バトルROワイアル@Wiki 2-182


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182.似て非なる者、あるいは同じ者 [夕方(雨上がり後)~夜]


「これは…面白いことになって来ましたね」
傍らに控える従者に、さも可笑しそうに語るその主。

「主人ヨ。次は何ヲ考えついタ?」
「判りませんか?最も私の研究の障害になりそうな相手が、愚策にも単身飛び出して行ったのですよ」
ククク…と笑いながら♂WIZが、追撃に走り出した♀WIZの後ろ姿を物陰から見ている。
「あのクルセイダーも相当の手練れと見ましたが、今は手負いの身。…邪魔になりそうな者を2人も排除できる好機が転がり込んで来たのですよ」
♂WIZは♂騎士と♂クルセイダーの戦いが始まった時から、ずっと機会を窺っていたのだ。
あわよくば生き残った方を不意打ちし、自らの実験材料とするその機会を。
だが、事態は二転三転し、当初の獲物は諦めるしか無くなってしまった。が、それよりもっと上等な獲物を狩る機会が与えられたのである。

「キキキ、そういうコトカ。主人ハよくよくツいているものダナ」
「漁夫の利と行きましょう。後を追いますよデビルチ君。…愚か者にこのゲームは生き残れないという事を彼等に教えてあげようではありませんか」

♂騎士を取り巻く面々から発見されないように、♂WIZは建物から建物へと身を隠しながら移動を開始した。
手負いの♂クルセイダーとそれを追う♀WIZを、さらに追い掛ける為に。

◇◇◇

「さよなら…」
呟きと共に放たれた紫雷の塊が♂クルセイダーを撃ちすえた。大きく弾き飛ばされたその体は濁流へと吸い込まれて行く。
それは彼女にしてみても計算外だったのだろう。
慌てて♂クルセイダーの姿を水面に探すが、それが叶わなかったのか大きくため息を付いてその場にへたり込んだ。

「どうやら決着が着いたようですね」
遠目に様子を窺っていた♂WIZがにやりと頬を歪める。
「欲を言えば不意を打ちたかったのですがね…。ここまで開けた場所では身を隠す場所が無いですし、ひとつ正面から正攻法で行ってみるとしましょうか」
そう呟くとコンバットナイフを抜き放ち、傍目には気楽な態度で歩き始める。
「主人ヨ。あまりニそれハ無策ではないカ?」
慌てて後に付き従う従者に、顔も向けずに返事をする。
「彼女、体術はなかなかのものですが、肝心の魔術に関しては研鑚が足りないですねぇ。呪文の詠唱がまだまだ遅いです。
 それにわざわざ相手が体勢を整えるのを待ってやる義理も利点も無いでしょう?」
「ふム…精神力を途切れさせてイル今が好機という訳カ」
「君に心配されずとも油断はしていませんよ。仮にもオーラの輝きを放つ相手ですしね」
「そうカ。主人の事ダ。勝算が無けれバ戦いもすまイ」

へたり込んでいた♀WIZは話し声と足音に気付くと、顔を上げる。
♂プリーストでも後を追ってきたのかと一瞬考えたが、歩み寄る1人と1匹を見て慌てて腰を上げる。
「そこの貴方!止まりなさい」
黒い妖魔を従えた自分と同じ力を持つ者。ウィザードである。
相手の考えが判らない以上、魔術の範囲まで近付かせる訳にはいかない。
しかも疲労が絡みつく蔦の様に重くのしかかっている。戦闘は避けたい所だった。

聞こえているのかいないのか、♂WIZは歩みを止めない。
あと十数歩も近付かれれば、それはお互いの間合いになってしまう。
「止まりなさい!こちらに敵意はありません。が、止まらないのであれば攻撃しますよ!」
しかし、なおも距離を詰めてくる♂WIZ。その手にナイフの輝きを認め、敵と判断する。
く…っ。♀WIZは小さく歯噛みする。
短期決戦に持ち込むしかない。持久戦になれば、おそらく魔術を行使する精神力が持たないだろう。

