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匿名ユーザー

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108.砕けない拳 【深夜】


夏だって言うのにイヤに冷たい水が私を包み込む
さっき出来たばかりの傷に塩水が擦り込まれてえらく痛い
投げ落とされたガケはとてもじゃないけど昇れそうに無いほど高く伸びている
なら、ガケの切れ目まで泳いでいくしかない

「速度…増加っ!!」

波に揉まれながら精神を集中して加速の祝福を自分にかける。泳ぐ早さはこれで少しはマシになっただろう
次は崖が短いほうに…北に行くか、南にいくか、ああもっと地図よく見ておけばよかったな畜生
まあどっちだっていい、とにかく死んでなんかやるもんか
アイツを殴り倒して『神様には自分で伝えろ』って言ってやるまで死んでたまるか
水に濡れた服は鉛みたいに重くてスカートが足に絡まって凄く泳ぎにくい
それでもあきらめてやるもんか

『おまえ、神はこの世にいると思うか?』

まあ私だっておしとやかな同僚達に比べればずっと信心は浅いほうだと思う
当然その分神様の加護だって薄いかもしれない

でも、それでも

ただ信じるだけじゃなくて精一杯生き抜いてこそ神様は手を差し伸べてくれるんだって
私は、そう信じているから
この状況から生き残って、アイツにそのことを証明してみせる

でもひと掻きごとに腕の力が盛大に奪われ一押しごとに足の筋が攣りそうになる
波は容赦なく体力を削り海水を何度も飲みそうになる
何よりも先が見えないことで心がくじけそうになる
必死で泳いでいるのに少しも進んでいない気にさえなってくる
でも頑張らないと。心が折れた時に、このまま私は暗い海の底まで引きずりこまれるんだ



どれだけ泳いでも先は見えない。意思は後一押しで崩れて体はそれ以上に限界だ
ああ、先にようやっと崖以外のものが見えた
少し先に見える白い場所は浜辺なんだろうか。でも、畜生め、体が、言うこと、聞きやしない
あと少しだっ、て言うのに、心より先に、くじけた、体が動いて、くれない
私、出来る限り頑張ったのにさ…
やっぱり、神様は、居ないの、かな…






腕を誰かが引っ張ってくれている
ばしゃばしゃと必死で水を掻く音
ああそうだ、すっかり忘れてたよ
アンタを、一人にするわけにもいかないしね…
挫け掛けていた心が、また小さく、でも確実に鼓動を始めた
まだ腕は動く。限界だろうと、動かしてみせる
生きて見せるんだ、絶対に



「ぜーーーーっ…ぜーーーっ…ぜーーっ…」

……そうして、私は子デザの助けもあってなんとか浜辺に泳ぎ着くことができた
ふらふらとおぼつかない足取りで二、三歩進んだところでぐらりと体が前のめりに倒れる
身体を支えようとしても腕が上がらず、私は真っ白な砂の上にうつ伏せに倒れた

「げぼごほっ!!ぐぅぇほっ!!」

倒れた衝撃で塩辛い水がびちゃびちゃと口の中から零れて何度も咳き込む
ああ、ホントに死ななかったのは奇跡かもしれない
神様サンキュー。さっきは疑ったりしたけど、これからはもっと信心深くなることにするよ
その神様の使者だった子デザは私の横でぶるぶると身体を震わせて水気を飛ばしている
はは、同じ距離泳いだってのに…元気なヤツ…若いって良いこと…だ…
身体を限界以上に…酷使したせいで…睡魔が…襲ってきた…
あー…もうダメ…寝たらダメだって…思って…も…眠気に勝てそうに…ないや…
…眼が覚めたら…あのコのエサ…取りに…帰らないと……



<♀アコ:E-9崖の切れ目の浜辺で昏睡>
<所持品は全てD-8に放置>


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