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さらば暇申して

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chikugogawa

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古語辞典で「さらば」という言葉を引くと、接続詞としての「然らば」で、それならば、そういうことなら。という意味が載っている。そしてもうひとつの意味が感動詞としてもちいる近世語で、さようなら、という意味。近世、つまり江戸時代にこのような用法が広まったということは、定番の有名古典に別れの意味の「さらば」という接続詞の有名フレーズがあるか、江戸時代のどこかでこの表現がはやったかのどちらかかな、と思ったけど、古語辞典だけでは、どこでこの表現が使われ始めたかまではわかりません。

で、2日ほど、ひたすらググってみました。
ようやくひっかかったのが、平家物語の第7巻、「忠度都落ち」。
平将門の死で平家の形勢が一変し、一同急ぎ都落ちするという緊迫した場面で、なお雅な心を捨てない薩摩守忠度が、別れの言葉を述べるシーン。
「いまは浮世に思ひおくことなし。さらばいとままうして」
ただ、これはあくまでも接続詞としての用法。
原文:
http://www.st.rim.or.jp/~success/heike007.htm#15
現代語訳:
http://masa_n.at.infoseek.co.jp/heike/h205ch8_16.htm

おまけですけど、この直後に出てくる歌、
さざなみや志賀の都はあれにしを 昔ながらの山桜かな
は「さざなみ」がびわ湖や滋賀の枕詞なんですよね。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=95504133&owner_id=1483352

もうひとつは古浄瑠璃というか映画というか絵巻で「山中常盤」。
http://www.moaart.or.jp/japanese/art/print0005.html
http://jiyu-kobo.cocolog-nifty.com/emaki/cat2957996/index.html
江戸時代前期に浄瑠璃を絵巻物にするのが大名で流行ったらしく、山中温泉のあたりで殺されたお母さんのかたきを義経がとりにいくという話の浄瑠璃を絵巻物にしたものが残っているらしい。昨年、その内容が映画化されたとか。浄瑠璃自体は室町時代のものらしい。その中で、
「いとま申してさらばとて 大夫が宿所をいでさせ給いて」
という言葉がある。これは感動詞。細かい言い回しは書き取った時点までに揺らいだりするから、これだけでは室町時代に成立してたかは疑問もあるけど、少なくともこの絵巻が描かれた17世紀前半にはこの言い回しがあったってことですよね。

わたし「美の巨人たち」って、ほんの数回しか見たことないんですが、たまたまこの回
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/050115.htm
は、見ました。なんとなく思いだしました。


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