バトルROワイアル@Wiki 2-206


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206.信頼の意味


 暗い森の中を息を殺して早足で歩く。
 ルアフで、足元を照らしたいところだがPTを組んでいるわけではない今、それは危険だ。

「やれやれ……振り出しに戻りましたか……」

 先程の喧騒の最中、淫徒プリは喧騒に乗じてあの場から離れた。
 PTから離れるという目的は達せられたものの、これではゲームが始まったばかりの時と変わりようが無い。

「さて、どうしましょうか……」

 地図で点滅する自分の位置を確認すると、現在地はE-6、E-7の境界付近らしい。
 あの危険な毒花の♀アルケミや復讐に燃えている三人からは離れたい。
 殺しと薬に手を染めることこそしなかったもの、その他の犯罪と呼ばれることは一通りしている。
 それゆえ、その手のいざこざから起こる凄惨な風景は見慣れているが、あくまで自分は蚊帳の外から見るからこそ、その光景も所詮他人事と風景として無関心で居られるのだ。
 渦中に投げ込まれるのは御免である。

 その一心で速度増加をかけ、歩き続けたせいだろう。

 とんだ聖職者だと言われそうではあるが、神の奇跡である治療と身体強化の魔法が使えるのだから全ての神から見放されているわけではないらしい。仮に彼を守護しているのが、邪神であったとしても。

「何にせよ、できるだけ人数の多いPTを見つけなくては……」

 PTがいたならば、弱々しい♀プリーストを装って潜り込めば良い。
 当初こそ何を考えてこんな女装セットなどを用意していたのかと思ったが、疑いを持たれることなく潜り込むのには最適である。自分の華奢な容姿を今回ほどありがたく思ったことは無い。

 人が多ければ、それだけ信頼が厚い可能性がある。
 その中に入れば当座は大丈夫だろう。
 その仲間もいずれは、裏切らねばならないのだが。

 所詮人間は最期は一人。

”……人は一人で死んで行くのではありませんよ”

 唐突に、プリーストを志した頃に師と仰いでいた人物の口癖が頭を過ぎる。
 ……プリーストを志した頃は、あの人のように人を救う信頼される聖職者になりたいと思っていたが……何故こうなってしまったんだろうか。

 ……違う。
 死ぬ時は一人なのだ。
 信頼など一時の気の迷いに過ぎない。

 そう自分に言い聞かせて淫徒プリは歩く。


+ + + + +


「どこまでいったんでしょうか……」

 ♂セージは別れたPTを心配していた。
 夜の闇の中、月明かりだけでは心もとない。

「無事であればいいんですが」

 心配しつつ、なお進む。
 気が付くと周囲には木々が増えていく。
 しかし、どこまで行ってもPTは見つからない。

「……方向音痴なわけではないのですがね」

 思わず地図を見て彼は呟いた。
 この辺りのどこかに彼らがいればいいのだが……。
 だが、残念なことに♂セージは別の人物とここで出会うことになった。

「おや……? プリーストの女性……?」

 木立の中を早足で歩く、きれいな長い金髪のプリースト。
 まだ、こちらには気が付いては居ない。

「一人だけで行動とは……」

 PTからはぐれたのか?
 それとも、実はマーダーなのか?

 不審に思いつつ、♂セージは木立に紛れるようにしてクローキングを使用した。
 彼女の様子をうかがうために。


+ + + + +


 足が痛い。
 速度増加を何度もかけなおし、かれこれ1時間以上歩き続けている。
 ここまで誰にも会わなかったことは、幸運なのか不運なのか。

「この際……幸運だと思いましょう」

 思わず呟いてから休憩を取ることにした。
 この足の痛みは、靴のせいもあるかもしれない。
 女性物の靴はどうしても見た目重視の華奢な作りで健康上はあまりよろしくない。
 荷物の中から飲み水のボトルを取り出して口に含み、月明かりに地図を晒す。
 現在地はD-6。ずいぶん遠くまで歩いてきたものだ。

「……生き残りは28人……」

 考えをまとめるために、地面に小枝でメモを始める。
 周囲に人がいればこんなことはしないのだが、現状彼は一人であり思考を邪魔する者はいない。
 もちろん、あまり思考にふけると周囲への警戒が薄くなるので最小限度に留めるのは忘れない。

(さて……)

 ♂WIZは殺人者として断定。地面の走り書きの上に印をつける。
 先程まではモンクも殺人者側と推測していたが、どうやらジルタスを殺したらしいあのモンクはアルケミの少女とPTを組み、彼女を守るような行動を見せたから二人は恐らく殺人者側ではない。

「……すると生き残りの中で殺人者は誰か……推測の域を出ないのが痛いですね」

 この悪趣味な制裁ゲームは、冒険者の各職ギルドからの男女の生贄とその他の無作為による選別からの数人で成り立っていると昔聞いた事がある。しかし、当時は自分が実際に選ばれるとは思いもしなかったから、その話が同僚達の間から出た時にまともに聞いていなかったので確証が持てないのが悔やまれる。

