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2-170

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170.小さな運 [2日目夕方]


しとしとと降り続く雨が男の体を濡らしていく。

ゆっくりと男は歩を進めながら、時折あたりを警戒する。

男はわずかに痛むコメカミを右手で軽く抑えながら歩いていく。

男の左手には鞘に収められた獲物、ブレストシミターが握られている。


(運が・・・よかった、な)


♂クルセははずせば武器を諦めるつもりでシミターをグランサモンクに対し投じた。

シミターが運良く奴にあたれば最良、外れて木にあたり剣の魔力が発動すればそれもまた良し。

投擲自体には自信はあった、しかしシミターはグラサンモンクに当たることはなかった。


(不幸中の幸い、といったところか・・・)


だが天は彼に味方した。

投じたシミターはグラサンモンクのすぐ横にあった木に突き刺さり、そして剣の魔力が発動した。

だがグラサンモンクは死の気配でも感じたのか、咄嗟に爆発を回避し、軽症ですんだようだ。

♂クルセは冷静な瞳を浮かべたまま踵を返しその場を立ち去ろうとした。

その数秒後、彼の目の前にザクリと音を立ててブレストシミターが空を舞い、彼の元へともどってきた。

♂クルセはシミターの柄を握ると自嘲気味に薄く笑うと、グラサンモンクに興味を示すこともなくその場を去った。


(コメカミの傷はたいした事はない、か)


やがて♂クルセの視界が開ける。

うっそうとしげる木々が終わりを告げ、背の低い草原へと変わった。

♂クルセは森の終点の木に寄りかかるように腰をおろす。


(まだ雨はふりつづいている、か)


(この雨・・・なれぬものには厳しいものとなるだろう・・・)


(うかつに動きもとれず・・・足回りも時間がたてばたつほどに悪くなる・・・)


(だがそれは誰とて同じ・・・ただ、物を言うのは経験の差だ、な・・・)


(この雨ならば移動はしたくない、周りもそう思うだろう。ならばいつもより安全と考える、だろう)


(だがその安全という考えは間違っている)


(一人でも殺そうという気があるものがいるかぎり・・・安全は起こり得ない)


(まだ時間はたっぷりとある・・・あせる必要は・・・ない・・・)


(だが・・・減らせるときに減らしておくのもまた大切、か・・・)


♂クルセは鞘に納まっているシミターを握るとゆっくりと立ち上がる。

思えば自分はいったりきたりしている、たまには違うところに行くのもいいだろう。

そう考えでもしたのか、♂クルセはゆっくりとした足取りで北へと進路を向けた。


(前はこんなにも落ち着けたことはなかった・・・な・・・)


(そういえば・・・)


(前もこんな雨が降り続いていたな・・・)


<♂クルセイダー>
髪型:csm:4j0h70g2。
所持品:S2ブレストシミター
備考: 傷はほぼ回復、コメカミの傷は血が止まった、わずかに疲労
現在地:E-6 北へ移動中



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