バトルROワイアル@Wiki

2-285

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285.受け継がれしカリスマ

「・・・・・・ファイヤーウォール!」
 ごう、と紅蓮の炎が草原に立ち昇り、びくりとパピヨンが硬直する。
 炎と氷、ふたつの壁に攻撃を悉く阻まれ、デビルチとパピヨンは折角見つけた獲物を前に悪戦苦闘していた。
「ちょっと何ーこいつー」
「こノ・・・・・・ユピテル・・・・・・」
「ユピテルサンダー!!」
 己が詠唱よりも速く、♀Wizが放った雷撃球がデビルチを直撃し、盛大に吹っ飛ばされる。悪魔の纏う『闇』の属性を持つデビルチゆえ何とか耐えることは可能だが、こんなものを何発も喰らっては身が持たない。
「ク・・・・・・コンな、・・・・・・!!」
「ヤバくない? あれ、あたしはパスでいいよー。美味しくもなさそうだしー」
 よろよろと起き上がるデビルチと眼前の♀Wizを交互に見ながら、パピヨンは既に戦意を喪失していた。
 パピヨンとデビルチの二匹は、同盟結成後、餌となる人間を探して徘徊していたところ、幸先良く人間――♀Wizを発見し、意気揚々と襲いかかったのだが。その結果がこれである。
 ♀Wizは、デビルチとパピヨンの二匹がかりの攻撃でも全く怯もうともせず、逆に魔法を駆使して彼等を窮地へと追いやっていた。
「・・・・・・逃がしませんよ」
 ♀Wizとて、このゲームからの脱出の障害となるであろう存在を黙って見逃すつもりはない。件の小屋を出てすぐのところをモンスターに強襲されたのには驚いたが――ファイアーウォールとアイスウォール、ふたつの魔法壁によってデビルチとパピヨンの退路を絶ち、確実にこの魔物達をここで仕留めようとしていた。
「んもうっ!」
「クワグマイヤ!!」
 炎も氷も飛び越えて飛翔しようとしたパピヨンの足に、魔力の泥沼が絡み付く。
「やん、ちょっ、何コレっ!」
「逃がさないと言った筈です」
 しかし、パピヨンは己が纏う『風』の属性に加え、ミストレスの魔力を宿しているため(この事実自体は♀Wizには知る由もないが)♀Wizの攻撃の主軸となるユピテルサンダーのダメージが通り難い。かと言って、多少の呪文詠唱を必要とするストームガストや幾つかの魔法を複合しての攻撃では逃げられる、或いはもう一体のモンスター、デビルチからの攻撃を許してしまう可能性がある。一体ずつ相手をするのなら、やはりまずはデビルチを仕留めなくては。
「・・・・・・ソウルストライク!!」
 ♀Wizの呪文により召霊された古代の聖霊達が、魔力を纏ってデビルチへと襲いかかる。それは目標に直撃し、デビルチは白目を剥いてその場にこてんと転がった。
「・・・・・・・・・・・・クソ・・・・・・あノ時、主ガ止メを・・・・・・刺していレバ・・・・・・」
 ♂Wizと共にこの♀Wiz達を襲撃した時。この♀Wizは、♂Wizとの魔法合戦に於いて敗北を喫している。それが、デビルチの油断を誘わせた。♀Wizは大した相手ではない――そんな先入観は持つべきではなかった。こいつは、強敵なのだ。
 悔しげに、しかしデビルチは地に伏せることしか出来なかった。そんなデビルチを見下ろして、パピヨンは下唇を噛む。
 ――何さ。何が最強の種族だ。全っ然口ばっかりじゃん。
    なんでこんなのに付き合って、アタシまで怖い目に遭わなきゃいけないのよう・・・・・・
 その時。
 今、何かが。
 そう、その時パピヨンだけが『何か』を感じ取ったのだが、その『何か』の根源をすぐに♀Wizも、そしてデビルチも知ることになる。

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

「・・・・・・・・・・・・!?」
 悲鳴。
 遠くの方で、悲鳴が聴こえた。否、今も続いている。
(誰かが、何か――今の声は――!?)
 随分と距離があること、それに♀Wizの冷静な判断のお陰で悲鳴に乗って戦慄までは運ばれなかったが、それでも♀Wizがその悲鳴に気を取られたその隙に、パピヨンはクワグマイヤから抜け出し、悲鳴の聴こえた方向――以前、自分が冒険者達に苦渋を嘗めさせられた広場へと向かって、全速力で飛び立った。
「・・・・・・、待ちなさいっ・・・・・・!!」
 慌ててアイスウォールを詠唱するが、大地より渦巻いた大気が凝結して形作られた氷の壁の射程距離は、既にパピヨンが飛び立ったあと。

「アアアアアアアアアアアアアアア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!!!」

 そして、永遠に続くかと思われるようなその悲鳴は、絶叫と呼ぶに相応しいものに変わった。


   ◆  ◆  ◆


――ねえねえっ、あなた、アタシのお仲間だよねっ!?
――んーん、わかるよ。ねえ、アタシ今ピンチなんだけど、そっち大丈夫っ?
――アタシもそっちのニンゲン倒すからさっ、ちょっとこっちのと合わせてどうにかすんの手伝ってくんない?
――もちろん! そんだけニンゲンいるんなら、わんさか食べちゃって問題ナイナイ!
――おっけ! 今行くから、助けてねっ!


