バトルROワイアル@Wiki

2-034

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034.真理を求めるもの


単純に、これは運が悪かったと言うしかない。
魔力を制限された今の状況を把握するために、ちょっと茂みに向かってコールドボルトを試し撃ちしただけだったのだが、まさかそこに人がいるとは思いもよらなかった。

* * *

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
どこをどう走ったかなんて、よく分からない。
気がつけば鬱蒼と繁っていた森の木立はまばらになっていて、ボクは膝まである草が生えた草原にたどり着いていた。
「た、助かったの……?」
辺りを見回しても、さっきの♀BSが追いかけてくる気配は無い。
念のため、探知の魔法を唱えてみたが――誰かに見つかるかも、という考えはちっとも浮かばなかった――やはり、近くに身を潜めている人間はいないみたい。
その事実が、ボクは柔らかな草の上にしなしなとへたりこませる。
「くぅっ」
瞬間、全身に擦れたような痛みが走った。緊張しすぎて痛覚が麻痺しちゃっていたのかもしれない。見れば、太ももやおヘソのあたりとか、無数の小さな傷がついていた。
まったく冗談じゃない。いつもいつも思っているけど、この魔術師の装束は何とかならないものなのか。この露出の高い服のおかげで、酒場に行けば踊り子と間違われるし、変にエロい目で見られるし、直結野郎にはナンパされるし、お腹は冷やすし、良い事なんてあった試しがないし。
……運が悪いと言ってしまえば、それまでだけど。
でも、こないだ見たGDN(ゲフェン日刊新聞)の週間占いには『今週の蟹座の運勢は概ね良好』って書かれてたんだよ。おかしくない? こんな殺人ゲームに参加させられている時点で運勢最悪だよ!?
――ああ、もうサイアク。
ボクが誠心誠意でゴメンなさいって謝ってるのに、あの♀BSときたらムキムキマッチョな力こぶ作って、

『こンの阿婆擦れがぁっ! ブチマワして犬のエサにすンぞゴルァァ!!』

みたいな事言って追いかけて来るし。野蛮だよね、まったく。
「きっとアレだよ。あの人、ヤンキーって奴だ。そうに違いないよ、うん」
呼吸を落ち着かせながら、ボクはつぶやいた。
きっと、あんな連中ばっかりがこのゲームに参加させられてるに違いないよ。
「じゃあ、なんでボクが混じってるのさ」
む。なんだか、それはヒジョーに不愉快。
……ボクってば、朝は七時に起きて夜はあまり夜更かししない程度に品行方正に生きてきたんだけどな。
それなのに、あんな♀BSみたいな野蛮で腕力バカでチチ・シリ・フトモモを必要以上にムチムチさせてる連中と同レベルですかそうですか。
「うー、サイテー……」
殺し合いなんて出来るわけ無いじゃない。そんな訓練受けちゃいないし。
大体、魔術師ってのは魔術の奥義と世界の真理を探求するのが役目なんだよ?
一対一で殺しあうなんて、お門違いもいいとこだよっ!
「あ。でも、先生ぐらい強かったら……」
……先生。先生だったら、こういう時どうします?
心の中で問いかけても、先生からの返事は返ってこない。当たり前だ。だって、会ったことすらないんだから。
その先生は、多くの人に慕われていた。博識で、なおかつ真理の求道に燃えたWIZだった。
でも、彼は信頼していた一番弟子に裏切られ、その女の味方をしたクルセイダーとプリーストらによって、非業の死を遂げたという。
――10年以上前のことだ。ボクはその頃生まれたばかりで、その先生のことは書物の中でしか知らない。遺された研究内容だって、彼の知識を妬んだ魔術師ギルドの連中が焼いてしまったのだから。
しかも、彼に大罪人の汚名まで着せて、彼の研究を禁止する念の入れよう。
許せなかった。
真理を求めるのが魔術師としての役割でありながら、最も真理に近づいた人を排除するという矛盾。
ボクには、それが許せなかった。
だから、ボクは焚書を免れた一部の研究日誌を、あらゆるルートを使って手に入れ、彼の研究を継ぐことを決めたのだ。
そうして研究すること二年弱。
あと少しで真理の何たるかをつかめる所だったのに。
突如、研究室に雪崩れ込んできた数名の軍人と魔術師ギルドの役員らに取り押さえられ、気がつけば見知らぬ広間に見知らぬ男。

『ぶっちゃけると、おまえらには今から殺し合いをしてもらいます――ってことなんですねー♪』

「ふざけんなー!」
GMジョーカーとか名乗るピエロ男の顔を思い出し、ボクは可愛いお腹が煮えくり返った。
ここでは死ねない。
このゲームに生き残り、必ずや真理をこの手につかんでみせる。
決意を新たに、ボクは支給品の青い箱をパカっと開けた。
中に入っていたのは黒く細長い布切れと、たった一本のスティックキャンディ。
「先生、見ていてください!」
道を見失わないよう、真理の道だけを求められるようにボクは黒い布を目に巻いた。
ボクはあの女とは違う。
ボクは、絶対に貴方を裏切ったりなんてしないのだから。



<♀マジシャン:草原地帯から西に移動(F-6→E-5)>
<備考:一人称がボク。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派>
<所持品:真理の目隠し、+10スティックキャンディ>


(+10スティックキャンディ:Lv99以上のWIZだけが装備できる硬い飴。とてもおいちぃ)


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