないか!』
♂ローグは神経を研ぎ澄まして♀ローグの隙を見つけんと目をこらしているが、攻撃をかわすのに手一杯でそれ以上の事を考える余裕が持てなかった。
『なんなんだこいつの突きは!? くそっ! 動きがまるで読めやしねえ!』

咳き込む深淵の騎士子。
それでも♂BSから目を離すような真似はしない。
『コヤツ……一体何をした? 何故私の攻撃が効かぬか!』
以前と同じ無表情の♂BS。それが僅かに曇った。
深淵の騎士子の横から、バドスケが近づいてきたからだ。
「よう深淵の。モンスター繋がりだ、良けりゃ手伝うがどうだい?」
深淵の騎士子の意志はまだわからない。バドスケなりにそれを探る意味でも問いかけであった。
「……貴様は?」
「アーチャースケルトンバドスケ。俺は殺し合いにゃ乗ってねえよ」
相手が二人に増えた事で、♂BSは警戒して踏み込む事が出来ない。
深淵の騎士子はじろっとバドスケを見る。
「こやつには私の攻撃が効かぬ。貴様には何か手があるというのか?」
「なるほど……♂ローグの言ってた通りか。なら、俺にもあんたにもなんとかする手はあるわな」
「何?」
「こいつはゴスリンC使ってやがる。早い話、属性攻撃しかけりゃ当たるって事だ」
深淵の騎士子は厳しい顔で言う。
「それが真実なら、私は貴様を信用してやっても良い」
「そいつは何より」
深淵の騎士子が正面から♂BSに斬りかかる。
ツヴァイハンターの重い一撃を、♂BSはブラッドアックスを勢い付けて叩きつける事で受け止める。
横目でバドスケが♂BSの横に回り込もうとしているのを見るなり、♂BSはブラッドアックスを真横に大きく振って二人同時に牽制する。
それを深淵の騎士子は大きく仰け反ってかわしながら、片手を♂BSに向け、闇属性攻撃を放つ。
黒い障気の塊が♂BSを襲う。
それが♂BSを包むと、♂BSは苦悶の声を上げる。
すぐさまバドスケも障気を放つ。
深淵の騎士子とは違うが不死属性攻撃をバドスケも放つ事が出来るのだ。
二種類の障気に包まれ、苦痛を覚えた♂BSだったが、それは耐えられない程の物でもなかった。
雄叫びをあげながら、バドスケに斬りかかる♂BS。
それを深淵の騎士子の剣が受け止める。
「良かろう、貴様を信じよう」
バドスケは想像以上のブラッドアックスの勢いに冷汗を掻きながらも、なんとか笑い返す事が出来た。

背後に♂BSの悲鳴を聞いた♀ローグは、形勢が変わった事に気付いた。
『隙ありっ!』
待ちに待っていた♀ローグの隙、それを♂ローグは見逃さなかった。
吸い込まれるように♀ローグの喉を切り裂く♂ローグのスチレ。
♀ローグは驚きに大きく目を見開くが、片方の腕で自分の頭の上を押さえ、同時に♂ローグにケリを見舞う。
虚を突かれた♂ローグはまともに頭にハイキックを食らい、もんどり打って倒れる。
「っちゃ~。なんて事してくれるんだい、頭取れちまう所だったじゃないか」
頭を振りながら起きあがる♂ローグ。
「お前何した?」
♀ローグはくるくると丸めて髪で隠していた反魂のお札を軽く叩いてみせる。
「……マジかよ。つーかお前とっくに死んでんじゃねーか! んな奴が平然と夜の相手申し出るんじゃねー!」
♀ローグは腰をくねらせる。
「ん~。い・け・ず♪ まあ趣味が合わないんじゃしょうがないわね~」
そう言うといきなり後ろを向いてその場から逃げ出す♀ローグ。
この動きは読めなかったのか、一瞬反応が止まる♂ローグだったが、慌ててその後を追う。

アラームが♂ケミに駆け寄ると、黒馬とペコペコがその前に立ち塞がるが、すぐに道を開ける。
「大丈夫ですか! わっ、血がたくさん出てるよぅ~」
そう言ってわたわたと慌てるアラーム。
自ら怪我に治療を施していた♂ケミは苦痛に顔をしかめながら、アラームの方を向く。
「君……は?」
「あ、アラームですっ! 治療手伝いますっ!」
アラームの言葉から悪意は感じられない。
なればこそ黒馬もペコもアラームを通したのであろう。
「ごめん、助かるよ。そっちの包帯を……背中に回してくれないかな? 一人じゃやりにくくって」
だから、♂ケミもアラームを信用する事にしたのだった。


<♂ローグ 現在地/プロ南 ( prt_fild08 )所持品:ツルギ、 スティレット、山程の食料>
<アラーム 現在地/プロ南 ( prt_fild08 )所持品:大小青箱、山程の食料>
<バドスケ 現在地/プロ南 ( prt_fild08 )所持品:マンドリン、アラーム仮面 アリスの大小青箱 山程の食料 備考:特別枠、アラームのため皆殺し→焦燥→落ち着き>
<♂BS 現在位置/プロ南 ( prt_fild08 ) 所持品:ブラッドアックス、ゴスリン挿しロンコ 備考/目的はGM秋菜への復讐の一撃>
<♂アルケミ 現在位置/プロ南 (prt_fild08)所持品/ハーブ類青×50、白×40、緑×90、赤×100、黄×100、石をつめこんだ即席フレイル、無形剣>
<深遠の騎士子 現在位置/プロ南 (prt_fild08)所持品/折れた大剣(大鉈として使用可能)、ツヴァイハンター、遺された最高のペコペコ 備考:アリスの復讐>
<♀ローグ 現在位置/プロ南 (prt_fild08)所持品:ダマスカス、ロープ 備考:首輪無し・アンデッド>



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