バトルROワイアル@Wiki 2-166


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166.雨宿り [2日目午後:雨]


『ねぇ、5年後の私たちはどうなってると思う?
 やっぱり一緒に旅をしてるのかな。
 それともあなたは私のお父さんみたいなロードナイトにでもなって、国の騎士として働いてるのかな。
 私たちの未来は、どんな色にかがやいてるのかしら』

記憶の中でにっこりと彼女が笑った。
少し意地の悪い性格の彼女だったけど、ときどき見せる笑い顔がとてもまぶしくて、
そんな彼女の笑顔を大切にしたいと、あの頃の俺は思っていた。

魔が差した、なんて言葉で片付けてはいけない。
片付けていいはずがない。
底なしな大馬鹿野郎の俺がしてしまった行為を、俺は一生背負っていかなければならない。

『人間誰でも恐怖はある。つーかな、怖さを知らない人間ほど恐ろしいものはねえってな。
 臆病なことは決して悪いことじゃあないんだよ。
 恐怖をおして前に進める人間が一番の勇者だとはよくいったもんだ』

♂プリーストの言葉に行き場を失った俺の心は救いを得た。
けれど俺はその言葉を以前にもどこかで、聞いたことがあるような気がしていた。
それはいつの話だっただろう───

剣士の姿をした自分が、アコライトの法衣に身をつつんだ少女と薄暗い地下道を歩いている。
地下道は息を吸い込むだけで気分の悪くなる悪臭と、よごれた水で満ちていた。
それだけではない。
おびただしいほどの魔物が、盗蟲と呼ばれるそれらの魔物が、地下道に巣を作っていたのだ。

当初、騎士団からの依頼は、
騎士の不足にともない地下上水道に起きた異変調査をする余裕がない。
そこで騎士志望である君に調査をお願いしたい、ということであった。

おそらくはロードナイトでもあるアコライトの少女の父親が、少年に騎士への登竜門を与えてくれたのであろう。
ところがそこに大きな誤算が発生したのである。
予想以上の群生となっていた盗蟲の存在であった。

ひとかどの剣士ならば10匹や20匹くらいの盗蟲など、あっというまに片付けてくるであろう。
少女の父親はそう思っていたはずである。
まさかその数が100匹をはるかに超えているとは、そのときは誰も思ってもみなかったのである。

さらに盗蟲は、意外と狡猾であった。
入り口で自分たちが大所帯であることをさとられてしまうと、大勢の騎士たちが駆けつけてくるとふんだのであろう。
地下上水道の1F付近にはほんのわずかに、それも小さくて弱いものだけを生息させ、
様子を調べにきた剣士とアコライトを、たくみに地下深くへと誘ったのである。

圧倒的な数の盗蟲によって退路を断たれたふたりは、進むこともできず、もどることもできず、
ただただ消耗戦を続けることしかできなかった。

「はやく、ヒールをっ」
「もう、無理よ。SPなんてすっからかんだもんっ」

少女が悲鳴のように叫ぶと、剣士の少年もまた泣き出しそうな表情を浮かべた。
それでも少年は懸命に右手のサーベルをふるった。
大勢の敵を前にして、なるべく隙を見せないように、体勢をくずさないように、したたかにサーベルの刃をひらめかせた。

けれど多勢に無勢であった。

数が圧倒的に違うのである。
少年が白刃をふるい、一匹の蟲を切り裂く間に、蟲たちはあらゆる方向から少年を襲った。
あるものは少年の右足すねにかじりつき、あるものは左のふとももを、あるものは飛びかかって少年の肩をえぐった。

「マグナムブレイク !!」

焦燥を顔に出しながらも、少年は大きく剣をなぎはらった。
少年の後ろで身を震わせている少女の白肌を蟲の牙などに傷つけさせるわけにはいかないと思ったのだ。
少年は恐怖に負けまいと、叫び吼えた。
べっとりと蟲の体液によごれた刃が、さらなる緑色に染まった。