 あの広間に集められた際、目にしたものを思い出して見る。

 GMジョーカー、銀縁眼鏡の♂GMと筋肉質の♂GM、それからアシスタントの♀GMたち。
 他に目に付いたのは……

(……我ながら、女しか覚えていないのは……こういう時に役に立たなくて困ります)

 思い出せた人物は強烈な印象だったGMたちを除いて、ほぼ全て女性だけだったのだ。
 しかも、ノービス、スパノビ、WIZが二人、ハンター、プリ、騎士、アルケミ……とふとももがまぶしく、好みの職ばかり。
 だが、そんな記憶でも役に立つ物はあった。

 WIZが二人?

 記憶を手繰ると片方は尊大な雰囲気を漂わせていたとがった耳と赤い瞳のWIZ。
 もう片方は憂いを帯びた雰囲気の銀色の長い髪が印象的だった……「オーラをまとった」WIZ。
 定時放送には、名前は呼ばれていない。つまりどちらも生きている。

「……WIZが一人で生き残るとしたら、よほど単身能力として特化しているもので無ければ無理ですね……」

 恐らく、どちらかはPTを組んでいる。そして、どちらかは殺人者ではないか?
 淫徒プリは、暫定的にではあるが地面の走り書きの上に印をつける。
 さらに、残っている職とわかる限りの人数も書き出してみた。

 一次職でいまだに生き残っているのは、間違いなくPTを組んでいるだろう。
 殺人者側の可能性も捨てがたいが、それでは推測よりも数が多すぎるので除外する。

 残った者の中で殺人者側として単独行動できそうな者。
 ♂騎士、♂クルセ、♂ケミ、♂セージ、♂ローグ、♂ハンター、♀騎士、♀ハンター、♀スパノビ。
 他にも無作為に選ばれた者がいるはずだが、自分は確認できない。

 この中で隠密行動に一番向いているのは♂ローグ。
 悪漢というぐらいだから、よほど風変わりでなければ殺人者側に回るはず。
 他に気になるのは……♂クルセイダーと男女どちらも残っている騎士とハンター。
 全員、戦闘のプロ。誰か一人は間違いなく殺人者側だろう。

 そんなことを考えながら、メモに印を付けていく。

「そういえば……彼には申し訳ないことをしましたね。♂アコのことを頼まれたのに……」

 悲壮な眼差しで去っていったいった♂ハンター。
 保護するように頼まれていたのに、結局♂アコは件のモンクに突っ込んで行き、そのまま返り討ちにされたかもしれない。
 一部始終を確認する前に、自分はあの場所を離れてしまったのでそれはわからないけれども。
 少し心が痛む。自分を信頼して預けていったのに、こういう結果になってしまったのだから。


+ + + + +


(……このプリーストは、何を書いているんでしょうか……)

 次々と足元に書かれる職と、その上に付けられる印。
 近くで、その様子を見ながら♂セージは思考する。

 時折ボソボソと呟く言葉を耳にし、少なくともこのプリーストは殺人者側ではないことはわかった。
 だが、このプリーストに対して違和感を拭いきれない。
 見た目はほっそりとして華奢な美人だが、低いハスキーな声といえば聞こえはいいが、高めの男性の声とよく似ている。
 無論、そんな声の女性がいないなどといえば嘘になるが。

(なるほど……殺人者側、ゲームに乗っている人物を推理しているのですか)

 いくつか付けられた印から、♂セージは判断した。
 当たっているもの、当たらずとも遠からずなもの、はずれているもの。
 時折呟く言葉の端々とメモに、このプリーストの冷静な分析力が垣間見える。

 それに感心してつい油断してメモをもう一度よく覗き込もうと移動した時、クローキングが解けてしまった。

(しまった……!!)

「……なっ?!」

 突如現れた♂セージに淫徒プリは動揺した。
 周囲を警戒していたつもりだったが、考えることに集中しすぎておろそかになっていたのだろう。

「驚かせてしまって、申し訳ありません……が、少しお話をよろしいでしょうか?」

 ♂セージは、とりあえず話を切り出した。


<淫徒プリ>
現在地:D-6
所持品:女装用変身セット一式 未開封青箱
外見:女性プリーストの姿 美人
備考:策略家。Int>Dexの支援型
状態:軽度の火傷 師の言葉を思い出し少々センチ&現在の状況に動揺

<♂セージ>
位 置:D-6
所 持:ソードブレイカー ♀WIZから借りたクローキングマフラー
容 姿:マジデフォ黒髪
スキル:ファイアーウォール ファイアーボルト ソウルストライク ファイアーボール
備 考:FCAS―サマルトリア型 ちょっと風変わり? GMジョーカーの弟疑惑
   ♀WIZ・♂シーフ・♂プリ・♀商人と同行していたが、現在は単独行動中
   他のメンバーと合流しようとしている。



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