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109.比翼の鳥【未明】


ねえ、比翼の鳥って知ってる?
違うって。その肥沃じゃないわよ。もうっ、頭悪いわねー。
龍之城に伝わる古い伝承で――む。そんなの知るわけないだろとかウルサイわね。あなたは黙ってありがたく拝聴するの。いい? ほら、返事は?
…………
ん。よろしい。
でね。その古い言い伝えなんだけど、龍之城の近くの山に、一羽につき片方ずつしか翼のない鳥たちがいたんだって。
で、翼が片方しかないから、やっぱり飛べないわけ。
――こら。そりゃ当たり前だろ、とか言うな。
ったく、最後まで話を聞きなさいっての。もし次、話の腰を折ったら、あんたの腰も折るからね!
ほら、返事。へ~ん~じ~っ!!
……ん。分かればよろしい。で、どこまで話したっけ?
うん、そうそう。その鳥が飛べなかったってとこまで話したわね。
やっぱりね、片方しか翼がない鳥だから、一匹じゃ飛べないのよ。
だからね。
一匹一匹じゃ飛べない比翼の鳥たちは、いつもつがいになって飛ぶの。
え?
つがいって、何――ですって?
………………
…………
……待って、少し待って。せめて頭痛に耐える時間を頂戴。あとそれから深呼吸もさせて。
ああ、もうまったく……今日ほど、あんたの頭を憐れに感じたことはないわよ。というか、あんたも騎士ならこれくらいの教養くらい身につけてないと、今後色々と問題があると思うんだけど?
その……色々は色々よ。ほら、舞踏会とか社交場とか、そういう席とかに出るようになった時に品格とか知性とかって滲み出ちゃうものだし。
だぁーかぁーらぁー、俺には華やかなのは似合わないとか言ってる場合じゃないのっ!
あなたの品性と知能が疑われると私が困るのよ。
え?
何が困るんだ――って、その……だ、だってほら……えーと……
ああ、もうっ! 何だっていいじゃない!
とにかく、私が困るんだから、それでいいでしょ!
てか納得しろ! 無条件で受け入れろっ!
…………
ん。よろしい。本ッ当に物分りのいい下僕で助かるわ。
これでもう少し鈍感じゃなかったら、もっと良いんだけどね……
……ううん。なんでもない。なんでもないわよ。
ああ、それでつがいの意味だけど――
…………
……やっぱやめた。なんか癪だし。
ま、どうしても知りたかったら、図書館にでも行って自分で調べてくるのね。

