バトルROワイアル@Wiki

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two little devils

誰かに呼ばれた気がすると言ってデビルチは草むらへ駆け込んだ。
かすかながら同族の気配を感じたのだ。

案の定小柄な悪魔を見つけたデビルチは開口一番に尋ねる。
「ちト聞くガ、ニぶルヘイムへ行くにハどうしタらよいノだ?」
「なに?」
いきなり質問されたその悪魔は赤くて丸い眼を瞬かせた。

そして不思議そうに問い返す。
「…お主、悪魔か。なぜこのようなところにおるのだ」
「人のコとが言エるのカ」
デビルチも当然のようにツッコミを返す。

小柄な悪魔は地面に座ったままつぶやくように言った。
「我は主どのを待っておる」
「契約ナのカ?」
「契約ではない。言葉にして約束したこともない。だが我は最後まで主どのと共にあるつもりであった」
そこで一旦言葉を切って視線を落とす。
「だのに我は主どのをひとりぼっちにしてしまった」

「だからもう一度会って謝らねばならぬのだ」
「フむ」
重い雰囲気にデビルチは居心地の悪さを感じて身じろぎした。
話をそらすようにもう一度尋ねる。
「そレでここハどこなノだ?ニぶルヘイムへ行く道ハ無いのカ?」

顔を上げた悪魔は紅い瞳をぱちくりとさせる。
「知らぬのか?」
「ム」
デビルチは言葉に詰まった。
見た目同じサイズの、つまりは比較的歳も近そうな相手に自分の経験のなさを白状するのは気が引ける。
ちょっとばかり迷って言い訳をひねり出した。
「コう見えてモ箱入りデビルチだったのダ」

「そうか」
相手は悪魔にしては珍しく、特に追求もせず説明し始めた。
「ここはヘラの野、そしてあれが冥界の川ギョルだ。泳ぐなりどこかに架かっている黄金の橋を渡るなりすればニブルヘイムに至る」

「なるホど」
ここへ来たのは結果として間違っていなかったらしい。
是非とも♂Wizに教えてやらなければ。
デビルチはひと安心とばかりにうなずき、とててててっと駆け戻ろうとする。

その尻尾が小さな手に捕まえられた。
「待て」
「ふギょ」

尻尾を強く引っ張られておもわず妙な声をもらす。
「何ヲするか」
ちょっと涙目になりつつ振り返ると相手はあっさり手を離した。
「すまぬ。だがニブルヘイムは本来悪人が送られる場所で、こちらが善き死者の来る場所だ。好きこのんであちらへ行く必要はないと思うぞ」
「フむ」

デビルチは♂Wizの所へ戻る理由を失って紅い悪魔の横に腰を下ろす。
「ではナぜ我が主人ハここヘ来たのダロう?悪人だト思うノだが」
「そうなのか?」
「楽しミで悪事を働ク者では無いヨうだが、己の行為ヲ悪と知っテなお押し通そウとしてオった」

「悪人と言ってもいろいろおるものだな」
紅い悪魔は苦笑じみた声を出した。
「我の主、――どのはいたずら好きでな。さまざまな悪事をたくらむのだが、成功した試しがない」

「ム?」
どこか楽しそうセリフから名前の部分だけがぽっかり抜けて聞こえ、デビルチは首を傾げる。
「名がヨく聞コえなかっタのだガ」
「――どのだ」
言い直してもやはり聞こえない。

「…マったク聞こえヌ」
「なんと」
小柄な悪魔は腕を組んで考え込む。

しばらくして悪魔はいくつかの名前を挙げた。
「ホルグレン、――、騎士男。聞こえぬ名はあるか?」
「2人目ガ聞こえヌ。あと騎士男といウのも聞き覚エはない」
「そうか」
角の生えた頭が縦に振られた。

「お主、現世とのつながりを残しておるのではないか?しかも――――に関わっておろう」
「まタ聞こえなカったゾ。確かにこコへは死んで来タのではナいガ」
「やはりな」

頷いた悪魔は急に居住まいを正してデビルチの顔を覗き込んだ。
「お主に頼みがある。聞いてはもらえぬか」
「キキ。♂Wizとノ契約モ終えたシ、聞かぬデもナいぞ」
デビルチは偉そうに腕組みしてそっくりかえる。だが内容を聞いてそのまま後ろへ倒れることになった。

「主どのを探し出して助けてやって欲しいのだ」
「…悪魔ガ人助けダと?しカも顔も名前モ分からヌのにドうやって探セと言うノだ」
顔だけ上げてデビルチはつぶやく。
そもそも現世へ戻っても島を出られるかどうか分からず、出れたとしても大陸は混乱のまっただ中だ。
誰かを探し出せる可能性などゼロに等しい。

しかし相手は自信ありげに言った。
「問題ない。主どのはおそらくお主の近くにおる。だから名が教えられぬのであろう。死者には生者の運命を決定できぬのだ」

「ツまりアの島におルのカ」
その声は相手に聞こえなかったようだが、それならやってみても良いかとデビルチは思った。
「ヨかろウ。だガ代価はどウする?主どのトやらの魂をモらってヨいのカ?」
「それはやれぬ。だが主どのを助ければお主はそれ以上の利を得るはずだ。――どのは――――なのだからな」

「フむ」
理由の大部分はまたしても聞き取れなかったが、デビルチは相手の言葉を信じた。
悪魔にとって契約は絶対的なものだ。誤解させることはあっても嘘は言わない。

「デは戻リ方を考えるトしヨう」
「それは簡単だ」
すっかりやる気になったデビルチが立ち上がると、紅くて小さくて角の生えた奴が実に悪魔らしい笑みを浮かべて鎌を構えた。
「まだ死んでおらぬなら、この場から消えれば元の場所に戻ろう」
「イやチょっと待…」

シュパンッ
刃が一閃し、デビルチの姿は急速に薄れだした。
「コノ…」
「主どのを頼む」
文句を言うより早く、角の生えた頭が深々と下げられる。
「我もよく似た状況に送られ死んだと、だが負けはせなんだと伝えてくれ。そして」

消える瞬間に聞こえた声は、まだデビルチの知らない感情を乗せていた。

「心は今も共にあると」

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