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息を混ぜて切る

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chikugogawa

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フーガの冒頭のアルトの動きを考えると直前の女声の処理をしっかり考えたほうがいいだろう。

まずフーガへのつながりを見てみると、男声やピアノパートを見ればわかるようにリズミカルに作ってきてフーガの小節の2拍目までその動きが続いている。ブレス記号もテヌート記号も、一切の速度記号もない。ここは完全にテンポキープのまま“タメ”なしで、フーガの小節に飛び込む。フーガに入れば音楽の性質が激変するのでメンバーの技量に応じてテンポを作りかえる味付けはまったく不可能ではないものの、すぐに同じ動きに戻るわけだからかなり特殊な編曲といわれかねない。つまり十中八九というよりそれ以上の確率でテンポキープ。

するとアルトはこの長いフーガの主題提示に、ノンブレスで飛び込むのかというと、それもありえないだろう。そこまで音楽の主役は男声が担っているので、このレの「あー」を小節いっぱい保持しなければならない理由はあまり思いつかない。次の音に飛び込むのに十分な時間、たとえば4分休符か、8分休符を書き込んで、ブレスして、気持ちに余裕を持たせていいはずだ。

ソプラノは語尾に子音があるわけでもないので、フーガの小節に被るかもしれない問題はほとんどない。寝ぼけてて男声と同じだけあーあー歌ってましたとかいうミスをおかさず、ちゃんと楽譜どおり歌ってくれればすむ。むしろ直前で同じ動きをしているアルトが、フーガにしっかり入ろうと余裕を持ったブレスをとることへの処理が問題だろう。激しく動く男声の中で、アルトの音は目立ちにくいが、ソプラノは他パートよりも一段高い音域にいるので余裕で目立っている。しかもクレシェンドが書かれてあるので、目立て、という支持だと解釈していい。もちろん主役たる男声への配慮の範囲内だけど、ここで女声にかき消される男声などいないだろうから、気にせず目いっぱいのクレシェンドをやればいい。問題はどこまでのばすか。語尾に子音があるような言葉だと、アルトとずれて切るのは不自然だから、アルトにはぎりぎりまでがんばってもらい、8分休符くらいを念頭に置いて子音を出そうか、などと考えるところだけど、ここでの歌詞は「あー」。しかも出しっぱなしの保持音。さらにただのオクターブ関係。となればアルトが先に切れて、ソプラノが1拍長く延ばしても大勢に影響はない。だからアルトに切れてもらって、ソプラノが小節いっぱい、楽譜どおりにのばす、というのが一番現実的で自然な選択肢。

あるフレーズの終わりで、こういう高い音域でクレシェンドを伴って長い音符がかかれている、というのはよくあることだけど、語尾の子音なしに歌うときは注意が必要。一番やっちゃいけないのは口を閉じて音を切るという行為。違う種類の音が混ざって変です。客からもよく見えて、恥ずかしいのでそういう癖をつけてしまわないように気をつけましょう。勝手にリタルダンドやデクレシェンド、あるいはアラルガンドをつける困ったケースもある。指揮者にあわせましょう。ここではテンポは動かないし、最後までクレシェンドです。まぁここは他パートがリズミカルだから自分で一所懸命数えなくてもわかりますよね。
のどでぶちって切るというのも避けたいところ。腹式呼吸だけで切るのはやや大変。そこでよく使われるのが息をまぜるように切る方法。呼気は送り続けて次の小節の頭のタイミングで声帯を開いてしまう。開けといわれてもわからないだろうから息を混ぜるという風に考えてみようってこと。客席の高いところを目指してリリースするという意識だ。そういう気持ちがあると直前の音の動きがきれいになってくる。のどだけで歌っているとすぐにつぶれちゃいますからね。


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