バトルROワイアル@Wiki 2-086


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086 誰が為の剣【深夜】


♀Wiz、♂プリースト、♂シーフ。三人の別ベクトルな思考を遮るように入ったGMジョーカーの放送。
固まっていた三人は、禁止区域の放送に慌てて地図を取り出した。

「よかった。幸いここは禁止エリアではなかったみたいですね」
♀Wizは安堵の表情を浮かべた。しかし同時に、少し悔やんだ。
どうしてすぐに話を始めてしまわなかったのだろう。話をするタイミングをまた逃してしまった。

「そ、そうだな」
「ほ、ほんとよかったですよねー」
♂プリーストと♂シーフもそれに答える。そして内心で叫んでいた。
あのピエロ野郎、せっかく彼女とじっくりお話できるチャンスだったのに、と。

「そういえば、気になることがあるんです」
「なんだよ?」
「さっきの放送の合間に、どこかで叫び声が聞こえた気がするんですよ」
♂シーフの言葉に、二人は顔を見合わせた。

「そんなん全然聞こえなかったけどなあ。フカシこいてんじゃねぇの?」
「いきなり疑うのはよくありませんよ。でも、私にも聞こえませんでしたけど…」
「嘘なんかついてませんよ! シーフの聴覚をなめないでください。
 嘘だと思うんなら来てくださいよ。こっちのほうから聞こえたんです!」
二人……いや、♂プリーストに♂シーフは怒りをむけた。
♂プリーストの手をむりやり引き、彼は足音も荒く歩き出した。♀Wizも二人を微笑ましく見ながら、それに続いた。

果たして♂シーフの聴覚に狂いはなかった。
彼が二人を連れてやってきた所には、♂騎士が蹲っていたからである。
巻きつけた包帯も痛々しく、苦しむ彼に♀Wizは慌てて駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
優しく話しかける彼女に、♂騎士はびくりと大きく体を震わせて――
「く、来るな! 俺の傍に寄るなぁ!」
そう叫んだ。その言葉に♂プリーストは眉を顰め、♂騎士に詰め寄った。
「あぁ? 美女に心配されてその態度たぁ、お前ほんとに男か?」
しかし♂騎士はそれが耳に入っていないかのごとく、さらに体の震えを強くした。

「あぁ…そうか、視界に人を入れたくないんなら、こうすれば……」
ぼそぼそと呟きはじめる♂騎士。♂プリーストはその言葉に嫌な感覚を覚えた。
「……っ!」
「てめぇ、何やろうとしてんだ!」
ナイフを握りしめ、それで自らの目を斬り裂こうと持ち上げた♂騎士の腕を、♂プリーストが慌てて掴んだ。
「あ、あぁ……俺は、見たくないんだ。俺以外の人間を、俺の目で……」
がっくりと肩を落とす♂騎士。慣れてきたのか、少し落ち着いたようだった。

「ナイフに、血が……」
取り落とした♂騎士のナイフを、♂シーフが拾い上げた。
「どうします、彼? もしかしたら人を殺してるかもしれませんよ」
♀Wizに問いかける。彼女はしばし思案すると、こう答えた。
「酷い怪我ですし…放っておくのはまずいでしょう。
 それにもし彼が人を殺していたとしても……この怯えようです。悪い人間ではないでしょうから」
「演技だったら……?」
「それはないでしょう。怯えと後悔……彼の表情にはそれが見えます」
彼のような表情をした人間を夢で見たことがある、という根拠が♀Wizにはあったが、それは口にしないでおいた。

「恥ずかしいところを見せてしまってすまない」
♂プリーストによる治療を受け、安心感を覚えたのか、♂騎士の怯えは止まった。
だが彼の表情の陰りは消えていない。…やはりどこかで人に対する恐怖心があるのか。
「まだ傷は完全に塞がってはいないでしょう…今晩は私たちと共に過ごしませんか?
 これからどうするかは、明日話すことにして」
「……」
♂騎士はしばし考えた。人への怯えはまだおさまっていない。
しかし少しでも信頼できる人間と傍にいる以上に、安心感を得られる状況はないと答えを出した。
「……わかった。迷惑をかける」
いえいえ、と優しく微笑む♀Wizに、♂騎士は奇妙な感覚を覚えた。
この状況でなぜそんな表情ができるのだろう、と。

「そういやお前、箱開けないのか?」
あんなことがあったのだから当たり前だが、どうにも寝付けず一人月を見上げていたところ。
見張りの♂プリーストからそう言われるまで、♂騎士は箱がひとつ残っていることをすっかり忘れていた。
もう死んだような身の自分が使うより、♂プリーストたちに使ってもらったほうが有意義な気はしたが。
そう言うとどうにも相手側が不機嫌な顔になるので、仕方なく彼はそれを開けてみることにした。