 生まれたモノは、ただ只管に孤独で残虐で暴食な悪意であった。
 生まれ持った種の本能として、己のいる場所へと向かってくるモノから受信した信号に応え、そして悪意はその信号を送った者――パピヨンを己が女王であると認識する。


  ◆  ◆  ◆


 「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙・・・・・・・・・・・・ァ゙・・・・・・・・・・・・」

 力尽きたのか、命尽きたのか。迸る絶叫は途絶え、裂けた腹部から血肉と臓物と、そして異形の悪意を飛び出させた淫徒プリは、指先だけをまだ少しぴくつかせていたが、やがて動かなくなった。その淫徒プリの『中身』を、淫徒プリの中から出てきた悪意が貪り喰らっている。
 悪夢のような光景に、そこにいた一同は絶句して、ただそんな悪意を取り巻くように茫然と見つめていた。
「オイ・・・・・・何だ、こりゃ・・・・・・何なんだ・・・・・・!」
 ♂プリーストが恐怖を噛み殺すかのように叫ぶが、その問いに答えられる者などいよう筈もない。
 髪を振り乱した『淫徒プリであったもの』は、彼等がさっきまで見ていた淫徒プリその人ではなく、端正な顔立ちをした(最も、今ではその表情は恐怖と苦痛に歪んでいるのだが)青年と呼べる年格好の男性であった。♀アコあたりは実はどちらかというとこの事実の方が不思議だったのだが、それよりも遥かに異常な事態が眼前に広がっている以上、一同はそちらに注目せざるを得ない。
 その悪意は、節によって体を繋げた、不気味な昆虫のような姿をしていた。毒々しい紫色の体には見る者に生理的な嫌悪感を抱かせる、艶やかともいえる目玉のような紋様が刻まれており、淫徒プリの血に濡れてぬらぬらと光り、一見しただけでは堅そうなのか柔らかそうなのかも判断し難い。また体の両端から鋭く凶々しい牙のようなものが2対ずつ生え揃った顎のようなものがあり、頭部がどちら側なのかも判別できなかった――恐らくは淫徒プリの骸を貪るように顎を動かしている方の部位なのだろうが――否、或いはどちらも頭部なのかもしれない。その体の下部側面より、鉤爪の付いたやけに長い6本の、節足動物ならではの形状をした足が飛び出ていた。
 眼前の異形に見覚えのある者は♂プリースト達の中にはいなかったが、間もなく悲鳴を聞きつけてここにやって来る♀Wizの知識の引き出しから検索を掛けてみるに、ウンゴリアントというシュバルツバルド共和国の伝承に存在する鉱山の主、その亜種――と見るのが最も適切であろうと判断された。
 ♂プリーストは何度目の前で人が死のうど終わらぬ悪夢に、♀マジシャンは怖気立つほどの眼前で行われている行為に、♀アコライトはその悪意の持つ外見の毒々しさ自体に、悪ケミは自らの持つ知識の外の存在に、♂スーパーノービスは凄惨たる血の海を目にして、子犬は獣としての本能に、彼等は恐怖に、只々立ち尽くす。