剣士の少年の烈火のごとき気迫におされてか、蟲たちはわずかに動きをにぶらせた。
そのときであった。

すさまじい風が巻き起こり、動きのにぶった盗蟲たちをまたたくまに切り裂いていったのである。
風は刃であった。
ひとりの剣士が起こした剣風であった。

剣士の少年とアコライトの少女の前にはいつのまにか、ひとくみの剣士とアコライトがいたのである。

「よくがんばった。あとは俺がひきうけよう」

突然のできごとに立ちつくしていたふたりに対して、剣士がわずかに笑みを見せた。
同伴していたアコライトの女性が少年と少女に癒しの光をそそぐ。
小さな奇蹟ともいえるできごとであった。

剣士姿の男は、とても剣士とは思えないほどの力量で、吹きすさぶ風のように蟲たちを塵に変えていった。
まるでアサシンが使うソニックブローのごとく速さであった。
反面、アコライトの女性はそれほどの癒しの奇蹟を使えるわけではなかった。
もうしわけていどに少年と少女の傷を治すと、彼女はちろっと舌を出して笑うと、ごまかすように頬をかいた。

「ごめんね。私はあんまりたいしたことできないんだ。
 でも彼がいるから、絶対大丈夫よ」

彼女の言葉は本当であった。
あれほどいた盗蟲が、いまや数えることができるほどまでに減っていたのである。
鍛えあげられた剣士の力はそれほどまでに圧倒的であった。

少年はそんな剣士の戦う姿を見て素直に憧れの感情をいだいた。
いつか自分も彼のように強くなって、そして転職して誰かを守ることのできる騎士に。
そのときの少年は、心からそう思ったのであった。

「けどな、少年。嬢ちゃんを救ったのはお前だ。
 怖かっただろう。それでもお前はちゃんと前に進めたんだ。
 本当に強い人間ってのは、恐怖に打ち勝って前に進める人間なんだぜ。
 現に蟲たちはそんなお前に恐怖した。だからあいつらは動けなくなったのさ」

そう言って太陽のようにさわやかな笑顔で剣士の男は笑った───

「恐怖に打ち勝って前に進め、か。
 騎士になって強くなったつもりだったけど、もしかしたらあの頃の方がずっと強かったのかもしれないな」
「なんのことだよ」

ぼそりとひとりごとを言った♂騎士に♂アルケミストが反応した。
突然に降りだした雨をさけるために集落を見つけたふたりは、てきとうな小屋で雨宿りをしていたのである。

「恩人のことを思い出していたのさ」

♂騎士の、どこか遠くに想いをはせているのであろう表情を見て、♂アルケミストはそれ以上なにも聞くことはなかった。
ふたりはそうやって静かに雨のあがるのを待ち続けていた。

♂騎士は知らない。
あの日、剣士だった♂騎士を救った剣士もまた、最愛の彼女を失って狂ってしまったことを。
♂騎士は知らない。
その剣士がクルセイダーに転職していたことを。
♂騎士は知らない。
その彼が、いま、自分と同じこの島で、死神のごとく刃をふるっていることを。


<♂騎士>
現在位置:D-5(集落)
所持品:S3ナイフ、ツルギ、S1少女の日記、青箱1個
状態:プロテインの効果で痛覚を失いつつある 雨がやむまで雨宿り中
備考:♂アルケミを真の意味で認める 時々GMの声が聞こえるが、それに抵抗を示す
   ♂クルセイダーは剣士時代に同じく剣士だった♂騎士を救っていた恩人


<♂アルケミスト>
現在位置:D-5(集落)
所持品:マイトスタッフ、割れにくい試験管・空きビン・ポーション瓶各10本
状態:♀クルセイダーの死の感傷から大分立ち直る 雨がやむまで雨宿り中
備考:BRに反抗するためゲームからの脱出を図る ファザコン気味? 半製造型



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