「……これは」
剣、だなんて。それを振るって守る相手ももはやいないというのに…神は自分に何をさせようというのだろう。
これを振るって♀プリーストにしたように人を殺せというのか?
それをする悪い意味での度胸すら、臆病者の自分にはないというのに。
月の光を受け鈍く光るツルギの刀身を、ぼうっと♂騎士は見つめた。

「おいおい、なにぼーっとしてんだ」
♂プリーストに声をかけられ、自分が相当ぼんやりしていたことに気づき、♂騎士は顔を赤らめた。
どかっ、と隣に座られ、距離を離そうとしたが、ふと何かを思いついたような表情をして彼は体を戻した。

「なあ…あんた、そんなナリしてるけど一応プリーストなんだよな」
「そんなナリ、とか一応、とかは余計だっつの」
そう言って睨んでくる強面はやはりそれらしくは見えない。
「んで何だよ、突然」
当然の疑問だ。♂騎士はそっと目を閉じて答えた。

「懺悔、聞いてくれないか。何だか心に色々なものがたまってて…吐き出したくてたまらないんだ」
「柄じゃねーことさせんなよ…ま、話くらいなら聞いてやるけど」
ありがとう、と呟くと、♂騎士は静かに話し始めた。

+++++


俺にはさ、相棒がいたんだ。♀プリーストの。

「いきなりそれか。殴られたいのか、あぁ?」

……おい、なんでいきなり睨んでくるんだ? 顔怖いって、元からだけど。
相棒って言ってもさ、奴隷みたいな扱いされてたんだぜ…情けないことに。そんな相棒でもいいのか?

まぁいいや、本題に入ろう。
このバトルロワイアルに参加させられてポータルで飛ばされたとき、偶然だか故意だか知らないがあいつと俺は近くに降ろされた。
その時さ、やっぱりほっとしたんだ。殺し合いなんかさせられるんだ。見知った顔がいるってのはやっぱり違う。
この時はまだ、俺もまともだったんだよな。人と一緒にいることで安心感を覚えてたんだから。

でも最悪なことにローグの野郎に襲われて、俺はこんな怪我を負っちまった。
幸いダンサーとバードの二人組みに助けられて、あいつも俺も死なずにすんだんだけどな。

目覚めた時に見たのは、眠ってるあいつの姿だ。
それを見て、なんだか胸が痛くなった。
あっさりローグ野郎にやられた情けなさと、最後まで守りきれなかった申し訳なさでさ。

その時ダンサーの姐さんに、あいつのこと守ってやれって言われた。騎士なんだからって。
俺は…なぜか返事が出来なかった。今思えば、その時から俺おかしくなってたのかもしれない。

あいつさ、俺のことずーっと看病してくれてたんだってさ。
いっつも高飛車で、俺のこと奴隷のように扱う嫌な女だったけど、この時は俺のこと心配してくれてたんだって。

でも、そんなあいつを……俺、殺しちまった。

……騒がないんだな。

 「懺悔は静かに聞くもんだ」

案外まじめに聞いてくれてたんだな。感謝するぜ。

ローグ野郎から受けた傷の痛みがはっきりしてきて…俺、急に怖くなったんだ。
俺は今モンスターと戦ってるんじゃない。俺と同じ人間と戦ってるんだってのが、今更、ほんとに今更なんだけどわかって。
見知った相手だって、俺を殺そうとするかもしれない。なんせ同じ人間なんだから。
そんなことを思い始めてた。

その時……赤い、赤い夕陽が部屋に差し込んできて。

目の前で眠るあいつが、何よりも怖くなったんだ。
例えれば魔物に対しての危機感。恐怖。
それと似た思いを、何故かあいつに対して抱いて――

魔が差した、ってこういうことを言うんだろうな。
俺は、抱きついてくるあいつを刺してた。

ああ……夕陽も、あいつが胸から流す血も、真っ赤だったな。

何でなんだろうな。自分が自分じゃなくなったみたいだった。
それでも確かに、そこにいたのは俺なんだ。あいつを殺したのも、確かに俺。
ん……俺、何言ってるんだろうな。おかしなこと言ってごめんな。

その時確かに俺は、恐怖を一瞬忘れることができた。
目の前に自分以外の人間が入らなくなったことに、何より安心してたんだ。

でも、少しして、自分のやったことの恐ろしさに気づいて。
俺は逃げた。あいつから…いやもう死んでるんだけどさ、逃げたかったんだ。

必死で走って、走って、忘れようとした。
忘れる? もちろんそんなことできるわけない。
忘れようとするたびに、あいつの幻が目の前に現れるんだ。
笑ってたり、怒ってたり、死ぬ前のいろんな表情をして。
それを見て、気づいた。最初からわかってたはずなのにな……

