バトルROワイアル@Wiki 201


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201.撤退戦


滝の様な汗が服の下を流れている。
鬱陶しいことこの上無いが、それを拭っている余裕など全く無い。
彼の手には手には、スティレットから持ち替えたツルギ。
短剣で、必殺の殺傷領域に潜るよりはマシだからだ。

「クソッタレっ、少しぐれぇ疲れやがれ!!」
♂ローグは、よく訓練された猟犬の様にしつこいBSに毒づいていた。
状況は少しも好転しない。僅かに、BSの移動速度が落ちている位だ。
彼は復讐者を背に少しでも距離を離そうと、それが歩きづらいだろう道に逃げ込んでいた。
『戦術的な判断で』だ。

1つ。彼等が先程までいた場所には、遮蔽物が全く無い。
2つ。その状態で正面から切り結べば、まずもって勝ち目は無い。
3つ。重要なのは、当面の危機を回避する事であって、難敵を仕留める事ではない。
現状と自己と対象の能力を鑑みるに、PTから引き剥がすのが一番であろう。
不幸中の幸いだが、♂BSは今も自分を狙っている。

以上三点より、以下現状の撤退戦に続く、である。
びゅおん、とブラッドアックスが唸りを上げて、彼の後ろを掠めた。烈風が、後頭部に吹き付ける。
もしも殺人者がすぐ背後に居たならば、それは彼の脳天と逆毛を泣き別れにしていただろう。
冗談じゃない。赤いのはコートと逆毛だけで十分だ、と♂ローグは内心辟易する。

そう。まともに得物で切り結んでも♂BSには勝てまい。
揺るがし難い事実として、それはローグの上にのしかかっていた。
最大の問題はゴーストリングcだ。それが、関係を完全に決定づけていた。
勝機があるとすれば急所への一撃だが、元々心臓を潰しても動きそうな手合いの上に肝心の胴体はコートの下。
唯一残されている急所は頭部だが、残念ながら彼は夢想家では無い。
戦なら白旗を揚げるか尻尾を巻くべき所だが、相手が狂人で、しかもどうやら腐れ縁かもしれぬとなれば、それもやんぬるかな、だ。
(ローグの輪切り風タタキ。路地裏の盗蟲さん達たんと召し上がれ、美味ですよ、そんなイカレた状況は真っ平ご免だ、と彼は考える)

落ち着け。落ち着け。落ち着いたか?…良し、OKだ。
今は大丈夫だ。獣道での移動速度なら、まだ俺に分がある。
注意を払っておけば、追いつかれない。

彼は自分にそう言い聞かせつつ、思考を開始する。

どうするべきだ?ここでcoolで、冴えたやり方ってなどんなのがある?
考えろ…あいつに、何処でもいい。何か付け入る欠点は無いか…?
それから、俺は何のために何処に向っている?考えろっ!!

──彼は、プロ南に点在する木々の生い茂る場所に向っている。
林、森。取り合えず、そういった場所なら何処でもいい。
何故、木を彼は欲するか?
最悪、逃げ切る為にも確実に身を紛らわせる物が欲しい。

ここまではよい。彼は、今もそこに向ってる。
ふと…彼は、とある事を思い出した。鍛冶師の持っている武器は、確か巨大な斧ではなかったか?
生い茂る木立の中で、果たしてその得物はまともに振る事が出来るのだろうか?
そこまで考えてから、彼は不意に口の端を吊り上げた。
生まれる余裕。彼を見放していた冷静さが、掌を返したかのように擦り寄ってくる。

全く…丸くなるってのも良し悪しだな?
ケンカの基本じゃねーか。こんな単純なこと忘れちまってたなんてよ。

これまで、その不敵で凶暴な笑みを忘れていた。
それから無謀とも取れる度胸と博打打ちも悪漢の専売特許だ。
(最も彼の場合は、更にチェスが自称専売特許の一つに含まれる)
化物を殺す。その為には、後手に回ってはいられない。
今まで、ローグがそうだった様にあれを不利な状況に嵌めてやればいいのだ。


材料は揃っている。
只、あれ相手には単純な状況だけでは足らない。
化物を仕留めるには…罠だ。罠が、必用だ。大穴の自分を本命に化けさせる、罠が。
ポーンは、クイーンにも成れる。その事を教えてやる。火は、煌々と灯っていた。
冷静さと言う尻軽女が彼に、進め、と急きたてつつも燃料を心の炉に投げ込み続ける。

──誰が、手前なんぞに殺されてやるか。生き残るぞ、大馬鹿野朗が!!

戦う、という結論は、導かれた。もう、迷いも焦りも無い。
先ずは、下準備(スリコミ)をしなければいけない。
奴の武器は長柄。そして、両手で使うはずのそれを隻腕で用いている。
相変わらず化物じみた腕力と動きだけれど、確実に両手よりは質が落ちているだろう。
彼は手近な木に向って、走る向きを変え、僅かに速度を落とす。
背後の気配が徐々に迫って来ている事を確認しつつ、慎重にタイミングを測る。

「ワン・トゥ…」
カウント・ダウンを転がす。既に目前に迫った立木へと、走り込む。
瞬間、真後ろの空気が乱れた。壮絶な悪寒が襲ってくる。逆毛をモーセの海割りの如く烈風がかき乱し始める。
だが、ギリギリだ。既に身を捻りつつも、まだ待つ。これ位ギリギリで無いと、完璧とは言えない。
怯えるな、恐れるな、迷うなクソッタレ、此処で死んだら盗蟲のディナー以下だぞチクショウめ、そう自己を叱咤する。

