バトルROワイアル@Wiki 2-094


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094 Past Days【夜間】


ガッガッガッ…

繰り返される硬いものを打ち合わせる音に混じってわずかに水の音がする。
粘り気のある黒い水が振り上げては振り下ろす手と石に絡み付いて離れない。
目線を下に落とすと相貌の判別のつかなくなった"もの"にあたしは何度も石を打ちつけていた。

『ひっ』

掴んでいた石を放り投げてあたしは腰を抜かしたように後ずさる。
あたしが馬乗りになっていたのはカプラサービスの制服に身を包んだ女性。
赤黒くなった顔の近くには砕けた眼鏡があって、彼女がグラリスだったことを思い知らせる。

『あ、あたしが殺したの…?どうしてっ?どうやってっ!?』

訳のわからないまま後ずさり続けるあたしは突然、背中をぶつけて背後に人がいることを知る。
腰を抜かしたまま見上げると、その人は♂セージでいつか見た様に飄々としている。

『あたし、あたし…』
『大丈夫、私は知っています。安心してください』

すがり付こうとするあたしを迎えるように彼は膝をつくと本当にいつもと変わらない調子で言った。

『…貴女が救いようのない殺人鬼だってことは』

え?と思った時には彼の手が伸びていた。
熱い感覚が生まれたことに驚いてそこに目を向けると、胸から短剣の柄が生えている。
それはあたしの血を吸って赤々と輝いて…、全身から力が抜けていく。
あたし…、なんで…、殺…れる…。…セージ…、怖い…。死に…く…ないよ…。


「いやぁああああッ」

がばりと飛び起きた♀商人は額をごちんと何かにぶち当てた。鈍い痛みが額に広がる。
恐る恐る目を開けると、薄い月明かりの下で♂セージが鼻を押さえて悶絶していた。

「……何してたの…?」
「うなされていたようですので、様子を見ていたのです」
「…変なことしてないでしょうね…?」
「ふっ、当然ですともっ。それはあなた自身を買いかぶりすぎというものです。
 男の浪漫というものはもっと、ばんきゅっばんなのでッ!?」

恥ずかしいことを平然と言う♂セージに♀商人は手元の鞄を投げつけて黙らせる。
すると、♂セージは本当に黙ってしまって彼女にとって居心地の悪い静寂が訪れた。
さっきの悪夢、内容は良く思い出せないけれど、その悪夢が再び襲い掛かってきそうで嫌だ。
そんなことを考えながら毛布を身体に巻きつけてごろごろしていると笑いを含んだ声が聞こえた。

「…今の間に寝ておいたほうがいいと思いますよ?」
「眠れない…」
「困りましたねぇ。もうしばらくしたら私が眠るので見張りを万全の状態でしていただきたいのですけど?」
「だったら寝物語に何か、話して。…シモネタ以外」

♂セージから苦笑を含んだ吐息が漏れる。それでも彼は♀商人のリクエストに答えることにしたようだ。

「そうですね、それでは。昔話でも一つ。
 昔々、あるところに二人の兄弟がおりました。
 とても仲の良いその兄弟は一人の女性に恋しておりました。
 幼いころから家族同然に育ったその女性は美しく慈愛に満ちて彼ら二人にとって女神のような存在でした。
 彼らはどちらが果たして彼女にふさわしいか、勝負をするようになります。
 時には腕力で、時には魔力で、時には狩りで。
 じゃれあうように勝負を続ける間に、彼らは相応の名声を得るに至りました」

一端、話をきると♂セージは声色を変えて兄弟の会話を真似る。

『お兄ちゃんずるいっ』『ばぁっか!だまされるほうが悪いんだよっ』
『そんな問題も解けないんだ?』『うるさいっ、俺はおまえほど賢くないんだ』
『こいつ、強い…!』『落ち着け、二人で一緒にやるぞ…せぇのぉっ!!』

まるで本職のバードの様な一人芝居に♀商人は忍び笑いを漏らす。
象牙の塔に篭ってばかりのひ弱な魔法使いだとばかり思っていたが、良く考えてみるとそれは違うのだろう。
この戦場を平然と歩き回るその姿は魔術師というよりは生存術を心得た戦士のものだった。

「名声を得た彼らが都に戻ってみると、恋する人は既にいなくなっていました。
 美しく慈愛に満ちた彼女は、時の王の目に留まり寵を得ていたのです。
 そのことを知った二人は、三日三晩泣き明かしました。
 そして、弟はこう言います」

『僕は諦める。彼女は彼女できっと幸せなんだろう』
『諦めない、諦められない、諦められるものかッ』
『兄さん。彼女は選んだんだよ?それを尊重しないの?』
『おまえが諦めても俺は諦めない。絶対に彼女の役に立ってみせるッ。どんな滑稽な道化になってでも』
『そう、それが兄さんの選択なら、僕は行くよ…健やかでね?』

離別の悲哀を込めて♂セージは謳う。それがまるで彼自身の身に起こったことの様に。

「こうして兄弟は別れ、幾年もの年月が流れました。
 その時の流れの中で女性を娶った王は倒れ…
 悲しみの中で女王となった彼女は狂気の虜となってしまいました。
 彼女はその権能をもって幾人もの人を殺し、殺し、殺しました。
 そして、その傍らにはあの兄弟の兄の姿がありました…。
 ただ、彼自身の愛のため、両手を真っ赤に染め上げた道化師となっておりました。
 その兄の姿を風の便りに聞いた弟は…」

♂セージはそこで話をきると、夜の闇を見つめる。
森の木々にさえぎられてほとんど光の届かないここで目を凝らして何が見えるというのだろうか。

「…ねぇ?終わりなの?」
「ええ、このお話にはまだ終わりがないそうなのですよ」
「まだ?」

小骨が喉に引っかかったような違和感が♀商人を捕らえる。
まだ?道化師?殺戮?女王?狂気?兄弟?
パズルのピースが嵌るように、さっきまで聞き入っていた歌が現実へと形を変える。
だったら、この、目の前の男は…。

「それは違います。貴女の考えは一面の事実にしか過ぎません。
 それは、そう捉えることが出来るというだけです。それに…」

いつもよりほんの少し真面目な声色で♂セージが言う。

「そんな高名な人間が女性の裸を覗き見するわけないじゃないですか」
「…そうよ、ね。あなたのこと買いかぶりすぎよね」
「えぇ、まったくです。というわけで、お話は終わり。これからはお休みの時間ですよ」
「うん、おやすみ」

子供の様に扱われるのはちょっと癪に障るが、就寝の挨拶をして♀商人は思う。
彼がもし本当にその話の弟だったらどれだけ頼りになることだろうと。
もしかしたら、この悪趣味なゲームそのものを叩き壊せるのではないのだろうかと。

そうして殺し合い一日目の夜は更けていく。
森の闇はみなの思いを飲み込んで黒くうずくまる。
恐怖も絶望も、希望でさえも。全ては明日の糧とするために。

<♂セージ>
位置:E3の森で野営
所持:青箱2(開封済みの可能性アリ)
備考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? ファイアウォール習得 GMジョーカーの弟疑惑
仲間:♀商人

<♀商人>
位置:E3の森で野営
所持:青箱2(未開封)
容姿:金髪ツインテール(カプラWと同じ)
備考:割と戦闘型 疑心暗鬼は解消気味?
仲間:♂セージ


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