バトルROワイアル@Wiki NG2-33


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NG.交錯する殺意


選択肢は2つ。それは不変の事実。
「半分ずつ使えばいいんじゃないの?」
♀商人が言った。
けれど、それは叶わぬ望み。
「…無理ですね。一般的な食物と違い、イグドラシルの実の効果は『実に凝縮された世界樹の生命力を受け取る』という多分に魔法的な物なんですよ」
ジュノー魔法大学卒業時にイグドラシルを卒論として選んだ♂セージが首を振る。
「治癒魔法を分割することができないように、その生命力を分割摂取することはできないんですません。…考えてもみて下さい。イグドラシルの実を切り売りしていることがありますか?」
彼は重いため息混じりに問いかけた。
イグドラシルの実の『体力・気力共に全快』という効果は案外使い所が難しい。
体力が残っている内に使うのはもったいないが、あまりにギリギリまで待っては死んでしまう。また、そんなギリギリの線を見極める余裕があるなら白ポーションやヒールでも間に合うだろう。
だからイグドラシルの実という物は、回復が間に合わないほどの強敵と闘う際に体力の7~8割を失ったら使うのだ。
逆に言えばその程度の回復力があれば充分であり、効果を分割できるのなら余分な2割ほどは切り取って別に使った方がいい。
それをしないのは効果が分割できないからに他ならないのだ。
それに、と♂セージは♂ケミに視線を向けて続ける。
「2人とももう何か食べられるコンディションじゃありません。本来用途外のポーションピッチャーで無理矢理にでも使うしかないのですが…ポーション以外を投げてどの程度効果があるか分かりますか?」
「…分からない。少なくとも試してみたことはない」
♂シーフの手に握られたイグ実をにらみ付けながら♂ケミは声をしぼり出した。
奪い取ってでも♂騎士へ使いたいのを必死にこらえている様子がありありと見てとれる。
「それじゃ、どうすりゃいいんだよ」
魔法の使いすぎで青ざめ、力の入らない声で♂プリが毒づいた。
♂セージはつとめて冷静に答える。
「私の結論は1つです。――どちらかを生かし、もう一方は見捨てる」

「てめえ…っつ…」
反射的に立ち上がろうとした♂プリが立ちくらみを起こし、座り込んだ。
「ああ、もう無理しないの」
その背を支える♀商人の手を振り払い、♂プリは座り込んだまま怒鳴る。
「んなこと言ってる場合か!てめえ♂セージ、言っていいことと悪いことの区別もつかねえか!」
♂セージの出した答えは誰もが意識しつつ、口には出さなかった答えだった。
彼に非難の視線が集中する。
しかし♂セージは引き下がらなかった。
「いいか悪いかなんて関係ありません。そうする必要があるんです。――さもなければこのまま2人とも死ぬんですよ!」
「…くそぉっ!」
♂プリの拳が地面を叩く。
彼とて分かっていたのだ。命を選択しなければならないことを。
さらに♂セージはたたみかける。
「多数決なんていい加減なことはしたくありません。どちらを助けるべきか、理詰めで決めましょう。…誰か意見は?」
「そんなこと言ったって…」
真っ青な顔を見合わせる♀商人と♂シーフ。
特に♂シーフの混乱は酷かった。
かつてと同じく自分に嫁せられた選択。
今度は過去のあの時とは違い、2人とも言ってしまえば赤の他人だ。
しかも付き合いの深さにははっきりとした差がある。
感情のままに選ぶのならば♀Wizを助けるだろう。
だが、盗賊としてはあまりに真面目な彼の性格はそれを卑怯と感じ、またその選択を正当化するだけの理由も見いだせなかった。
「俺には…選べねえ」
「……」
♂プリが首を振り、♂ケミもじっと唇をかみしめる。
多数決になれば。あるいは持ち主の意思を優先するならば。間違いなくイグ実は♀Wizに使われていただろう。
♂セージの言は最大限の譲歩なのだ。
だが、自分には♂騎士を♀Wizより優先させるべき理屈も、彼を見捨てる決断もできない。
誰もが沈黙し、ただ無言の時が流れた。

