バトルROワイアル@Wiki 2-095


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095 喪失【夜間】


ふふ、ははは。僕は今、何処を歩いているんだろう。
随分暗い、でも別に寒くはないな。ただあんまり闇が濃くて、自分の声すら拾い難いけど。
しかしさっきまで月が出ていたはずなのに、あは、突然辺りが視づらくなってしまった。。
それどころか、僕の体だってよく目を凝らさないと見えないのは、一体なんでなんだろう。
ともかく、すぐ傍に死体があった。ここは危ない。でも収穫もあったな、あはは、凄いよこれ。
真っ暗でもこれの事だけは分かる、ちゃんと僕の手に収まっている僕のランプ。
だからとにかく早く♀セージのところに、戻らなきゃ、いけないのに。
彼女は一体何処に消えたんだ?さっきもこの辺をモンスターが、うふふ、うろついていたし。
勿論きちんと殺してやったけどさ。


 ◇◇◇


♂剣士が♀セージに先行して発見したのは、既に炎が衰えた後の殺人現場だった。
ただし殺人、と呼んでいいのかどうかに彼は抵抗を覚えたのだが。
炎を燻らせ、吐き気を催す匂いを放っているものは、到底人間の死体とは思えない。

「なんだよ、これ……」

黒い残骸はもはや死体の性別すら判断のつかないほどに劣化していた。
♂剣士が周囲を踏みしめるだけで崩れてしまいそうなそれに、不釣合いなほど凛々しい凶器。
その柄には細かい装飾が彫り込まれ、玉が填められているでもないのに輝いている。
どのような業をもってしたのか穂先はまさしく炎が揺らいだ様をそのまま留めた姿。
全身を紅く響かせる美しい槍は、一介の剣士にとっては文献でしかその姿を拝めない
伝説の武具だった。
一般には知名度が低いものの冒険者の間ではプロンテラ王の御物としてその名を知られている。
但しトリスタン3世の御世において、いかなる遠征にあってもこの槍が振るわれることはなかった。

「まさか、でも……ヘルファイア……だよ、な?」

♂剣士にとって、いや槍を扱える全ての人間にとっての至宝が、彼の目の前に打ち捨てられている。
月明かりをさえぎる林の中にあって尚強く在る魔槍は、まるで自分を呼んでいるようですらあった。
死体のことなどもはや頭に入らず、彼はゆっくりとその柄に手をかける。
地面から抜けた槍はしっかりとした重量感を与えながら、♂剣士の両手に収まった。
近くで見れば見るほど美しい。美術品としての桁外れな価値にも頷けるというものだ。

「あハ……綺麗だなぁ……」

軽く振り上げると、音もなく穂先が闇を滑る。槍の扱いには慣れていないはずの♂剣士なのだが、
不思議と意のままに操ることができた。腕が重さにも慣れてくると、振り回す速度に一層磨きがかかる。
こうしているとマスターみたいだ、と彼は思った。騎士としてその名を響かせた槍使い。
どんなに重量のある槍もその鍛え上げた体で軽々と振り回し、若くありながら
王の行軍でも活躍した人物だ。落第生と罵られ沈んだ日々を過ごしていた彼が首都での
テロに巻き込まれたときに、危険を顧みず助けに入ってくれたあの人。
勇気を出して弟子入りをお願いしに門を叩いた時の不安と、では騎士になるまで、と許して
もらえた時の喜びは昨日のことのように思いだせる。
命の礼をしようとした自分に、誰かを護ることでそれをせよとおちこぼれの僕に道を示してくれた。
そんな師匠も、数ヶ月前に戦地で命を落した。国家の関わる極秘の任務だったらしく
遺体はおろか遺品すら帰ってこなかった、と奥さんが泣いていた。
あの人と、もっと一緒に過ごしたかった、もっと教えてもらいたかった――彼は新しく師を手配
するというギルドからの連絡を断り、納得の行くまで剣士として修行を続けることを選んだのだ。
槍という武器への懐かしさもあり、一通り得物の感触を楽しんでいた♂剣士の耳に、邪魔する
ように草木を踏み分けて近づく何者かの足音が届いた。

「ん?ふはっ、誰だろう」

一瞬体と意識を緊張させるが、すぐに心当たりを思い出す。成る程、♀セージが追いついたのだろう。
死体を前にして恍惚とした表情を浮かべていた♂剣士は、やはり不気味なまでの笑顔を張り付かせたまま
♀セージを出迎えようとし、絶句した。突然現れた鬼光の元に明らかになった影は、人のものではない。
ずる、と醜体を引きずるその姿は、言葉を失うほどにおぞましい異形の化け物であった。

「(いたのなら返事くらい――)」

化け物が自分に向かって口を開いた、目の前の現実に脳を揺さぶられながらも
たった今相手がしたことを思い出し、反射的に槍を突き出す。
魔法を使う敵とろくに相対したことはないが、詠唱さえ完了させなければいいはずだ。
右に左にと意外と素早く槍をかいくぐる化け物を、火球を使って追い詰める。
と、しつこく逃げ回っていた化け物が再び詠唱を始めた。いけない、とにかく止めなくては。
♀セージの助太刀を期待してはいられない。彼が必死の勢いで繰り出した攻撃は、拍子抜け
するほどあっさりと化け物の体を貫いた。

「やった、あはは」

槍が化け物を捉えた瞬間、轟、と凶悪な熱量が穂先から発せられ、♂剣士の目の前に
巨大な火柱が立つ。
燃え盛る炎は化け物を包み、根こそぎ全てを奪おうと手を伸ばす。
異形は尚も♂剣士に寄ろうとするが、圧倒的な炎の前に♂剣士に触れられることなく
崩れ落ちた。

「あは、びっくりした。こんなものがうろついてるなんて、なんて場所だよ」

♂剣士は槍を軽く回し、穂先にすがりついていた化け物の残骸を振るい落とす。
黒く炭化したモノは手近な木の幹に叩きつけられ四散した。

「でも、これさえあれば大丈夫なんだ。僕はちゃんと護ってあげられる、ふふ」

槍を抱え歩き出そうとして、彼は自分の腰につけられたものに気付いた。
取り上げると木を削りだしただけの無骨な木刀が、ささくれだって彼の指を傷つける。
一瞬それに顔をしかめるが、興味を失くしたのかすぐに小汚い木の棒をその場に捨てた。

まだ近くにいるはずの、自分の生きる理由を探して彼は歩く。


 ◇◇◇


あは、マスター、聞いてください。僕はやっと……やっと、人を護ることが出来ます。
ここは人が人を殺す戦場だけど、でも大丈夫。僕の心には今もあなたの教えがあるから。
なんだか暗くて仕方がないけど、ふふは、はは、この槍が今度は僕を導いてくれます。
血みたいな、凄く綺麗な炎が、僕の歩むべき道を明るく照らしてくれるんです。あははは。




<♂剣士>
現在位置-島の中央部の森(F-7)
所持品-s4ナイフ、熱血鉢巻、ヘルファイア(木刀はセージの死体近くに放置)
外見特徴-ノビデフォ髪 (csm:4g022?)
口調・性格-丁寧な口調だが、混乱しやすい。素朴。鈍感。あまり頭は良くない。
備考-JOB45 両手剣剣士 不器用 剣士学校では落ちこぼれだった。
   ヘルファイアによる人格破壊(人間がオバケに見える)
(冒頭部分は、槍に支配され回りが目に入らないだけで盲目なわけではないっす)


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