バトルROワイアル@Wiki

NG2-31

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「しっかりしろよ!目を開けろよ!頼むから…何か言ってくれよ…。」
破れた鞴のような頼りない音を唇から漏らし、かろうじて呼吸を続ける♂騎士を
♂アルケミは腕に抱きながら必死で呼びかける。
お互いの衣服を黒味がかった赤色に染めて尚も♂アルケミは♂騎士に言葉をかけ続けた。
「はぁ…はぁ…俺……誰も泣かせたく…ないって…思ったんだけどな…。」
自嘲を含んだ言葉と血を吐き出し震わせながら右手を♂アルケミに差し出す。
「そんな事言うなよ…。そう思うなら俺と一緒に生きて帰ろう。な?」
差し出された手を片手でしっかりと握り締めて励ます。
ポーションピッチャーで傷を回復しようにもポーションの数が絶望的に足りない。
こうして考えている間にも♂騎士の呼吸が弱々しくなっていく。

どうしたらいい?俺に何ができる…?

一度ならず二度までも自分を救ってくれた友をどうしたら助けられる?

「…あ。」
はっと行き当たった閃きに短く声を上げる。
うまく行けば再び♂騎士に命の火を灯す事ができるかもしれない。
でも、失敗したら…?
光を失った瞳で空を見つめる♂騎士をこのまま死なせるわけにはいかない。
一か八かの賭けに縋る術しか彼の気力も体力も正常な判断力も残されてはいなかった。

アルケミストギルドの講壇で教授が言っていた事を思い出す。
【生命を作り出す技術…これこそが我々アルケミストの悲願でもあり…】
深く息を吸い込みそしてゆっくりと吐き出す
何度か繰り返すと大都市で教えられた生命倫理が浮かび上がる。
生命を召還させるにはいくつかの道具から生み出されるエンブリオを媒体にしないといけない。
しかし、エンブリオもなければ作り出す道具すら欠けている。
が、生命の基礎になる♂騎士、足りない物を分け与える自分という存在が目の前にある。

ゴクリと唾を飲み込み♂騎士の傍ら置かれたツルギを空いた手で取り上げ
光を失ったそれをじっと見つめた。
仮に命を繋ぎとめる事ができたとして以前と同じ彼でいる事はできるのだろうか…。
友を助けたい。嘘偽りのない純粋な気持ち。
でも、根底にあるのはアルケミストとしての研究心なのかもしれない。

「俺は、絶対にあんたを死なせない…。」
ザシュッ…!
ツルギで貫いた腕からぼたぼたと鮮血が♂騎士の上に零れ落ちる。
「くはっ…。やっぱ、いてぇ…これで失敗したらあんたの事恨んでやるからな。」
♂アルケミストはもう一度深呼吸をしてからゆっくりと叫ぶように声を上げた。

「コールホムンクルス!!!」

♂アルケミの傷口から零れる血液が薄い緑色の発光体となって♂騎士と繋がる。
それと同時に物凄い勢いで体中の力が抜けていくのがわかる。
「自分の生命媒体にしてるんだから仕方ないか…。」
胸元からじわじわと光が儚げな点滅を繰り返しながら♂騎士の身体を包み込む。
「頼む…お願いだから成功してくれ…。」
疲労感と虚脱感に抵抗できずに♂アルケミの意識が遠のいていく
深い闇に飲まれていく間に激しい光を目の奥に感じたような気がして
瞬きしたのを最後にどさりと♂アルケミは♂騎士の上に覆うようにして気を失った。

雨が正体もなく地べたに倒れた2人を叩き続ける…。
トクン…トクン…。
雨粒のリズムとは違うリズムが被さる。
ピクンッ…。
握り締めたままの腕に♂アルケミではない別の力が微かに加わった事に
深い眠りにつく彼は気が付く事がなかった…。


関連話:178.紅の騎士



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