無題
それは、一言で言うなれば。
剣を手にした少女の前で、顔を歪めた男が立ち上がった、月の下での出来事だった。
煌々と満月が世界を照らしていた。
剣を手にした少女の前で、顔を歪めた男が立ち上がった、月の下での出来事だった。
煌々と満月が世界を照らしていた。
──気づけば、彼が立ち上がっていた。
横たわったまま剣に手を伸ばした私を、冷たく光る目が見ている。
ああ、この人は──本当はこんなに冷たい目の出来る人なんだ、と少女はもう一度思った。
横たわったまま剣に手を伸ばした私を、冷たく光る目が見ている。
ああ、この人は──本当はこんなに冷たい目の出来る人なんだ、と少女はもう一度思った。
次に思い浮かべたのは、彼に、私は殺されるのかもしれない、と言う事だった。
いいや。剣を握っている以上、殺されると思った方がいい、そんな感覚を♀ノービスは覚えていて。
怖い。怖い。怖い。けれども、皮肉にも彼女の体は早くも順応し始め。
それを自覚すると、何故か手の震えかぴたり、と止まっていた。
いいや。剣を握っている以上、殺されると思った方がいい、そんな感覚を♀ノービスは覚えていて。
怖い。怖い。怖い。けれども、皮肉にも彼女の体は早くも順応し始め。
それを自覚すると、何故か手の震えかぴたり、と止まっていた。
少女も又、殺されない為に立ち上がる。不思議と、剣を持った手はもう震えなかった。
だから、殺せる?いや、それは違う気がする。今ここで、こうしている事そのものが間違いである気がする。
けれど──殺さないと殺される。けれど、殺しても私は他の誰かにきっと殺される。
そうしたら帰れない。きっと私は帰れない。帰った所で何がある訳でもないけれど、それでも帰りたい。
だから、殺せる?いや、それは違う気がする。今ここで、こうしている事そのものが間違いである気がする。
けれど──殺さないと殺される。けれど、殺しても私は他の誰かにきっと殺される。
そうしたら帰れない。きっと私は帰れない。帰った所で何がある訳でもないけれど、それでも帰りたい。
思考の終わり無きループ。ぐるぐると回る、まるで頭上の月の如き無限円を描く。
(私は目の前の人を殺すかもしれない=>けれど目の前の人も私を殺すかもしれない=>どちらにしろ私は死ぬし人を殺す=>無限円へ)
これはきっと悪夢の続き。人を物として壊せる悪夢の続き。
(私は目の前の人を殺すかもしれない=>けれど目の前の人も私を殺すかもしれない=>どちらにしろ私は死ぬし人を殺す=>無限円へ)
これはきっと悪夢の続き。人を物として壊せる悪夢の続き。
少女は、回る思考で思う。こんな夢、早く覚めてしまえばいいのにと。
そうすれば、何時もの空。踊り子に憧れる、何時もの私。
美味しいご飯に。素敵な世界。光に満ちて日の当る、あのプロンテラに。
そうすれば、何時もの空。踊り子に憧れる、何時もの私。
美味しいご飯に。素敵な世界。光に満ちて日の当る、あのプロンテラに。
──こんな気が狂いそうなくらい、きれいな月夜じゃなくて。
──こんな気が狂いそうになるくらい、真っ赤な手の私が居ない。
いつもの、まっさらな、ひ。
──こんな気が狂いそうになるくらい、真っ赤な手の私が居ない。
いつもの、まっさらな、ひ。
それは当然。余りにも当然。殺戮の野が間違いでない人間なぞ、どこにいるだろう?
だけれども。嗚呼、丸い月は狂気の式を運ぶ。
だけれども。嗚呼、丸い月は狂気の式を運ぶ。
「──♂アサシンさん」
と、♀ノービスは言った。その手には鈍く──輝く刃。
じっ、と彼女は男を見ている。彼の顔には苦悩の綾が刻まれていて。
少女とは対照的に、震える手で男は一対の凶器を手にしていた。
その銘はトリプル・クリティカル・ジュル。
御伽噺の中の武器。きっと少女を切り裂く役に立つ。
と、♀ノービスは言った。その手には鈍く──輝く刃。
じっ、と彼女は男を見ている。彼の顔には苦悩の綾が刻まれていて。
少女とは対照的に、震える手で男は一対の凶器を手にしていた。
その銘はトリプル・クリティカル・ジュル。
御伽噺の中の武器。きっと少女を切り裂く役に立つ。
男は、少女を前に言葉を口にする事が出来なかった。
皺が深く刻まれる。実に、人間的な苦悩だった。
確認する様に、静かな声で少女は言う。
皺が深く刻まれる。実に、人間的な苦悩だった。
確認する様に、静かな声で少女は言う。
「これは、夢、ですよね?」
「夢、じゃない。これは、現実だ」
そうだ。これが、現実だ。だから俺は、目の前の少女一人殺すのにも、躊躇うのだ。♂アサシンは思った。
殺せるのか、それとも、殺せないのか。
俺はなんて薄甘い。ほら、見ろよ。目の前のノービスでさえ、俺に剣を向けて震えもしてないじゃないか。
──いいや、コイツは混乱しているだけだ。だってほら。彼女は自分の様に心の底から人殺しにはなれていないから。
その保障はあるのか?皆無。絶無。
剣を向けてきたのなら、殺せばいいじゃないか。お前は剣を向けない相手に戸惑っていたんだから。
それにさ。ほら。お前はロリコンじゃないんだろう?
なら。
「夢、じゃない。これは、現実だ」
そうだ。これが、現実だ。だから俺は、目の前の少女一人殺すのにも、躊躇うのだ。♂アサシンは思った。
殺せるのか、それとも、殺せないのか。
俺はなんて薄甘い。ほら、見ろよ。目の前のノービスでさえ、俺に剣を向けて震えもしてないじゃないか。
──いいや、コイツは混乱しているだけだ。だってほら。彼女は自分の様に心の底から人殺しにはなれていないから。
その保障はあるのか?皆無。絶無。
剣を向けてきたのなら、殺せばいいじゃないか。お前は剣を向けない相手に戸惑っていたんだから。
それにさ。ほら。お前はロリコンじゃないんだろう?
なら。
噛み付いてきた子猫は殺せばいい。
剣を振ったのは、♀ノービスの方が先で。
それを受け止めたのは、♂アサシンのジュルだった。
ならばきっと彼らは殺しあう。
それを受け止めたのは、♂アサシンのジュルだった。
ならばきっと彼らは殺しあう。
──偽善はもう、通じない。
<♂アサ TCJげっと その他変化なし>
<♀ノビ 変化なし>
<♀ノビ 変化なし>