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「銀の魚」の山場

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chikugogawa

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さて、いよいよこの「銀の魚」の山場、53小節めの「あさひにはねよ」。

とりあえず本当に山かどうか確認。まず音量。この曲でフォルテ以上の音量指示を受けているのはここのほか、2度目の「朝の川面に投網がふくらむ」、最後のページの「いきのよい魚をとらえるのだ」と最後の「朝日にはねよ」、の計4回。ffは一度も出てこないけど、フォルテからクレシェンドすることはある。
ある種の形式的な考え方では2度目の「朝の川面に投網がふくらむ」や、最後のページの「いきのよい魚をとらえるのだ」ででてくるようにフォルテから2回クレシェンドしたあとが一番大きいかもしれないし、とくに「ふくらむ」のあとで「さざなみが」の直前にアクセントとスタッカートをつけてぶち切るところは音量が大きくなりやすい。
音の高さで見ると、高声が最高音を出すのは意外にも1ページ目の男声の「川のおとこ」の裏で女声が「あゝ」という最初で出す上のソ。46小節めで同じ動きをするときにも同じソが今度は「お」という歌詞で出てくる。が、この音が最高の山のはずはない。で、次の高さファ#はこの曲に何度も出てくる。とりあえず、そういう高さだ。
この「朝日にはねよ」は曲の終わりにも出てくるけど、音量を確認してみるとここはfからcresc.なのに、最後はcresc.なしのf。
仕組みの込み合い具合、和音の厚み、シンコペーションの採用、ピアノパートでのアルペジオ、さらにはテヌート記号にten.記号を重ねて書くという気合の入れよう。そういうことをまとめて考えると、ここが「銀の魚」一番の山と考えていいはず。

「はねよ」の「ね」の長さについては、フェルマータ記号ではなく、所詮テヌートであることを考え、でもそれを重ねて書き込んであること、その音符が前後で8分音符だらけなのに対し4分であることを考慮すると、
  • 四分音符いっぱい音を伸ばすに過ぎない(インテンポのテヌート)
  • 形式的なその4分音符の長さよりも少し長くする(テンポルバートのテヌート)
  • ヤマだから、フェルマータくらいの気持ちでしっかりのばす(フェルマータ)
の3通りが考えられます。今回はどうやらフェルマータがついているくらいというかなり濃いめの演奏方法が選択されているようです。インテンポ以外の場合、ピアノの左手の立場が微妙ですが、インテンポで4拍目まで弾いて目立ってみる方法と、3拍目で伸ばして4拍目からテンポを戻すのを先行して提示する役割を負ってみるのと、どちらもありだと思います。

朝靄の景色からいよいよ日差しを浴びて輝きを見せる川面や魚。筑後川流域の人たち、とくに青年層の躍動感、あるいは愛の営みの絶頂、などのどれかを感じさせる、迷いのないきっちりした不協和音を鳴らすこと。複雑な和音名をどうこういうより、クラスター音に近づけて、露出オーバーの白トビのような映像を考えてみるのも手なのかなぁ。
吹っ切れた感じの良く伸びる声がほしいですねぇ。自分が出すべき音の高さやタイミング、残りのブレスとかに不安が残ると、声の音色にその不安がのっかって、ここで欲しい音ではなくなってしまいます。まずよく音をとって、あたまにいれて、いい体調、いい姿勢、いいブレスで山を乗り切りましょう。


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