バトルROワイアル@Wiki another2-12


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 another:a long long ago


 ──それは昔々のお話です。

 ある所に、一人のノービスがいました。
 彼は、どちらかと言うと平凡な家庭で育ったごく普通の少年でしたが、
若さ故、と言うべきでしょうか。田舎の時間の流れがどうにも肌に合わない気がしていたのです。
 毎日毎日、かっちこっち。時計の針は休む事はありませんが、止まる事もありません。
 少年は、自分の父親の掌を知っています。
 沢山のマメが出来たぼろぼろの手。毎日毎日畑仕事で日に焼けて僅かに茶色がかった顔。
 嫌いではありませんでした。そのノービスは、その手が嫌いではありませんでしたが、
自分の未来をその手と顔の向こうに垣間見てしまう気がしていたのです。

 若さ故の。年を経るにつれて、徐々に収まっていくものだと言えばそれまでの事。
 でも仕方ないじゃありませんか。
 少年、と言うのは何時も何処でも情熱を持ってしまうものです。
 そんな退屈な場所で、ずっとこれまでと変わらない生活を続けていく事は我慢できなかったのです!
 黒い瞳の中には空。空の向こうにはきっと未だ見たことの無い場所。
 それを見てみたいとか。そんな、世界の何処にでも転がっているユメ。

 ある日、少年は古ぼけたナイフと、僅かなお金と道具。そして普段着一着を道連れに冒険者になるのだと告げました。
 母親は仰天し。幼友達は呆れ、けれど父親だけは僅かに眩しいものでも見る様な目で、少年を見ていたのでした。
 騒ぎ、慌てる皆の前。静かに目を閉じ、彼は少年にいいました。

「本当に、本当なんだな?○○○○」
「ああ、本当に本当だ。父さん」
 少年の決心は、自分自身にとってもこれまでで一番硬いもの。
 一欠けらの嘘なんてありません。じっと真っ直ぐ見つめ返して彼は答えます。
 とある少年にとって不思議な事があるとすれば──その目が。いいえ、自分自身の父親が僅かばかり普段より小さく見えた事。

 そして父親は、僅かに。思い出すように上を向いて、静かに口を開きました。
 それは余りにも寂しげで、知らない間に騒がしかったテーブルが静かになっていて。

「──私はね。冒険者になりたかった。子供の時は包丁なんか腰に挟んでは、
ごっこ遊びをしていたものだ。信じられないかもしれないがね」
「でも父さん。なら、どうして……?」
「なりたかったけど、なりたくなくなってしまったからだよ。……いや、なる事が出来なくなった、と言った方が正しいかな?」

 一呼吸置いて、彼は言葉を続けます。

「お前が生まれる時の話、知っているだろう?」
「……」

 少年は無言で頷きました。
 彼が生まれるほんの少し前。身重の母が病の淵の倒れた時の事。

「その時、私は必死の思いで走った。『初めて』冒険と呼べるような事を本当にしたのはこの時だったよ」

 それは、決して格好いいなんて言えない。夢物語のそれとは違う過酷な現実。
 車軸の様な雨を抜けて、ただ只管に走る走る。目指す場所は隣村の小さな教会。
 近隣で唯一、たった少しの癒しが使える神父の元へ走る走る。
 きちんとした道を通れば間に合わない。だから、それは道ともつかぬ木々の隙間を越え、直線で目的地を目指すルート。

「だが──私はね。その時、『冒険』というのが本当はどういうものなのか解ったんだ。
 でも、もしお前に本当に覚悟と言うものがあるのなら──好きにしなさい」

 呟く、父親の横顔は何処か寂しそうで。
 その時の言葉に、本当の事を言えば少年は不満を感じてもいました。
 だって、冒険者と言えば彼の憧れです。そんなくらい側面なんて想像したくないのです。
 結局、家を飛び出して彼は初心者修練場へと。
 そこで貰ったのは、街に溢れる冒険者達の誰もが知っている事。
 けれど、同時に現実を知ります。確かに、彼の父親の言葉は正しかったのです。

 ──その少年は、やがて成長して一人の男と出会いました。
 彼の目からはどうにも変わった格好をしていて、顔には穏やかな笑みが。

「あの、すみません。シーフギルドって、どこにあるんでしょうか?」

 適正試験でシーフが向いているって言われて、と更に告げた後少年に、男は。

「だったら、連れて行ってあげるよ」

 そう答えました。
 彼につれられるまま、後ろに続いて。薄暗いピラミッドの中をひたりひたりと。
 少年は僅かに不安も覚えていましたが、それはシーフになれる喜びと、好奇心で打ち消される程度のものでした。
 やっとシーフになれるんだ。そう思います。
 でも、この人は一体どんな職業なんだろう?そうも思いました。

 少年は、足を止めて言います。あなたは一体何の職なんですか、と。
 その人も、やっぱり足を止めて振り向くと、まるでいつかの父親のように穏やかな笑顔のままで。
 ある物語の始まりを告げたのでした。

「僕かい……?僕は、忍者だよ。隠し職業でね……とっても弱い職なんだ」

 ──と。


 next to an assassin's stories



| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
|ログイン|