ゆっくり30数えるほどの時間が経っただろうか。
「意見がないのでしたら私から。私は♀Wizさんを助けるべきだと考えます」
♂セージが切り出した。
「え…」
「おいおい」
♂ケミが瞬時に青ざめて♂騎士の服を握り、♂プリ達は気まずそうな顔つきとなる。
「理由は2つあります。まず単純な戦力として見た場合、どちらがより強いか」
「いや、それは…」
♂ケミが顔を小さく左右に振った。
実際に闘ってみたわけでもないのに戦闘力をそう単純に比べられる物ではない。ましてこの島ではスキルの効果が薄く、瞬間的な破壊力では騎士の方が上回る可能性も高い。
しかし♂セージは片手を立てて反論を遮った。
「むしろ問題は次です。…選択された命だという事実に、耐えられるのはどちらか」
「っ!」
「う…あ……」
♂ケミと、そして♂プリが慄然とする。
今までの2人の行動を見ればそれは明白だ。
♀Wizであれば事実を重く受け止めつつも歩みを止めようとはするまい。しかし♂騎士は♀プリを殺してしまった事実に押しつぶされ掛かっていた。新たに背負わされる重荷には耐えきれない可能性が高い。
「以上が理由です」
「……」
♂ケミはうつむいて肩を震わせた。
♂セージの言っていることは正しい。
だが、正しいと言うだけで感情が納得するなら苦労はない。♂騎士を見捨てることは――
「ま、それなら2人とも助けられる可能性だってあるわけだしな」
「……え?」
苦悩する彼の肩を♂プリのがっしりとした手の平が叩いた。
♂ケミは目をまたたかせる。
「♀Wizさんと♂騎士とじゃ体力が違う。効き目わりぃったって自己治癒力も他職に比べりゃ高え。俺のヒールとありったけの赤ポ使や、まだ死んだと決まったわけじゃねえだろ?」
そう言って彼はここまで共に来た仲間達…♂セージと♂シーフ、♀商人の顔を見渡す。
「ってことで悪いけど俺はここに残るわ」
「え、でも、それだったら僕たちも…」
自分も残ると言いかけた♂シーフを♂セージが制する。
そして赤い印が打たれた自分の地図を彼に突きつけた。
「あ…」
自分たちにはやらなければならないことがある。
ここでせっかく助けた命を無駄にしないためにも。
彼は強く頷いた。そして握った鮮やかなイエローの果実を♂ケミへ差し出す。
「…お願いします。使って下さい。僕も♀Wizさんを助けて欲しいです。…けど、あなたが♂騎士さんを選んでも恨みはしません。それで1人は助かるんですから」
過去を、悪夢を振り切った少年のまっすぐな瞳。
それは♂ケミの惑う心に強く響いた。
知らず、涙がこぼれる。
「…卑怯だろ……そんなこと言われて…裏切れるかよ……」
彼は震える指先をイグドラシルの実へ伸ばした。
「わかったよ…♀Wizさんを……」

ボンッ

鈍い爆発音が上がった。



「何をするんですかGM森!!」
どことも知れない、石壁に囲まれた陰鬱な地下室で。
白い制服に身を包んだ巨躯の男が3人の兵士にしがみつかれ暴れていた。
彼らの脇では整然と並んだジェムストーンの上にペンと紙束が散乱している。
「貴様らが命令通りジェムを割らんからだっ!」
白衣の男――GM森がわめき立てる。
「理由がありません!それに爆破の命令はGMジョーカーが直接出すと…」
「いいんだっ!あれは島の秘密を盗み出し、陛下に逆らおうとしていた大逆犯なんだっ!」
彼のその叫びは事実を正確に捉えていた。
しかしもちろん彼がいきなり爆破を行った理由はまったく関係ない。
彼が大金を賭けた♂騎士が死にかけ、助ける手段とその正当な理由――と彼が短絡的に思いついた物――がそこにあった。だから実行したに過ぎない。
「貴様らこれ以上逆らうなら反逆罪で…!」
「あなたが、ね」
GM森のがなり声を制したのは、静かな、あまりにも静かな声だった。
蒼然と振り返った彼らの目がピエロ姿の男を捉える。
「――とんでもないことを、しでかしてくれましたね?」
珍しく、GMジョーカーの顔は笑っていなかった。

「うがあああああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」
喉も張り裂けよと天に吠える♂プリ。
そんな彼を誰も止めようとしなかった。
「そんな…そんなのって…」
「こんなのやだっ。なんでよっ。助かるんじゃなかったの!?」
首が半ば千切れかけ、直前まであったかすかな命のかけらすら失った♀Wizを前に、♂シーフと♀商人が涙を流す。
苦労して黄色い実を投げやすい形に削っていた♂ケミは呆然とするしかない。
「何、が…何で…」
自分は♀Wizを助けるのではなかったのか。
なぜ彼女が死んでいる?
混乱するその肩を、ぽん、叩く手があった。
「……事情が変わりました。それは♂騎士さんに」
それは♂セージの声だった。
「あ、ああ…」
「おい。♂セージ。てめえ…」
この期に及んで冷静な判断をやめようとしない彼を♂プリがにらみ付ける。が
「……いや、いい」
♂セージの顔に何を見たのか、即座に口調を改め矛を引いた。そして♂ケミを振り返る。
「言ったとおりだ。あんたはそれを相棒に使ってやれ。わりいが俺は結果を待ってられねえ」
言うが早いか彼は荷物をまとめだした。
「どこへ、行く気だ…?」
「決まってんだろ。あのジョーカーとか言うスカした野郎をぶっ殺しに行くんだよ」
「そういうことです」
♂セージも同じように荷物をまとめ、♀Wizのふところから聖書を取って赤い文字の書かれたページを破り取った。
それを♂ケミに押しつけ、♂プリと共に足早に歩き出す。
「待ってよ!」
「僕も行きます!ごめんなさい♂ケミさん。頑張って下さい」
彼らの後を追って♀商人と♂シーフが駆けだした。
少年少女が追いついて来る前に、♂プリは♂セージへと押し殺した声で囁く。
「あの野郎を見つけたら教えろ。俺がこの手で引導を渡す」
「それは、無理ですね」
答えはそっけなかった。
そして続けられた声の気温はさらに低かった。
「自分で言い出したルールも守れないクソは、私が殺します」
♂プリは唇の端をつり上げ、獰猛な笑みを浮かべた。
「じゃあ競争になるな」

慌ただしく行ってしまった♂プリ達を見送り、♂ケミはやっと気を取り直した。
釈然としない物は残っているが、ともかく急がなければ行けないことがある。
削り終わったみずみずしい果実を彼は強く握りしめた。




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