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149.騎士として [昼頃]


(本当に大丈夫か、こいつ)
ぼんやりとした様子で歩く♂アルケミストを見て、♂騎士は思った。
――こんな時に襲われたらどうするつもりなんだ。やっぱり俺が守ってやるしかないのか。
男を守る趣味はないんだが、先ほど守ってやるなんて言ってしまった手前そうするしかないんだろう。
しかし男としてどうなんだ、それは。男を守る俺も、男に守られるこいつも。
第一なんなんだこいつは。ぼーっとしやがって、騎士として守る気もおきないっての。


今から数時間ほど前。
二人はあの惨劇の起こった場所へ、♀クルセイダーを埋葬するために戻っていた。
安らかに眠る彼女はまるで笑っているかのようで。♂騎士は少しそれを羨ましく思った。
他でもない彼の手で殺された♀プリーストは、笑顔とは程遠い絶望に染まった表情をしていたから。

♀クルセイダーの体を♂アルケミストがそっと抱き起こす。
それを確認すると、♂騎士は彼らに背を向けた。ありがとう、という♂アルケミストの言葉が後ろから聞こえる。
(ばーか。二人の時間を邪魔するほど俺は無神経じゃねぇよ)
本当は立ち去ってやるのがよいのだろうけれど。敵がどこからくるかわからないこの状況でそれはできなかった。
だがせめて、彼が彼女にかける最後の言葉は聞こえないように。♂騎士は少しだけ距離をとり、腰を下ろした。

♂アルケミストが愛していた彼女にどんな言葉をかけたのか、♂騎士にはわからない。
嗚咽がかすかに耳を通りすぎていったが、聞こえていないふりをした。二人の時間に自分はいないことになっているのだから。
ただひとつ、♂騎士は思う。♀クルセイダーはその最期の瞬間まで♂アルケミストのことを想っていたのだろうと。
命の灯火が消える時になっても、あんなに優しい笑顔を浮かべることができたのだから。

「……行こうか」
♂アルケミストに肩を叩かれ、♂騎士は立ち上がった。
「大丈夫か?」
♂騎士の問いかけに、彼は確かに頷いたのだけれども。
その暗い表情は、♂騎士に不安を覚えさせるに十分だった。


そして現在。♂騎士の不安は確信に変わった。
――あぁ、だから進むなって。そっちじゃない。第一前衛の俺より前を歩くな。妙に足早えし。
おまけにさっきから呼んでるのに聞きもしないでシカトしやがる。完全に呆けてるな、こいつ。
「おい、馬鹿!」
背後からかけられた怒鳴り声に♂アルケミストは振り返った。
いつのまにか前を歩いていることに彼は初めて気づいたようだった。
「馬鹿とはなんだよ」
口を尖らせて反論する♂アルケミストに、思わず♂騎士は頭を抱えた。

「本当に馬鹿なんだから仕方がないだろ。お前は自殺志願者か?」
「何言ってんだ、あんた」
「何言ってんだはこっちの台詞だ。さっきからピッピピッピ鳴ってるその音に気づかないほど耳が悪いのかよ」
♂アルケミストのほうへ、ため息をつきながら♂騎士が近づく。
まさに危険を知らせるといったふうなその電子音が二重に重なる。
再び距離をとると、また♂アルケミストから聞こえるひとつに戻る。

「おそらく禁止区域に首輪が反応してるんだ。地図を見てみろ、F-5の近くにきてるだろう」
「……本当だ」
「出発する前に言っただろ…禁止区域に近づいてきたら西に進路を変えるって。それなのにガンガン先に進みやがって」
「……言ったっけ?」
「言ったわ!」
思わず♂騎士は叫んだ。本当にだめだこいつ。あぁ、苛々する。
仕方がないとも思うのだ。自分も♀プリーストを手にかけてから、呆けた状態で長くいたわけだし。
一度は立ち直ったかに見えた♂アルケミストが、♀クルセイダーの遺体をもう一度見て再び落ち込むのもよくわかる。わかるのだが。

