「さらぬ別れ」(2006/10/25 (水) 23:17:48) の最新版変更点
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私の持っている古語辞典で「さらば」という言葉を引くと、右隣にこの言葉が載っていました。
出典は伊勢物語の84段。少し離れたところに住むお母様のことで昔ありけるをとこが受け取った歌と返歌。
老いぬればさらぬ別れのありといへばいよいよ見まくほしきゝみかな
世中にさらぬ別れのなくもがな千世もといのる人のこのため
http://route16.dyndns.org/vjcla/ise/Ise84.html
(音声データもあります。ぜひ一度お聞きください)
京都大学の付属図書館は「京都大学電子図書館」と称して、所蔵する貴重資料画像を公開しています。伊勢物語もくにゃくにゃ文字で見ることができます。
母の歌は
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/t173/image/1/t173s0104.html
のラスト2行。子の歌は
http://ddb.libnet.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/t173/image/1/t173s0105.html
いずれも「さらぬ」をひらがなで書いています。
敢えて漢字にすれば「避らぬ」。だから「さらぬ別れ」は、どうにも避けることのできない別れで、(特に親との)死別を指すようです。でもなんとなく「去らぬ」というように読み取れそうで、胸が締め付けられます。去ったひとは居なくなったのではなく会わなくなっただけ。またどこか出会えるかもしれない。
子の返歌は古今和歌集に少し違う形で載っています。伊勢物語は平安前期の成立と言われていますが、これに影響を受けた源氏物語でも、微妙な引用が行われていて、「夕顔」の冒頭でシーンで光源氏がかける慰めの言葉に「心細くおぼゆるを、『さらぬ別れはなくもがな』」という調子です。もう一回くらい引用があったと思うけど。
さらばという言葉が別れの意味を持つのは江戸時代以降。すこし古いところという意味で、なんとなく。さらばのさは然だから、去らぬ、避らぬじゃ関連なし。まぁそうなんですが。
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