バトルROワイアル@Wiki 2-211


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211.鋼の意思


♀BSはその輝きの中に炎を見た。
追い詰められ、全ての進路に深い闇を置かれて立ち尽くしていた♀BSには、その光に惹かれて歩み寄る事しか出来なかった。
それは緩やかに、穏やかに、同時に熱く、激しく♀BSに問いかけていた。

『……いらないのか?』

♂スパノビが何かを言っているが、良く聞こえない。

『力が……欲しくないのか?』

欲しい。ずっと欲しかった物だ。

『力が無いから悩み、迷い、苦しむ。違うか?』

その通りだ。あたいはずっと……そう、思ってきた。

『全てを手に入れる力、欲しくないか?』

声は心なしか、♀BSの師の声に似ていた。

『強ければ、何も失わない。さあ、この力を手に取れ』

そう囁きかける声は父の声にも似ていた。
♂スパノビがうろたえた様子でこちらを見ている。
見てな、あたいが一番強くなってやるよ。そうすれば、もう誰も……

『千の炎を纏い、万の屍を超え、おまえは誰よりも強くなる……』

ああ、わかってる。あたいは強くなる。
いや……そうだよ、あたいは……強くなるんだ。ずっとそう思ってきたじゃないか。
ずっとそうやって鍛えてきた、なのにあたいはそれを使ったのか?

試して無いし……失敗したら…………怖い、恐い。

……恐い? あたいが? 脅えてる? この、あたいが!?
ちょっと冷静になろうよ、脅える? 女扱いされなくたって必死に体鍛えて、狩場で暴れて、さんざん危ない目にあって、そんだけしといて恐い?
脅えてる弱虫だから力を貸してやろうって? それをこのあたいに言ってるの?

もしかしてあたいこのクソ槍に…… な め ら れ て る ?

へし折れた槍の穂先を両手でしっかりと掴む。

「ぼ、ぼす! それは危ないんだな!」

♀BSは♂スパノビを睨み付け、怒鳴る。

「アンタはすっこんでな! こいつは……」

あたいとこのクソ槍との勝負なんだよ!

掴んだ両手から、ヘルファイアの意思が♀BSへと流れ込んで来る。

『そうだ、全てを燃やし尽くせ』
「ごめんだね! あたいはずっと鍛えてきた! 強く、誰よりも強くなりたいからだ!」
『我を受け入れよ、そしてその感情に全てを委ね……』
「小難しい事言ってんじゃないよ! あんたが勝つか! あたいが勝つかだけだろう!」

ヘルファイアの穂先である刃の塊を素手で掴み、力任せにひん曲げにかかる♀BS。

『逆らうな、苦しみが増すだけだぞ』
「それが強くなるって事だろ! 楽して強くなる道なんか何処探したってありゃしないんだよ!」

両の腕に血管が浮き出る。
刃は嫌な音を立てて歪み始めた。

『力が、欲しくないのか?』
「あんたから貰うまでもないね! 力なら売る程余ってんだ! そいつがあんたに通じなかったら、その時は煮るなり焼くなり好きにしな!」

ヘルファイアが、赤黒く輝きを放つ。
それは♀BSの手を焼くが、それ以上に♀BSの心の中に炎を吹き付ける。
しかし、それは♀BSの心の奥底には決して届かない。
♀BSは既に思考を閉ざしていた。

『悲しくないのか? お前の友、そして父を奪った者達への怒りは無いのか?』
「今あたいは! あんたをへし折りたいだけなんだよ!」

ヘルファイアの黒い意思が♀BSの心に見た物は、圧倒的な敵意、愚直なまでの勝利への信念のみであった。

『悲しみ、苦しみ、怒り、全て……忘れるのか? 忘れられるのか?』
「あたいは! あんたを! へ! し! 折! る!」

両腕に込めた力、それは他に何の取り柄も無い♀BSが唯一他人に誇れる物。
師が、そして父が褒め称え、認めてくれた唯一の物。
そしてもう一つ。
この力を得る為にあたいがいつもやってきたやり方。
賢くも無く、器用でもない。だから、その時その時で自分が定めた標的ただ一つだけを敵と見定め、それだけを見て必死に戦ってきた。
痛み、苦しみ、悲しみ、そして……自分を相手にこうして戦い、勝利してきたのだ。

「やると決めた時のあたいは神様だって避けて通るんだよ!」

『……貴様は……愚か者だ…………』

ヘルファイアの声が遠くなる。もう、それは知り合いの誰の声にも似ていなかった。


ゴキンッ!!


ヘルファイアが鈍い音を立ててへし折れた。
それは中ほどから完全にねじ曲がり、美しい光沢を見せていた刃の背の部分には醜く亀裂が走っている。
♀BSは鋼の塊となったそれを地面に放り捨て、自分の両の手の平を見てみる。
火傷の痕は無かった。

「愚か者ね……それでもあたいは、あんたみたいなクソに負けるのだけは絶対に嫌だ」

そう呟く♀BSに最早迷いは見られなかった。
固唾を呑んで見守っていた♂スパノビは、♀BSの勝利に歓喜の声をあげる。
そんな♂スパノビの頭を軽く叩きながら、♀BSは苦笑いする。

「悪いね。こんな事したって無駄に危険なだけなんだけどさ。それでも……」

♂スパノビはみなまで言わせず、全力で首を横に振る。

「ぼ、ぼぼぼぼす! すっごいかっこよかった! ぼす強かった!」

感動している♂スパノビにその後の言葉を続け損なった♀BS。

「そうかい。じゃ、行くとするかい」

♀BSの言葉に♂スパノビは怪訝そうな顔をする。

「え? ど、何処へ?」

それを聞いた♀BSは、ここに来て、おそらく一番の笑みを♂スパノビに見せた。

「決まってるじゃないか、はぐれちまった連中を探すんだよ。あいつら心細くて泣いてるかもしんないからね!」

この場に淫徒プリや♀アルケミが居れば♀BSの心理状態を冷静に見てとれたかもしれない。
自信を取り戻し、そして戦いへの覚悟を決める。そのためのこれは彼女なりの儀式であった。
そして、神器と呼ばれた魔槍ヘルファイアもまた、この地にある力を封じる何かの影響を受けていた事にも気づいたかもしれない。
しかし、♀BSには途中経過や為しえた事の理屈なぞどうでもよく。
やらなければ前へ進めない、そう感じた事に挑み、勝利した。それだけであった。


<♀BS>
現在地:F-6
所持品:ツーハンドアックス 古いカード帖
外見:むちむち カートはない
備考:ボス 筋肉娘 覚悟完了
状態:負傷箇所に痛みが残る。軽度の火傷。


<♂スパノビ>
現在地:F-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり
外見:巨漢 超強面だが頭が悪い
状態:瀕死状態から脱出。



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