「いた~~~~!!!!」

 そして、そこに悪意の主となるべき器を持った、女王が訪れた。
 その声に、今までがりがりと淫徒プリの亡骸を貪っていた異形の蟲が反応する。
「パピヨン・・・・・・手前ェ・・・・・・!!」
 はっと我に返り、♂プリーストがマイトスタッフを構える。それに続くように、各々がそれぞれ戦闘体制を取った。
 しかしパピヨンは♂プリースト達には目もくれずに淫徒プリの屍の元へと飛んでいくと、屍の裂けた腹部から顔を出す異形をその小さな胸の中に抱き締めると頬擦りを始めた。
「あーもうかわいいなあ! んふ、血でどろどろじゃないあなた。アタシがとったげるー、ちゅ♪ ・・・・・・あ、おいしっ」
 パピヨンの顔も血化粧によって真っ赤に染まっていくが、全く意に介する様子も見せない。
「・・・・・・オイ」
 ひとしきり蟲と戯れるパピヨンに向けて、♂プリーストが殺気を向けた。声が震えているのは、恐怖の残り香でもあり、また彼の怒りでもある。数刻前にパピヨンから傷付けられた恨みと、淫徒プリをそんな姿にした蟲との関係。仲間ですよと言わんばかりのパピヨンの態度から、よくはわからないが全ての元凶はこいつだ、と♂プリーストは納得する。
「そいつぁ手前の仕業か」
「んー? あー、さっきのニンゲン! 今度はさっきみたいにいかないんだからねー!」
 パピヨンは♂プリーストの問いなど聞いていないかのように、否多分実際聞いてなどいなかったのだろうが――その証拠に♂プリースト達の存在にも今気付いたようだし――あかんべをすると蟲から離れて舞い上がり、触角の先を♂プリースト達に向ける。
「さあ、やっちゃうよっ!」
 呼応するように蟲が空気を震わせるように嘶く。びりびりと肌を刺す悪寒に、♂プリーストはごくりと唾を飲み込んだその時、吹き荒ぶ冷気の風がパピヨンを中心とした空間を包みこんだ。瞬時に危険を察知してパピヨンは上空へと逃れるが、
「・・・・・・来たわねー、おばさんっ!」
 ♀Wizを睨み付けるパピヨンの下で、ぱきぱき、と氷像が割れ、その中から現れた異形の蟲が怒りにぎちぎちと牙を鳴らした。


   ◆  ◆  ◆


 その頃。
「ギ・・・・・・キキ・・・・・・。・・・・・・我はマだ死んでおラン・・・・・・目にモノ、見せてクれる・・・・・・!!!!」
 満身創痍のデビルチは、己のプライドを支えに♀Wizの後を追っていた。
 ゆっくり、ゆっくりと、ぼろぼろの身体を引き摺りながら。


※淫徒プリの絶叫が、E-6を中心に一帯に響き渡りました。

<♀WIZ>
現在地:E-6
所持品:クローキングマフラー 未挿sロザリオ
    ウィザードスタッフ DCカタール +7THグラディウス 多目の食料
容 姿:WIZデフォの銀髪
備 考:LV99のAGIWIZ GMに復讐 ♂シーフと同行 年の事は聞かないでね?
状 態:容態安定 ただし全身に傷跡が残る HP/SP中回復

<♂スパノビ>
現在地:E-6
所持品:スティレット ガード ほお紅 装飾用ひまわり 古いカード帖 食料二食
スキル:速度増加 ヒール ニューマ ルアフ 解毒
外 見:巨漢 超強面だが頭が悪い
備 考:BOT症状発現? ♀BSの最期の命令に従っている 仲間を襲う奴を止める

<♂プリースト>
現在地:E-6
所持品:修道女のヴェール(マヤパープルc挿し) でっかいゼロピ 食料二食 マイトスタッフ
外見:逆毛(修道女のヴェール装備のため見えない) 怖い顔
備考:殴りプリ
状態:HPSP共に微回復

<♀アコライト&子犬>
現在地:E-6
容 姿:らぐ何コードcsf:4j0n8042
所持品:集中ポーション2個 子デザ&ペットフードいっぱい 食料二食
スキル:ヒール・速度増加・ブレッシング
備 考:殴りアコ(Int1)・方向オンチ 首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミをやっつける ♀マジも助けたい
状 態:多少の傷 SP微回復

<♀マジ>
現在位置:E-6
所持品:真理の目隠し とんがり帽子 食料二食
容 姿:褐色の髪(ボブっぽいショート)
備 考:ボクっ子。スタイルにコンプレックス有り。氷雷マジ。異端学派。
   首輪と地図と禁止区域の関係を知る ♀ケミに敵意
状 態:足に軽い捻挫、普通に歩くのは問題無し

<悪ケミ>
現在地:E-6
所持品:グラディウス バフォ帽 サングラス 黄ハーブティ 馬牌×1 食料二食
容 姿:ケミデフォ、目の色は赤
備 考:サバイバル・危険物に特化した頭脳、スティールを使えるシーフを探す、子バフォに脱出を誓う、首輪と地図と禁止区域の関係を知る
したぼく:グラサンモンク
参考スレッド:悪ケミハウスで4箱目

<デビルチ>
現在地:D-6→E-6
所持品:+10スティックキャンディ トライデント(デビルチ用)
備 考:悪魔
状 態:瀕死

<パピヨン>
現在地:E-6
備 考:ミストレスの魔力を一部継承 ミストレスの持つ虫達を統べるカリスマ継承 ノーマルより強い

<寄生虫>
現在地:E-6
外 見:ウンゴリアントの亜種
備 考:淫徒プリから孵る パピヨンに忠誠
状 態:ストームガストを一発直撃。耐久力等は他の書き手さんに任せます

<淫徒プリ>
現在地:E-6
状 態:死亡

<残り13名+4匹>

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