ローグは、命がけの賭場に立つ事を、その刹那に決めた。
こいつは。この化物は。誰かの命を賭けなければ殺せはしないだろう。
ならば、それは一番安売りが利くのが丁度いい。

「スリィッ!!」
その瞬間。斜め前に地面を思い切り蹴って飛び出す。
ちりっ、と一瞬頭が痛んだ。風が皮を裂いたのか。それとも、刃がほんの少し触れかけていたとでもいうのか。
思考に空白が進入してくる。迷いが又、蛇の様に鎌首をもたげる。一瞬が永遠に引き伸ばされる。
そして、僅かな痛み。ちりちりと、焼け付くようで、針を刺したかのように鋭い。
ローグの頭蓋が真っ二つに割られたか、それとも──

しかし、次の瞬間響いた生木を叩き割る音に、そんな疑問は一瞬にして蒸発する。
飛び出して、空中で体を捻り、立木の真横で半回転して、地面を滑りながらも体を強引に向けなおす。
コンマ数秒、あるか無いか。一瞬の交錯。豪腕の起した烈風が未だ逆毛を嬲る。
しかし。それで十分だった。目的は、果たされた。

四つんばいになって、無理矢理に勢いを殺したローグの目の中には、BSの姿が。
そいつは、半ばまで木に埋まった斧を、片腕で握ったまま立ち尽くしていた。

「それじゃあ自慢の斧も振れねぇなぁ!!」
ローグの体が瞬時に跳ね起きる。
BSが、それに反応して彼に視線を向けた。
しかし、遅い。隻腕では、木は両断出来ない。
そして、長柄の斧を引き抜くのにも僅かな時間が必要だった。

「大人しく…食らっとけぇぇぇぇぇぇっ!!!」
生じるべくして生じた隙。攻めの一手。ローグの怒号。起き上がり様、唸りを立てて、ツルギが疾った。

「……!!」
一閃。赤だ。BSの頬に、こめかみに、外の眉尻に、なぞる様に深々と走った一筋の朱。
だらり、と血が垂れる。斧を引き抜きかけたそいつが、幽かに何事か呻いた。
もし、護符が無ければ骨までも削り、頭蓋まで割っていただろう一撃は、しかし彼の頬に傷を刻むだけだった。
大穴の当りは、予想以上の高レートだったらしい。
しかし、一方のローグは、その一撃に拘泥せず、脱兎の如く走り去り、罵声を投げる。

「ハッ、ザマぁねぇな糞スミ!!大層な装備ひっさげといて、その木は手前ぇ様のハンガーか?トロいんだよ鉄バカが!!」
それが通じるとは思っていないが、要は腹いせだ。
ふと、耳に届く異音。メキメキと、と盛大な音を立てて斧が引き抜かれてる。
彼が後ろに僅かに目を遣ると、先程の木の胴に冗談の様に大きな風穴が開いていた。メキメキと音を立てて木が斜めに傾いだ。
まるで大砲だ。今更ながら良くタタキにならずに済んだと冷や汗が噴出してくるが、これでいい。

恐らくは、こちらの思惑は今の『それ』だと思うだろうが、それも仕掛けの為の囮である。
木立でBSの動きを妨害するのではなく、木立は動きを阻害するものだと刷り込み、その思い込みに付け込む事が彼の策。
考え方が制限されていれば、その裏を掻く事は然程難しい事でもない。それを利用して、逃げ回りつつ手傷を与える。
(最も、この鍛冶師が、それを理解できる理性が残っていれば、だが。)
罵声とは裏腹にローグの胸中は、今も必死に勝算をより確実にすべく、案を編み上げようとしていた。
策が外れた場合の次善案、逃走のための手段、他にも多数。
命を博打の抵当に入れたのだ。後などある筈も無く、それ故に失敗してもらっては困る。
(もっとも、彼は自分の命に然程高値はつけていなかったけれども。そして、それは仕方の無い事でもあったけれども)

細工は流々…後は、さっきので糞スミが乗ってることを期待しつつ、仕上げを御弄する、だな。
ブチ殺しとくに越した事はねぇが…出来るだけあいつ等から引き離してから逃げれればいい。
セージ連中と子バフォが、あいつ等に合流すれば、奴と言えどもチェック(王手詰み)だ。
それまで逃げ切れれば──俺の勝ちだな…っと、いけねぇ。

そこまで考えて、彼は苦笑した。
ふと知らぬ間に、あの連中の事を考えている自分に気づいたからだ。
今の自分は、悪党の思考をしなければならぬというのに。
そうでなくては、生き残れまい。悪党としては自己犠牲など真っ平だった。
このBSに、安っぽい命さえ絶対にくれてやるものか。

喧嘩の作法って奴を思い出した俺は、あの糞スミもビビる悪党だ。そうさ、憎まれっ子世にはばかるっていうしな。
そういう事にしとこうぜ。なぁ…

道を走りながらローグは心中でそう呟き、一人、誰かに向けた笑みを浮かべていた。
彼自身気づいていなかったが、それは自称大悪党には余りに似合わない笑顔だった。

だが、彼も未だ、幾つかの事実については知らない。
そもそも、材料が無いのだ。神ならぬ彼には知りうる筈も無い。

それは、非常に、非常に残念な事であった。


<♂ローグ状態装備変化無しプロ南の木々のある場所へ♂BSを引き連れている(実際の大きさに直すとアレでも結構広い筈…多分orz)>
<♂BS装備変化無し状態深淵戦の傷+頬に傷♂ローグを追跡>


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