♂WIZが必殺の距離に足を踏み入れる。
「フロスト…ッ」
「フロストダイバー!」
先に呪文の詠唱を終えたのは♂WIZである。
身を切るような冷気の波が彼女の全身を撃ち、♀WIZは詠唱を中断させられてしまう。
頬が、腕が、足が、薄氷の欠片の生んだ裂傷に傷つき、至る所から鮮血を滲ませる。
「な…っ!」
「遅い」
凍結は免れた。受けた傷も大したダメージではない。
だが彼女は悟った。相手が悪すぎる、と。

「「ソウルストライク!」」
ほぼ同時に次の魔術を行使する。
お互いの放った複数の魔力の球体が、空中で激突する。
小さな破裂音を幾重にも響かせて、2人の空間の中央で弾け合って消滅していく。
彼女の持ちうる最速の魔術すらこの相手には防がれてしまった。
「く…」

「まぁ…お互いの詠唱速度の差を考えればそれ位しか手は無いでしょう。ですがそれも想定済みです」
片眼鏡の位置を直しながら、♂WIZは事も無げに言う。
「次はファイアーウォール、もしくはクァグマイアで追撃を遮断して、逃走を狙う…といった所ですかね。まだ逃げ回れる程の体力が残っていれば、ですがね」
にやりと笑う相手に憎々しげな視線を叩きつける♀WIZ
確かに体力も精神力も限界に近い。クァグマイアで足止めした所で、同じ魔術で逃走を妨げられてしまうだけだろう。

だが、
…まだ勝ち誇るには早いっ!、内心叫ぶと次の一手を仕掛ける。
「アイスウォール!アイスウォール!!」
2枚の氷壁が♂WIZの背後に打ち立てられる。
♂クルセイダーを無力化した一撃必殺のコンビネーション。
「食らいなさい!ファイアーウォール!!」

が、その火炎の壁を生み出す呪文が完成するより早く、♂WIZの魔術が発動する。
「サイト…ラッシャー!」
彼の生み出した小さな火球が、熱風と衝撃波を伴って炸裂する。
その一撃は彼の後退を妨げていた氷壁を、いとも容易く粉砕する。

「その技はすでに見せて貰いましたからね。通用しませんよ、私には」
一歩下がる事で炎の壁をやり過ごし、悠々と迂回して無傷の姿を見せる。
「くぅ…っ…」
がくりと膝をつく♀WIZ。もはや魔術を行使するだけの精神力も、眼前の敵を退ける気力もない。

「足掻いた所で現状を打破できないのは理解できましたか?」
「キキキ、あきらめロ人間。勝負ハついタ」
♂WIZの肩にぶら下がるようにしがみついている妖魔が耳障りな金切り声を上げる。
「さて…止めを刺させて頂きましょう」
すっと手の平を♀WIZに向けるのを見て、デビルチが怪訝そうに尋ねる。
「主人ヨ。こやつハ実験とヤラに使わナイのカ?」
「ええ、自分より力のある人間を生かして帰す程、私もお人良しではありません。まだ獲物は残っていますし、彼女はここで始末します。」

「実験…?貴方は…何の為にこんな事を…」
ぴくりと肩を振るわせて♀WIZが問う。
「時間稼ぎノつもりカ?」
「まぁ…いいでしょう。少しお喋りに付き合いましょうか」
言いかけたデビルチを片手で制し、構えた腕を下ろして♂WIZは続ける。
「何の為…というのであれば愚問ですね。ここは人と人とが生き残りを賭けて殺しあうバトルROワイアルの舞台です。
 第一の目的は当然ながらこのゲームで生き残る事。それはあなたとて同じでしょう?」

「なら…生きてこのゲームから脱出する方法があるかもしれない…と言ったら?」
これに相手が乗ってくれれば…と期待を込めて♀WIZは言った。
だがその言葉には大して興味を示さず、さらに言葉を続ける♂WIZ
「第二に…私はある研究を完成させたいのですが、それにはまだまだ情報も知識も足りないと言わざるをえません。
 検体が必要なんですよ。動物やモンスターではなく、人間の検体がね。
 当然の事ながら倫理を無視した邪法の研究です。戦時下であればいざ知らず、今の世の中では人体実験はご法度。それゆえ私はここに送られる羽目になったのです」
「異端者…という訳ですか…」
「まぁ有り体に言えばそうなるでしょう。だからこのゲームに参加させられたのはある意味僥倖とも言えますね。ここならモルモットには事欠きませんから。
 脱出する方法?そんなものは必要としていません。全ての生存者を検体として利用し、結果、私が勝者となればいいだけの事です」

