032.死んだふり
♂ノービスが草むらの中に倒れていた。
「………………」
ぴくりとも動かず、まるで死んでいるかのように。
「………………」
ぴくりとも動かず、まるで死んでいるかのように。
そう、死んだふりだ。
ノービスのみが使える、ある意味無敵の防御スキル。
ノービスのみが使える、ある意味無敵の防御スキル。
♂ノービスは♀ノービスと同時期に初心者修練場から巣立った仲間だった。
友達と呼べるほどの仲ではなかったかもしれないが、右も左もわからない♂ノービスにとっては唯一の知り合いだった。
その♀ノービスが目の前で殺された。
初めて見る人の死だった。
友達と呼べるほどの仲ではなかったかもしれないが、右も左もわからない♂ノービスにとっては唯一の知り合いだった。
その♀ノービスが目の前で殺された。
初めて見る人の死だった。
同時に♂ノービスは絶望に襲われた。
自分の戦闘能力では誰にも勝てない、
もし誰かこのゲームに乗らずに脱出方法を考えている人がいたとしても自分は何の役にもたたないと感じていた。
…………ふりではなく、いっそ本当に死んでしまおうか。
一瞬そんな考えがよぎった。
天国には♀ノービスもいるだろう。
怖い思いをして死ぬくらいなら今のうちに自分が楽な方法で死ねば…。
自分の戦闘能力では誰にも勝てない、
もし誰かこのゲームに乗らずに脱出方法を考えている人がいたとしても自分は何の役にもたたないと感じていた。
…………ふりではなく、いっそ本当に死んでしまおうか。
一瞬そんな考えがよぎった。
天国には♀ノービスもいるだろう。
怖い思いをして死ぬくらいなら今のうちに自分が楽な方法で死ねば…。
だけど故郷の家族のことが気になった。
自分が立派な冒険者になれるようにとにんじんやリンゴを沢山持たせてくれた両親、
将来はプリーストになってお兄ちゃんの助けになるの、と言っていた幼い妹、
あの言葉を裏切って死ぬ事なんて……。
自分が立派な冒険者になれるようにとにんじんやリンゴを沢山持たせてくれた両親、
将来はプリーストになってお兄ちゃんの助けになるの、と言っていた幼い妹、
あの言葉を裏切って死ぬ事なんて……。
その時、妙な音楽が周囲から聞こえてきた。
<♂ノービス 所持品不明>
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