俺、あいつのこと好きだった。
わがままなお嬢様だったけど、そんなあいつが愛しかった。

でももう遅いんだ。あいつはもういない。
俺は悔やんだ。悔やんで悔やんで、気が狂いそうになった。
それに追い討ちをかけるみたいに、あのピエロ野郎の放送だ。

言うなっつってんのに、あいつの名前言うんだぜ、あの野郎。意地悪だよな。

あいつの名前を聞いた瞬間、俺は悟ったんだ。
俺はもう騎士じゃなくなっちまったんだって。ただの人殺しなんだって。

だってそうだろう? 騎士は誰かを守るもんだ。
でも俺には、もう……

……あれ、どうしてだろ。今更になって、こんな……

 「ストップ、そこまでだ。泣きながらの懺悔なんて重っ苦しくて聞きたくねえ」


+++++


「ごめん、な……本当になんで今更涙なんか……」
鼻をすすりながら途切れ途切れに話す♂騎士に、♂プリーストは何も言わなかった。

「…軽蔑、しないのか?」
「するかよそんなこと」
んなくだらねぇこと、とぼそぼそ呟いて♂プリーストはごろりと横になった。

「俺は人を、それも相棒を殺したんだぜ? 恐怖に負けて……騎士失格だ」
「騎士がどうたらいってるけどよぉ、お前騎士である前に人間だろうが?」
「……!」

騎士である前に人間。その言葉に、♂騎士は目を見開いた。

「人間誰でも恐怖はある。つーかな、怖さを知らない人間ほど恐ろしいものはねえってな。
 臆病なことは決して悪いことじゃあないんだよ。恐怖をおして前に進める人間が一番の勇者だとはよくいったもんだ」
「でも俺は前に進めなかった。一番楽な解決方法に走っちまった」
「人の慰めを無にするような返し方するんじゃねえ」

ふぅ、と♂プリーストがため息をつく。
彼の隣で、♂騎士は頭を抱えて叫んだ。自分の後悔を全て吐き出すように。

「軽蔑してくれよ! 罵ってくれよ! 女を手にかけた最低野郎だって!
 責められたほうがどんなに楽か。あんたに慰められる度に……痛いんだよ…心が……!!」
泣き叫ぶ♂騎士。見ていられない、といった風に♂プリーストは目を逸らした。

「……じゃあ聞くが、お前はどうしたいんだよ、これから」
「え……」
「死にたいのか? 簡単に命を投げ捨てることは、それこそお前が手にかけた嬢ちゃんの命を無駄にするってことだぜ」

俺が死ぬことが、あいつの命を無駄にすること?
♂プリーストの言動には驚かされてばかりだ、と♂騎士は思った。

「後悔してんならよ、嬢ちゃんの命吸い取った気分で必死に生きてみろよ。
 あいつらみたいに一本スジ通して。命を燃やして、何かのために生きてみな」
静かな寝息を立てて眠る♂シーフと♀Wizを見やりながら、♂プリーストは言った。

「……あー疲れた。説教なんかさせんじゃねえよ。俺は寝る。あとはまかせた」
「あ、ああ……見張りは俺がしとくよ。体は本調子じゃないが、気配に気づいてあんたらを起こすくらいはできるし」
言って少しも経たないうちに、♂プリーストは鼾をかきはじめた。恐ろしいほどの寝つきのよさだ。

「何かのために、か……」
ゆっくりと、♂騎士は月を見上げた。
月は柔らかな光を放っている。まるで照らす者全てを見守るかのように。
「♀プリ…俺どうしたらいいのかな」
一人呟く。彼は答えを決めかねていた。
もう一度、手に持つツルギの刀身を見つめる。

この剣を、何のために振るえばいい? 誰のために振るえばいいんだ?
これは誰のための剣なんだ。俺は誰のための騎士になればいいんだ――

答えは、まだ見つからない。


<♂プリースト>
現在位置:E-3
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し)、でっかいゼロピ、多めの食料、赤ポーション5個
外見特徴:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない)、怖い顔
備考:殴りプリ 、♀WIZ・♂シーフと同行

<♂シーフ>
現在位置:E-3
所持品:青箱(未開封)、多めの食料
外見特徴:栗毛
備考:ハイディング所持 、♂プリ・♀WIZと同行、盗作ローグ志望でちょっと頭が良い

<♀WIZ>
現在位置:E-3
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー
外見特徴:WIZデフォの銀色
備考:LV99のAGIWIZ、GMに復讐、♂プリ、♂シーフと同行

<♂騎士>
現在位置:E-3
所持品:S3ナイフ、ツルギ
外見特徴:憔悴しきり、陰りのある顔
備考:♂プリーストの治療を受け、やや回復 他人への恐怖は少し解消? 未亡人PTに同行するかはまだ不明

<残り40人>


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