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2-140

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140 ♂WIZの思考(嗜好) [第2回定時放送後]


GMジョーカーによる2回目の茶番が終わる。
1回目は9人、2回目は8人。一昼夜で、すでに17人もの人間が還らぬ魂となってこの島をさまよっていた。

片眼鏡(モノクル)を左目に煌めかせた黒髪の男が、ふぅーっと大きなため息をつく。
ため息の理由など推して測れよう。彼にとってみれば貴重な実験体が17体も失われたのである。
魔術師ギルドが、ただ禁じられている研究内容であるという理由だけで稀少な異端学派の書物を焚書にしたときも大いに嘆いた彼ではあったが、
今回の失望はそれ以上であった。

未だひとつの献体も入手できず、無為な時間を過ごしたことに気付いた彼は苛立ちを消すためであろうか、
左手のスティックキャンディをぺろり、ぺろりと舐めながら、なにかを思案しているようであった。

おそらくはこれから先の方針を考えているのであろう。

初日に死んだ人間は言うなれば弱者である。しかし生き残っている人間は、すでに弱者ではない。
彼らは人の死を乗り越えてきた者たちなのだ。
まともに殺し合えば、勝てる保障はどこにもない。
ましてやウィザードである彼は、殺し合いを日常としていたわけではない。
これから先を生き抜き、彼が自身の目的を果たすためには、なんらかの策が必要であることは明らかであった。

「殺しを本職としている人間が、まさかアレほどの力を持っているとは思いませんでした・・・」

不意に♂WIZの口からこぼれ出た、弱音ともとれる言葉。けれどそれは弱音ではない。
半刻ほど前に起こった殺し屋による戦いを彼は見ていた。
一切の武器を持たず、素手で♂クルセイダーと互角に渡り合い、
それどころか、冷静に♀ノービスという罠を仕込み、
あと一歩というところまで♂クルセイダーを追い詰めた♂アサシンの戦いぶりを彼は見ていたのだ。

もし、彼らの実力を知らずに彼らと遭遇していたら。
想像するだけでも恐ろしい。それほどの差が自分と彼らとの間にあることを♂WIZは知ったのだ。

それでも♂WIZは立ち止まるわけにはいかない。
今の♂WIZにとって生きたまま人を献体として自分が有している知識を確認し、組み立てあげた仮説を立証することは、
なによりも優先しなければならないことである。
人の複製を作りあげる。そのために必要なこと、そのすべてが許されるのは、この楽園でしかありえないのだ。

この島で、どの程度魔法力が制限されるかを♂WIZは検証し終えていた。
そして、今の自分が使える最大級の魔法を使おうとも、単発で人を殺すことが困難であることも、♂WIZはすでに把握していた。
だからこそ♂WIZは考えていた。いかにして人を生きたまま無力化させることができるのか、その方法を。

「それにしても、あの♀ノービス。あの娘は素晴らしかったですね。
 実験体となるにふさわしい若さに満ち溢れていました」

♂WIZはぺろり、とスティックキャンディを舐める。
頭に浮かぶのは♀ノービスの張りのある肌、みずみずしくふくよかな体、血色の良い手足、そして彼女に良く似た金色の髪。

「あの♂アサシンをどうするか、それが問題ですね」

真向勝負を捨て、♂WIZは搦め手を探す。♂アサシンと♀ノービスを引き離す方法。
♂アサシンを孤立させ、♀ノービスをも孤立させる方法。
けれど♂WIZの魔術方面には冴え渡る頭脳も、計略という方面ではうまく働かない。

ぺろぺろ、ぺろぺろと舐められ続けるスティックキャンディが形を崩し始めた頃、♂WIZはようやく重い腰をあげた。

「ある程度の策は練りました。あとは彼らをつけて、第三者の登場でも待つことに致しましょう」

そう言って♂WIZはゆっくりと歩き出し、森の中へと姿を消していった。


<♂Wiz>
現在位置:E-7付近 ♂アサシン、♀ノービスのあとをつけている
所持品:コンバットナイフ、片目眼鏡、+10スティックキャンディー
備考:「研究」のために他者を殺害。黒髪。土気色肌。丁寧口調。マッド。♀ノービスに執着(実験体として)



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