209.営巣 [2日目夜]
さく、 さく、
少女は柔らかい腐葉土を踏みしめて進む。
夜闇を見据える赤い瞳には力がみなぎり、口元には満足げな笑みを浮かべ。
少女は柔らかい腐葉土を踏みしめて進む。
夜闇を見据える赤い瞳には力がみなぎり、口元には満足げな笑みを浮かべ。
「ふふ」
その足取りが止まり、下腹を優しくなでた。
「よい魔力じゃ。これならば夜明けには産めよう」
彼女は女王蜂。
その本質は人の王のように「他者を支配する」ことではなく、
「子を産み、その子らを統べる」ところにある。
その本質は人の王のように「他者を支配する」ことではなく、
「子を産み、その子らを統べる」ところにある。
眷属たる巨大昆虫がおらずとも、
魔力によって召喚することを封じられようとも、
男の精と命を取り込むことで子をなすことはできるのだ。
魔力によって召喚することを封じられようとも、
男の精と命を取り込むことで子をなすことはできるのだ。
召喚に比べれば手間と生み出せる数において大幅に劣るが、質において劣るものではない。
そして生物としての本質である以上、魔力を封じたぐらいで奪える物でもない。
そして生物としての本質である以上、魔力を封じたぐらいで奪える物でもない。
朝方に卵を産めば、昼前には孵化するだろう。
彼女にのみ従う、戦う力と多少の知恵を持つ子が。
彼女にのみ従う、戦う力と多少の知恵を持つ子が。
「ふふふ、鷹ごときに負けるでないぞ?」
下腹に命の胎動を感じつつ、彼女は冷たく笑った。
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