乱れ撃ち読書録@chipmunk1984

ツィス

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ツィス


書名: ツィス
著者: 広瀬 正




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紹介

二点嬰ハ音(ツィス)が聴こえる。いたるところで、いつも聴こえる。耳鳴りだろうか?ひとりの若い女性の訴えから始まったこの奇妙な公害事件。その耳障りな音は、はじめ緩慢に社会を侵し、やがてマスコミ報道とともに急ピッチで拡大、ついに首都圏は一大パニックに陥る……。

評価

評点:★★★★★ ( 9/10点)
神奈川県のある市で、どこからともなく聞こえだした音(ツィス音)が徐々に大きくなり,人々は生活もままならず首都圏はその機能を失っていくという小松左京作品にも通じるテーマを題材に洒脱な文体と構成で描いた名手 広瀬正の第二作.『マイナス・ゼロ』とうってかわって,現代でも通用する素材を広瀬正らしく,軽妙にしかし深い洞察の元で描かれています.特に日比野教授とそれを取り巻くマスコミ人,役人の胡散臭さは絶品です.最後は大どんでん返しなのですが,そのどんでん返しのあとにニヤリとさせられる本当の結末が待っています.(この結末は若干好き嫌いが分かれるかも知れません.)また,物語の細部が非常にしっかり書かれていて広瀬正の博識ぶりも垣間見ることができます,日本SFのトップ作品の一つでしょう.


おまけ

手元の本は1982出版の集英社文庫ですが,広瀬正の全集は今や古書でも手に入りにくく,法外な値段で取引されています.是非,復刊投票にご協力ください.







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