バトルROワイアル@Wiki

2-017

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017.彼女の流儀

 自らが放った矢が受け止められるのを見るなり、♂ローグは目を見張って彼らに背を向ける。
 ♀ダンサーが追いつく間も無く、脱兎の如く彼は森の中に消えていった。
 現状を判断した上での賢い判断だ、と踊り子は思う。多分、戦力差を悟った上での撤退だろう。
 彼女や、その相棒であっても彼の立場であれば同じ選択をする。相棒を見ると、彼は彼女に軽くウインクをして返していた。
 …最も、彼とてもついさっき出合ったばかり。しかも、一時的な共闘関係に過ぎないのだが。
 太い麻の綱を持った彼女は、やれやれ、と言う風に肩を竦めると、後ろで呆然とその姿を眺めていた二人に向き直る。

「大丈夫だった?」
 あ……、と亡、とした顔で♀プリーストが答える。
 それから焦った様な表情に変わり、口早に言った。

「き、傷っ…傷が…ヒールで塞がらないっ!!どうしてよ!!ニューマも出ないし!!」
 見れば、血こそ止まっているものの、矢が抜かれた♂騎士の背中にぱっくりと傷が開いたままだった。
 元々軽度の錯乱状態にあった上に、目の前のそれは信じがたい事実だから、♀プリーストは少々恐慌さえきたして言った。
 ♀ダンサーは、自分の首輪を弄びながら、どうにも言葉を口に出しにくそうな顔をしていた。

「…あらららら。やっぱ、か」
 代わりに答えたのはその相棒、つまりバードであった。
 白くて短い髪をした彼は。それが彼の素であるのか妙に芝居がかった調子のまま言葉を続ける。

「いやぁ~俺っち達も、さっき遭遇した時からさ。寒いジョークで凍らなければ、スクリームでもスタンしなくてさ。
 こりゃ一体どうしたもんか、ってとこで一つ結論に辿りついちまったぁっ、て訳さー。
 ま、詰る所が俺っち達冒険者のスキルって奴が随分制限されちまってるみたいでさ。
 俺のジョークはジョークでしかないし、プリたんのヒールもあんまり期待できないんじゃないかな~って。
 …いやまぁ、アレだ。さっきのはムダだと解っててもせずには居れない切ない努力~っていうか何と言うか」
 ♀プリーストの頭で彼の言語にコンバートをかければ、こう言う事らしい。
 つまり、現状自分はスキルを碌に使えなくなっている…?どうして?神様どうしてですかっ。

「そんな……」
「あのね。貴方達も噂くらい聞いた事があるでしょが。バトル・ロワイアル。
 この国の天辺に居る頭のお目出度い人が考えた、自分達に従わない連中の抹殺計画。
 …まぁ、かく言うアタシも半分くらいはハッタリかなー、とか思ってたんだけど、このざまでさ」
「その昔ー…十年くらい前かなぁ。どーも同じような事歌ってたバードが居たらしいけど、まさか本当になるなんて俺っちもびっくりさ」
 などと、二人は口々に説明するが♀プリーストはと言えば、青い顔をして、♂騎士を見ているばかりだ。
 詩人と踊り子は互い互いに顔を見合わせる。まるで十年来の知り合いみたいな様子だった。
 最もそれは、目の前の現状の冒険者としては余りにこの事態への認識の薄い娘に関する呆れでもあったが。
 溜息二つに涙が一つ。それから青い顔が一つ。

「姉御~、見過ごすのも後味わりぃですぜぃ?さっき家みたいなとこ通ったし、手当てだけでもしてあげまっしょ
 医療キットぐらいは見つかるでしょ───そこの騎士君の運が良ければ」
「私もそうだけど、あなたも目的があったんではなくて?詩人君」
「いやぁ~拙者は詩人。詩人と来れば、女性と愛の味方ってのは定説でゲスよ?」
 カカカ、とデスゲームの最中にも関わらず太鼓持ちみたいに笑うバードに♀プリーストは恐慌の中で僅かに嫌悪感を覚えた。
 この人は何で、こんな事を言っているのか判らない。
 最も、いきなり目の前で親しい友人とも言える中の♂騎士を射られれば、彼の事しか目に入らなくなるのも無理なからなかったが。

「そういう訳だから。手当てぐらいはしてあげるわ。私達もその後でそれぞれやる事があるから長い間一緒にはいられないけどね」
「…解ったわ」
 とは言え。目の前の女性がこの島では数少ない正常人であるとは解ったので。
 ♀プリーストは、こくり、とその申し出に頷いておいた。

<ダンサー 持ち物変化なし 髪型未特定 少し離れた場所にある小屋に移動中 >
<バード 持ち物:同上 髪型:白いBSデフォ 状態:同じく移動中>
<♀プリースト 持ち物:同上 髪型:未特定 状態:軽錯乱 移動中>
<♂騎士 持ち物:同上 髪型:同上 状態:負傷 同上 移動中>
<♂ローグ 状態持ち物変化無し 髪型不明 逃亡>

 備考:一同の所在地は島の北部。またこのPTは一時的なものである。


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