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102 QueenBee【夜間/定期放送後】


さてさて、と彼は考える。
こんなところに連れられてしまったのは大失態だ。
この殺し合いの中でプリーストたるこの身では勝者となることは難しい。

それはつまり、生き残れない。それはとてもつまらないことだ。
なぜなら、彼なりの方法で世の華を愛でることが出来なくなるから。
だがこの四日間、生きている間だけは華を愛で続けることが出来るともいえる。
そして、華を愛でるための手段にならば彼は事欠いたことはなかった。
まして、殺しが合法であるこの場だ。少々手荒なことになったところで咎められようはずもない。

(俄然やる気が出てきたわね)

彼は、女性プリーストの姿をした彼は、赤い唇で軽く舌なめずりをする。
思い起こせばここにつれられてきた彼女たちはなかなかの粒ぞろいだったではないか。
そのうちの幾人かは既にこの世の人ではないが、それでも彼のおめがねに適う女性はまだ生き残っている。
そうだ。早く動かなくては他の男どもに美しい華が手折られてしまうではないか。
名状しがたい憎悪が彼の中で渦巻く。許せない、私の女の子に手を出すなんて許せないと。

♀騎士のしなやかに引き締まった太股や、二人いたノービスのパンツからはみ出した健康的な太股。
憂いを秘めた容貌の♀Wizの太股も捨てがたければ、怯え縮こまっていた♀ハンターのそれもまた良い。
白いミニからのぞいていたあの女GMの太股も実にいいものだった。
まだ生き残っている彼女らは私のものだ!そう決意して彼は東へと進路を取る。

(とにかく、私の代わりに戦ってくれる子を探さなきゃ)

まるで本物の女性の様に親指の爪を噛みながら彼は思う。
いつしかまばらに生えた木々の森を抜けた彼は見晴らしのいい砂地の草原へと歩を進めていた。
昼ここを歩くのは自殺行為だろう、しかし、夜間ならば狙撃の心配もない。
流石に大手を振って歩くつもりはないが、距離を稼ぐならば今しかないだろう。

と、その視界の隅に動くものがあった。
あわてて身をかがめじっくりと様子を眺めると、どうやら男。
そこそこに引き締まった身体は頼りない印象とは程遠い。
彼―――♂BS―――は、用を足すと同行者である♀ケミのところへと戻り不寝番を始めた。

(あら、他にも人がいるの?だったら殺し合いに乗り気でないわね)

殺人者同士が同盟を組むことは考えづらい。
いや、私のような子悪党ならあるいはありえるかもしれないが、力のあるものほどそういう傾向は下がる。
彼はほくそえむとゆっくりと立ち上がり、♂BSに声をかけた。


―――***―――


♀ケミは不機嫌だった。
目の前にいる男とそれがつれてきた女を内心で罵ってさえいた。
けれども口に出すのは気遣いの台詞だけ。煮えくり返る腸の一片たりとも見せはしない。

「そうなの…あなたも大変だったのね」
「はい、目を血走らせた男に追いかけられて…。
 魔法のお陰で何とか逃げ切れたのですけど、私、怖くて怖くて」

そう、ハスキーな声でしゃべるこの女はプリーストだ。支援の専門家なら使い道はいくらでもある。
戦力的には強化された、と見てもいい。
前衛に支援がそろったのだ、これに遠距離攻撃を使える職がいれば周りの人間を一掃することも出来る。
その後で同士討ちさせればいい。簡単な話だ。
こいつが女でさえなければ私の虜にしてしまえる分話はもっと早いのだけど。

「ああ、大変だったね。♀ケミさん、ということで一緒に連れてやってもいいだろ?」

つれてきた張本人がそういうのだから私が反対したところで押し切ることだろう。
間抜けそうな面をしている、助平そうだと思っていたけど、それが裏目に出るなんて。
私のほうが道化のようではないか、と♀ケミは思う。
それでも内心で考えていることとは裏腹に彼女は情にあふれた言葉を言う。

「ええ、もちろんです。お互い戦い向きでないもの同士力をあわせて生き残りましょうね」

気に食わないけれど今は素直に喜ぶことにしよう。
ただ、♂BSがこの女の方を気にかけるようになっては不味い。
そんなことになる前に何とか手は打っておかないといけない。
おあずけを食らわせておいたのも今となっては裏目に出てしまった。
さっさと一回くらいやらせてあげればよかったわ、ほんと、なんて世の中なのかしら。


―――***―――


淫徒プリは上機嫌だった。
彼が声をかけた♂BSが友好的だったからだけではない。
♂BSがつれていた太股が、違った人物が見事な太股を持つ♀ケミだったからだ。

♀ケミの心中など知らない彼は心の中でにんまり笑う。
ああ、神よ、神よ。貴方は私を見捨てていなかったのですね。
ああ、神よ、私は感謝します。貴方はなんと見事な太股を与えてくださったのでしょう!

さぁ、明日から忙しくなるぞと彼は思う。
そうして、♂BSの目の届かないところで♀ケミの太股を堪能する算段を建て始める。
と、その前に、当面の問題を解決しなくてはならない。
今晩をどう明かすか、だ。
彼は♀ケミの方をちらりと伺うと、軽くウィンクしてみせる。

「それで、今夜の見張りなのですけど…」

彼と彼女は声を揃えて言った。

『♂BSさんがしてくださいますわよね?』

付記
殺し合い一日目、夜。
各地で多数の女性参加者が断続的にくしゃみをするという事件が起こった。
それぞれ同行者に心配されたりからかわれたりすることになったが、原因は今もって不明である。

<淫徒プリ>
現在地:G6草原地帯
所持品:女装用変身セット一式 青箱
備考:女性プリーストの姿 美人 策略家 Int>Dexの支援型
同行:♂BSと同行、♀ケミにターゲッティング

<♀ケミ>
現在地:G6草原地帯
所持品:店売りグラディウス 青箱
備考:絶世の美女 策略家 製薬ステ
同行:♂BSと同行、淫徒プリとは別の意味で交戦中

<♂BS>
現在地:G6草原地帯
所持品:青箱2個(未開封)
備考:戦闘型BS。ガサツ。むっつりスケベ。楽天家
同行:♀ケミ、淫徒プリと同行。両手に毒花?


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