バトルROワイアル@Wiki

NG2-15

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 それは、一言で言うなれば。
 剣を手にした少女の前で、顔を歪めた男が立ち上がった、月の下での出来事だった。
 煌々と満月が世界を照らしていた。

 ──気づけば、彼が立ち上がっていた。
 横たわったまま剣に手を伸ばした私を、冷たく光る目が見ている。
 ああ、この人は──本当はこんなに冷たい目の出来る人なんだ、と少女はもう一度思った。

 次に思い浮かべたのは、彼に、私は殺されるのかもしれない、と言う事だった。
 いいや。剣を握っている以上、殺されると思った方がいい、そんな感覚を♀ノービスは覚えていて。
 怖い。怖い。怖い。けれども、皮肉にも彼女の体は早くも順応し始め。
 それを自覚すると、何故か手の震えかぴたり、と止まっていた。

 少女も又、殺されない為に立ち上がる。不思議と、剣を持った手はもう震えなかった。
 だから、殺せる?いや、それは違う気がする。今ここで、こうしている事そのものが間違いである気がする。
 けれど──殺さないと殺される。けれど、殺しても私は他の誰かにきっと殺される。
 そうしたら帰れない。きっと私は帰れない。帰った所で何がある訳でもないけれど、それでも帰りたい。

 思考の終わり無きループ。ぐるぐると回る、まるで頭上の月の如き無限円を描く。
 (私は目の前の人を殺すかもしれない=>けれど目の前の人も私を殺すかもしれない=>どちらにしろ私は死ぬし人を殺す=>無限円へ)
 これはきっと悪夢の続き。人を物として壊せる悪夢の続き。

 少女は、回る思考で思う。こんな夢、早く覚めてしまえばいいのにと。
 そうすれば、何時もの空。踊り子に憧れる、何時もの私。
 美味しいご飯に。素敵な世界。光に満ちて日の当る、あのプロンテラに。

 ──こんな気が狂いそうなくらい、きれいな月夜じゃなくて。
 ──こんな気が狂いそうになるくらい、真っ赤な手の私が居ない。
 いつもの、まっさらな、ひ。

 それは当然。余りにも当然。殺戮の野が間違いでない人間なぞ、どこにいるだろう?
 だけれども。嗚呼、丸い月は狂気の式を運ぶ。

「──♂アサシンさん」
 と、♀ノービスは言った。その手には鈍く──輝く刃。
 じっ、と彼女は男を見ている。彼の顔には苦悩の綾が刻まれていて。
 少女とは対照的に、震える手で男は一対の凶器を手にしていた。
 その銘はトリプル・クリティカル・ジュル。
 御伽噺の中の武器。きっと少女を切り裂く役に立つ。

 男は、少女を前に言葉を口にする事が出来なかった。
 皺が深く刻まれる。実に、人間的な苦悩だった。
 確認する様に、静かな声で少女は言う。

「これは、夢、ですよね?」
「夢、じゃない。これは、現実だ」
 そうだ。これが、現実だ。だから俺は、目の前の少女一人殺すのにも、躊躇うのだ。♂アサシンは思った。
 殺せるのか、それとも、殺せないのか。
 俺はなんて薄甘い。ほら、見ろよ。目の前のノービスでさえ、俺に剣を向けて震えもしてないじゃないか。
 ──いいや、コイツは混乱しているだけだ。だってほら。彼女は自分の様に心の底から人殺しにはなれていないから。
 その保障はあるのか?皆無。絶無。
 剣を向けてきたのなら、殺せばいいじゃないか。お前は剣を向けない相手に戸惑っていたんだから。
 それにさ。ほら。お前はロリコンじゃないんだろう?
 なら。

 噛み付いてきた子猫は殺せばいい。

 剣を振ったのは、♀ノービスの方が先で。
 それを受け止めたのは、♂アサシンのジュルだった。
 ならばきっと彼らは殺しあう。

 ──偽善はもう、通じない。

<♂アサ TCJげっと その他変化なし>
<♀ノビ 変化なし>


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