かっと怒りに目を見開いて♀WIZが睨み付ける。
「貴方は…そんな理由で貴方は人を殺すと言うのですかっ!」
その視線を涼しい顔で受け流して、男は口元を歪める。
「そんな理由とは失礼な方ですねぇ。私にとっては何事にも変えられない重要な命題だと言うのに。
 そもそも理由がどうであれ、私も貴方も同じ穴のムジナ。人殺しである事に変わりはないでしょうに…」

♀WIZはかぶりを振り、もう一度睨み付ける。
「確かに私も人殺しです。守りたい人達の為にこの力を振るう事を躊躇いはしません。
 だけど!貴方とは違う!!絶対に違う!!」
「いいえ変わりませんよ。どんな大義名分を持とうとも人殺しは所詮、人殺しでしか無いのです。そこに差などありません。
 死は万物に等しく死であり、生を奪う者は奪われる者からすれば等しく殺戮者なのですから」
「それでも絶対に貴方とは違うわ!!」

激昂して叫ぶ相手をつまらなそうに見やり、すっと右腕を掲げる異端の徒。

「少しお喋りが過ぎた様ですね…禅問答は好む所ではありません。そろそろ幕引きといたしましょう」

♂WIZのかざした手に冷気が急速に集まってゆく。
それは凄まじいまでの旋風となって、2人を包み込んでいく。

「さようなら、お嬢さん。せいぜい偽善者の理屈を振りかざして死んでいきなさい。」

最後の力を振り絞ったか、彼女の抱えた信念が彼を拒否したのか、跳ね起きるように体を起こすと拳を振り上げ駆け寄る善意の殺戮者。
だがその命を狩る為に編み上げられた魔術の構成が、一足早く唸りを上げた。

「永遠の静謐に眠れ…ストームガスト」

物理的な圧力をもった冷気の竜巻が全てを白く染め上げていく。
大地も、川も、人も。
その想いすらも。
白く。
白く。


◇◇◇

「主人ヨ。あの魔術師ニ止めを刺さなくテ良かったノカ?」
肩の上がよほど気に入ったのか、そこから離れようとしない従者が不思議そうに主人に問う。
すでに戦闘の場から離れ、大きく迂回をしながら集落へ戻る道すがらである。
彼女の仲間と鉢合わせを避ける為にそのようなコースを辿っているのだ。
これで、もっとも厄介な相手は脱落させる事が出来た。後は残った面子をいかに効率よく捕らえるか考えながら、しばらく隙を窺う必要がある。

「細胞の壊死は聖職者の使う奇跡とて治す事はできません。火傷跡や古傷、凍傷もそれに含まれます。…と言っても判りませんか。
 結論だけ言えば彼女は助かりません。ほうっておいても死ぬ相手に無駄な時間を掛けるのは賢い者のする事ではありませんよ」
「時間ガ無くなったノハ、主人ガお喋りなどシているカラだろウ」
「まぁその通りですけどね。それに…」

ふと星が輝く空を見上げ、遥か昔に愛した人の顔を思い描く。
彼女を取り戻す為ならばこの身が狂気の淵に囚われようとも、私は止まるつもりは無い。
片眼鏡の位置を直しながら、♂WIZは続く言葉を口にはしなかった。

───守りたかった人の為…その一点は同じなのですから。


<♀WIZ>
現在位置:D-5→D-4
所持品:ロザリオ(カードは刺さっていない)、クローキングマフラー、案内要員の鞄(DCカタール入)、島の秘密を書いた聖書、口紅
状態:重度の凍傷により瀕死状態

<♂Wiz>
位置:D-5(民家内で休息中)
装備:コンバットナイフ 片目眼鏡 とんがり帽子
    レッドジェムストーン1つ 血まみれのs1フード
外見:黒髪 土気色肌
スキル:サイト サイトラッシャー ファイアピラー クァグマイア ファイアウォール
    フロストダイバー アイスウォール モンスター情報 ストームガスト
備考:「研究」のため他者を殺害 丁寧口調 マッド
   ♀ノービスに執着(実験体として) ♂アサシンを殺害
   デビルチと主従契約



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