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089 失った心、取り戻した心 [夜間]


───ずっと答えを探していた

誰かの声が聞こえる。答えを探しさまよう私を呼ぶ誰か。
それが誰であるか分からないまま、私はうたかたの夢から目を覚ます。

目に飛び込んできたのは暗闇、どこまでも広がる黒の世界。

いや、黒だけではなかった。
夜の闇の中でゆらゆらと揺らめく赤銅の光、♂剣士が森の奥、その光を指差しながら私に何かを叫んでいた。

「森が燃えている、だと?」

私は慌てて飛び起き、彼が指差す先にある赤い灯火を凝視する。
遠過ぎてはっきりとは分からないが、それが炎の光であることだけはなんとなく分かった。

肉眼で炎を確認するや、私はコルドボルトの詠唱を開始する。
体に感じられる適度な湿気から山火事が自然発生した可能性は無い。
もし火を焚いているのだとすれば、この状況下であれほど派手にやる人間はよほどの大馬鹿だ。
それとも蛍が光でオスを誘惑するように誰かを誘っているのだろうか。
どちらにせよ、あの火が人によって生み出されたことだけは間違いない。

精神を研ぎ澄ませ、周囲を探り襲撃に備える。
炎が魔法によって生み出されたのだとすれば、一瞬足りとて気を抜くわけにはいかない。
魔法使い同士の戦いでは先手を取った方が圧倒的に有利なのだから。

「♀セージ、僕が様子を見てきますよ」

言うが早いか♂剣士が森の奥へ向かって駆け出す。

いけない、軽率な行動は身を滅ぼすだけだ。そう叫ぶつもりだった。
呪文詠唱さえしていなければ、彼を止めることができたはずだった。
だが、一瞬の遅れに彼の姿はもはやそこには居ない。

私もまた♂剣士を追う。

お前は私を護ってくれるんじゃなかったのか、心でそうつぶやきながら少しだけ目を伏せる。
こんな世界で人を信じてどうする、こんな世界で人を頼ってどうする。
私の闇が私にそっと囁きかける。

それでも私は、答えが欲しかった。

この世界なら、いや、こんな狂った世界でも私を信じ、護るといってくれた彼なら、
彼なら私に答えを教えてくれるかもしれない。

そう思いながら、私は彼の後を追った。

──────

辿り着いたそこに炎は既になかった。
月明かりすら遮る木々の下、ぶすぶすと音をたて燻っている何か。
それが何であるのか、光の届かない森の中で私は思案する。

サイトの炎を使って確認するか。いや、それはマズイ。
それでは自分はここに居ます、狙ってくださいと言っているようなものだ。

「♂剣士、どこだ?」

小声で彼を呼ぶ。しかし返事はない。
彼は私より先にこの場所に着いているはずなのに、どうしたのだろう。疑問が頭の中を渦巻く。
どくんどくんと心臓が鐘を鳴らし、だらりと背中から汗が流れ落ちる。
私は闇に恐怖しているのだろうか。

「♂剣士、どうした? どこにいる?」

少し声量を強めて彼を呼ぶ。しかし彼は答えない。
何者かの襲撃を受けたのか?いや、それならば争う音が聞こえたはず。
だがアサシン相手ならどうだ?夜の住人である彼らなら音無く♂剣士を殺すことなど容易い。

ダメだ、最悪の事態ばかりを考えるな。
自分で組み立てた推測を、かぶりを振り、自分で否定する。

ゆらり

見上げた視線の先に火が灯る。赤い赤い火。明滅する赤い光。
突然現れ出た鬼火にゾクリと体が震え、膝が揺れる。

『サイト !!』

自分の居場所を教える不利よりも恐怖が勝り、私は素早く印を結んだ。
くるくると私の周囲を回る狐火。
闇の衣を剥ぎ取る光が鬼火を照らし、その正体を浮かび上がらせる。

炎の明かりで煌めく穂先、そこから視線を柄本に移す。
槍を力強く握りしめた手、鍛え抜かれた腕、たくましい首、そして───見覚えのある顔

そこにいたのは槍を手に持ったまま呆然と立ち尽くす♂剣士だった。

「居たのなら返事くらいしな───」

声はそこで止まる。正確には止めずにはいられなかった。
突き出された穂先、間違いなく彼が、先ほどまで私と共にいた彼が私を目掛けて槍を突き出したのだ。

どういう、こと?
私の頭が、思考が目の前の現実に追いついてくれない。

尚も私を目掛けて繰り出される両手槍、穂先からは炎が、爛々と眩い焔球が私に向けて放たれる。

その炎を、大きく横へ跳び回避。呼吸を整え、呪文の詠唱を───

彼を、殺す? 私を護ると言ってくれた彼を

───できなかった

『・・・・・・もしも、あなたが僕と同じ考えをお持ちでしたら。
 僕に・・・護らせてくれませんか?―――あなたを』

強い意志を宿した瞳、あの輝きに私は少なからず惹かれていた。
こんな信じることが愚かでしかない島で、嘘をついていたかもしれない私をまっすぐに信じた彼の眼差し。

どうして!?
頭の中で反芻される言葉はただそれだけで、脳は私に他の言葉を使わせてはくれない。

私は・・・お前を・・・
千条の月光が私の体を貫く。
月光の輝きは赤、地獄の業火のような赤。

答え・・・を
私の体が焼ける、熱い、熱い、熱い、熱い、熱、熱、熱。
ただただ焼ける、瞳が、脳が、腕が、脚が、心が。

痛いのかどうかも分からない。熱いと言う言葉だけが脳を、心を侵していく。

私は・・・お前を・・・信じたかった・・・
赤い絶望の中で私が最期に見たものは、槍を私に突き刺したまま壊れたように笑う彼の炎を帯びた黒い瞳だった。

<♀セージ>
現在位置-島の中央部の森(F-7)
所持品-幸運剣、トーキーボックス、支給品
外見特徴-緑色のロングヘアー(csf:4j0i40h2) 、整形美人
口調・性格-沈着冷静、博学。必要なこと以外はあまり口にしないタイプ。過去のトラウマから、感情を殺す癖がある。
備考-高INT 習得スキル フリーキャスト、ドラゴノロジー、スペルブレイカー、全ボルト系(五色セージ) 過去にトラウマ有 ♂剣士と同行
     死亡

<♂剣士>
現在位置-島の中央部の森(F-7)
所持品-手製の木刀、s4ナイフ、熱血鉢巻、ヘルファイア
外見特徴-ノビデフォ髪 (csm:4g022?)
口調・性格-丁寧な口調だが、混乱しやすい。素朴。鈍感。あまり頭は良くない。
備考-JOB45 両手剣剣士 不器用 剣士学校では落ちこぼれだった。ヘルファイアによる人格破壊。

<残り39人>


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