バトルROワイアル@Wiki

2-023

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23.Servants


「どうしてこんなことになっちゃったんだろう?」

砂浜をとぼとぼと歩く彼はクリーム色の修道服に身を包むアコライト。
モンスターによって両親を早くになくした彼は教会所属の孤児院で育てられた。
貧しくも敬虔な神父の下、息を吸うように神の教えを学んだ彼は当然のように聖職者への道を歩むことを選ぶ。
それは、他人を助けられる人になりなさいと言う神父の教育の賜物でもあった。

「なんで殺しあわなくちゃならないんだよ」

彼にとって人と人とは助け合うものであって殺しあうものではない。
だから、彼は徴兵には応じず、教会を飛び出して自由に人の手助けを出来る冒険者という道を選んだ。
だというのに、なんていう運命の皮肉なのだろう。それとも神の試練というべきか。
彼は冒険者になってしまったが故にこの殺しの舞台へと招かれてしまった。

「うっ…くっ…」

悔しさに涙がこみ上げる。
自分が殺されることではなく自分も殺さなくてはならないことに。
他人のためにあるはずの祝福が振るうべき他人を見つけられないことに。
半ば本能的に海岸の岩陰に身を隠した彼は声を殺して泣き崩れた。

しばし、かすかな嗚咽をあげて泣いた彼はすっくと顔を上げる。
泣くことは彼にとっての精神安定の方法の一つである。
どうしようもない感情を涙にして流してしまえば、そこには対処すべき現実しか残らない。

「これから、どうしよう…」

一人は心細くない。両親が死んだときに比べれば。
でも一人ではこの島を抜け出すことはきっと出来ない。
だったらとりあえず信用出来る人を探さなきゃならない。とてもリスクの高いことではあるけれど。

「施しは与えなければ受けられない…。神は足掻くものにこそ微笑を下さる。
 神父様、僕は死ぬかもしれません。けれど諦めません」

目元をぬぐってこれからの行動プランを立てる。
僕と同じ事を考える人はいるだろうか?
これを機会に他人を蹴落とし殺してでも生き抜こうとする人は多いと思う。
僕だって、腕っ節が強ければそう考えるかもしれない。

けれど、そんな人の中にも僕のように考える人がいないと断言できない。
甘い考えだし薄い望みではあるけれど、今はそれにかけるしかない。
行動を決めれば自然と気持ちも落ち着いてくる。

まず、やっぱり誰か一緒に脱出できるような人を探さなくちゃならない。
次に、そんな人を見つけるまでの間、このゲームに乗ってしまった人から身をかわさなくてはならない。
そして、最後に考える。どうしても人を殺さなくてはならなくなったとき。
仲間を守るとき、自分の身を守るとき、そのときは…殺さなくてはならない。

冷たい決意を胸に少年は支給品の詰まった鞄をあさる。
何日分かの食料と応急手当に使えそうな品。そして古く青い箱を模した宝箱。
二つあるそれの一方を手に取り思い切り良く開いた。
もし自分に使えない品が出たとしても交渉の材料くらいにはなるだろうという軽い気持ちで。

ぼふん、という気の抜ける音とともに白い煙が立ち上る。
罠かと思った彼はあわてて両手で箱を押さえ込んだ。

むに。

「え?」

思いもかけずやわらかいものを握りつぶしてしまった感触に彼はあわてて身を引く。
煙の中を透かすように見やって、古く青い箱から出るはずのないモノを見つけた。

露出度の高いエナメル質の衣装。
顔の半分を覆う仮面。
そして、腰まで伸びる銀色の髪。
腰には猛獣をしつけるようなゴツイ鞭。

胎児の様に丸まっていたその人物は、んーっと背伸びをすると姿勢をただし少年の前に座る。
切れ長の目で♂アコをしげしげと眺めるとぱさりと髪をかき上げた。
血のような赤いルージュを引いた女―――ジルタス―――は艶のある声で言う。

「あら、今度のご主人様は栗毛のかわいい坊やなのね」
「なななな、なんで!?」
「さぁ?なぜここにいるかはわからないわ」

まともな言葉になっていない♂アコの質問に答えるあたり意外と律儀な性格をしている。

「でもね、一つだけはっきりしていることがあるの」

ずい、っと顔を近づけてジルタスは言う。
眼前に迫った迫力のある美貌を前に♂アコの胸が高鳴る。

「あなたがご主人様で、あたしはあなたの奴隷。あなたが神さまの下僕であるようにね」

何を想像したのか、♂アコが顔を真っ赤にして卒倒するまで数秒とかからなかった。

<♂アコライト 持ち物:青箱1(未開封) 髪型:公式どおり 支援型>
<ジルタス 持ち物:種別不明鞭+いつもの格好(w 備考:♂アコのペット>


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