 * * *

赤く燃え出す東の空と、追い立てられたように西のかなたへ沈む月。
中天の星々は深い群青色の空で瞬きを絶やさなかったが、それもいずれは朝日の輝きに姿を消してゆくだろう。
その朝焼けの空に向かって歩みだした♂騎士の背中に、見張りに立っていた♀WIZは躊躇いがちに声をかけた。
「どこへ行くのですか?」
振り返った彼の顔は逆光でよく見えなかったが、いくらか落ち着いていたはずだったのだが、未だ傷が痛むのか、汗をかいて憔悴し切っているようにも見えた。
いや、♂プリーストの治療は的確だった。
赤ん坊がひきつけを起こすような強面で、しかも何の冗談か修道女のヴェールを被ってはいるが、包帯の巻き方や消毒の手法といい、手馴れた感じすらあった。
ちなみに♂プリースト本人は「こんなの、俺の柄じゃねえんだけど」と終始言い張っていたけれど。
彼の処置は完璧だったからこそ、数時間の睡眠で♂騎士の体調が戻っていないことが♀WIZには不可解だった。むしろ、最初よりも悪くなっている気さえする。
ならば別の原因か。
この過酷な環境下で、真っ先に変調をきたすのは身体よりも精神――彼女がよく見る悪夢の中にも、孤独と恐怖から狂気に魅入られた女性がいた――だが、♂騎士にその兆候は見受けられなかった。それは間違いない。
なにせ、彼女自身が見張りを続けるという♂騎士の申し出を断って、渋々眠らせたのだから。
では、もっと別の原因だろう。そう考えた♀WIZの脳裏に、思い当たる節が浮かび上がった。
確かあの大臣は、この島には封印機構があると言っていた。訓練砦と同じ、結界内部にいる人間の能力を著しく低下させる封印が。
「……もしや、具合が悪いのではなくて?」
様々な抵抗力を低下させるとも言っていたはずだ。それは呪的なものに対する抵抗のみならず、体力や免疫などの人間本来が持っている機能すらも低下させているのではないだろうか。
それならば彼の異様な汗や体力が回復していないのもうなずける。傷口から雑菌が入り、感染症による体調不良を引き起こしているかもしれない。
「まだ休まれた方が……その身体では誰かに襲われでもしたら、ひとたまりもないですよ」
「……いいんです」
引き止める♀WIZの言葉を、♂騎士はやんわりと遮った。
「やることが――いえ、やらなきゃならない事が出来ましたから」
「でも……」
なおも食い下がる♀WIZに、♂騎士は申し訳なさそうにかぶりを振った。その顔に浮かぶ痛ましげな表情は、決して憔悴だけから来るものではないと直感的に悟った♀WIZは、言葉を飲み込んで押し黙った。
「あいつを、あのままにはしておけないんです。あんな狭い小屋に置き去りなんて可哀想だから――なんて、この俺が言えた義理じゃないけど。でも次の放送で、あいつのいる場所が禁止区域にならないとは限らないから……」
昇りゆく太陽に照らされ、足元まで伸びた♂騎士の影が半分の大きさになるまで、♀WIZはただ黙って彼の独白を聞いていた。
(こんな目をしてる人、私ごときじゃ引き止められないわね……)
♀WIZには♂騎士の涙に濡れた双眸に、夢の中で出てきた反逆者たちの瞳の輝きと同じものが見えていた。夢の中の彼らと同じ、様々な間違いを乗り越えて得た勇気と決意を。
だからこそ、余計に死なせたくないというのに。
「……どうか、お気をつけて」
だが、言えたのは、ほんのわずかな別離の挨拶のみ。
「ええ。皆さんも……」
♀WIZに深々と頭を下げ――少し離れたところで仮眠をとっている二人の男たちには、騎士団式の最敬礼を向け、♂騎士は朝焼けの方角へ向かって踵を返した。

 * * *

「あんにゃろ。俺たちが起きてたこと分かってやがったな」
「で、でも良いんですか? 彼をあのまま行かせてしまって……」
「……行かせてやれよ。俺は、あいつの懺悔を聞いた。だが、罪をあがなうのは、あいつ自身がやるしかねえ。それに――」
「それに?」
「この位置だとな、ちょうど人妻の魅惑的なヒップのラインがな、こう、キュッときてグッとくる感じで俺様のチャームな逆毛もそそり立――」
少しでも、この聖職者を見直した自分が馬鹿馬鹿しくなって、♂シーフは朝焼けに寝返りを打って背を向けた。


<♂プリースト>
現在位置:E-3
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し)、でっかいゼロピ、多めの食料、赤ポーション5個
外見特徴:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない)、怖い顔
備考:殴りプリ 、♀WIZ・♂シーフと同行

<♂シーフ>
現在位置:E-3
所持品:青箱(未開封)、多めの食料
外見特徴:栗毛
備考:ハイディング所持 、♂プリ・♀WIZと同行、盗作ローグ志望でちょっと頭が良い

<♀WIZ>
現在位置:E-3
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー
外見特徴:WIZデフォの銀色
備考:LV99のAGIWIZ、GMに復讐、♂プリ、♂シーフと同行

<♂騎士>
現在位置:E-3→F-3
所持品:S3ナイフ、ツルギ
外見特徴:憔悴しきり、陰りのある顔
備考:特殊プロテインによる発熱中。F-3の♀プリの死体を埋葬してあげたい。

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