「あぁもう! しゃきっとしろしゃきっと! お前それでも男か!」
前時代的なことを言っていると自分でも思うのだが。そう言わざるを得ないほど♂騎士は苛立っていた。
「でも……♀クルセは俺を守って、俺のせいで死んだんだぜ。元気なんて出ねーよ……」
その言葉を聞いて、♂騎士は自分の苛立ちの正体に気づいた。
単に♂アルケミストが自衛を考えずに呆けているのが癇に障るからではない。
悲しみに沈み、その中で揺らぎ続けている姿が、かつての自分と重なるからだ。
「……情けねぇな」
「そんなのわかってる」
「違う。俺もお前も、だよ」
そう言うと、♂アルケミストはきょとんとした表情でこちらを見てきた。
――情けない。俺もお前もなんて情けないんだろう。
何よりも自分に苛立って、恥ずかしくなって、死にたくなるかもしれない。俺はそうだった。
でもな、それでも生きていかなきゃならないんだよ。
殺しちまった俺。守られてしまったお前。違いはあるが、好きだった人の命を背負ってるんだから。

「思い出してみろよ。あの娘の表情を」
♂騎士の言葉に、♂アルケミストは目を伏せた。
「♀クルセ……笑ってたな」
「ああ、笑ってた。死んだのがお前のせいだって思う奴が、あんな表情して死ねるか?」
はっと何かに気づいたような表情になる♂アルケミスト。
彼はもう一度目を伏せると、今にも泣き出しそうな声で呟いた。
「俺さ…♀クルセに言ったんだ。君の笑顔が好きだって。
 もし、もし最期まで……♀クルセがそれを覚えていてくれたんだとしたら、俺は……」
「そ。あの娘に責められてるんだって思い込んだ、大変な勘違い野郎だったってことだ」
♂アルケミストの瞳から一粒の涙が零れる。それを慌てて拭うと、彼は笑顔を浮かべた。
「……ありがとな」
その言葉が自分に向けられたものか、それとも♀クルセイダーへのものなのか――♂騎士にはわからなかった。
だが確かに♂アルケミストの立ち直りへの兆しをその言葉に感じ、彼は満足そうに笑い返した。

「しかし君の笑顔が好きだ、か。意外と気障なんだな、お前……」
「な……! いい話でまとまりそうな所で、あんたそういうこと言うのかよ!」
真っ赤に染まった♂アルケミストの顔。それを見て♂騎士は愉快そうに笑う。
「あぁ、やっぱお前はそうでなくちゃな」
「……? 何言ってんだ?」

――男を守るのは趣味じゃない。男としてそれは譲れない。
でも腑抜けた顔をやめた今のお前なら百歩譲って守り守られる関係、くらいにはなってやってもいいぜ。騎士として、な。

「背中預けてくれるってお前言ったよな?」
「あ、あぁ……それがどうしたんだよ」
「情けない顔のお前は嫌だったけど。これからのお前になら俺も預けてやってもいいぜ」
「なんだよ、今まで俺に預けさせっぱなしだったってことかよ。まぁ…礼を言っとくべきなのかな、これは」
「そ、おとなしく感謝しとけばいいんだよ」
そう言うと、さらに大きく笑い出す♂騎士。
わけがわからない、と♂アルケミストは首を傾げ、溜息をついた。


<♂騎士>
現在位置:F-4→E-4
所持品:S3ナイフ、ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
状態:プロテインの効果で痛覚を失いつつある
備考:♂アルケミを真の意味で認める 時々GMの声が聞こえるが、それに抵抗を示す

<♂アルケミスト>
現在位置:F-4→E-4
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
状態:♀クルセイダーの死の感傷から大分立ち直る
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る ファザコン気味? 半製造型


<残り31人>



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