合成技術について

ビデオ作成をしていくうちに必ずぶつかることのある合成。

よく聞くし、実際にやってみたいけど、どうすればいいのかわからない。
そんな方、結構いるのではないでしょうか?

では合成とは一体どのようにすればいいのでしょうか?


ビデオ合成の歴史。

合成とは簡単に説明すると、ただ画面を重ねるだけの作業です。

昔、まだ映画がフィルムで取られていた時代。
とあるフィルムと全く別のフィルムを重ねてみた人がいました。
これが合成の始まりです。
ご存知の通りフィルムは半透明ですから下の画像が透けて見え、二つの画像が一緒に見えるわけです。

昔の合成はこの用に純粋にフィルムに加工をして作っていました。
人物にあわせて切り抜いたフィルムを一こま一こま張ってゆくなどのなんともアバウトな方法で合成を行っていたのです。

また、CGが普及するまでの特殊効果はフィルムに直接ペンで描画するなどの力技を用いて作られていました。

実は現在の合成もこの考え方から対して進歩していません
しかし、合成を行うための設備は大きく変わりました。
さて一体現在ではどのように合成を行うのでしょうか?


キーイング

現在の合成はほとんどこの「キーイング」という方法で作られています。
これは画像の中からある特定の一色だけを抜き出して透明にしてしまう機能なのです。
ブルースクリーンなどと呼ばれていますね。

例えば、背景を青い紙で覆ったスタジオがあるとしましょう。
(KBCの局室の青いカーテンもこのような使い方が出来ます)
その紙の前でモデルの人がなにか動くとします。
そして、その映像をパソコンに取り込んだ後、
「キーイング」(もしくはブルースクリーン)というエフェクトを選びます。
そうすると青いところだけが透明になります。
その状態で下に画像を重ねると、人物の背景を自由に変えることが出来るのです。

これがキーイングの仕組みです。
抜くことの出来る色はユーザーが自由に設定できます。
残したい物体に使われていない色を選ぶと良いでしょう。
外国の方をインタビューするときなどは瞳の色に要注意です。

また色のあいまいさも選択できます。
簡単に説明すると「青に近い色」も選択してしまえる機能です。
「あいまいさ」を大きくしすぎると、全て消えてしまいますが、
適度な値ですと、モデルを綺麗に切り抜くことが出来ます。

また、ブルースクリーンの大敵の影もこの機能で軽減できます。
ブルースクリーン上にしわなどの影が出来てしまうと、
そこだけ色が黒いので青と認識されず、合成の時に残ってしまいます
出来るだけ影が出来ないように撮るのが一番大切なのですが、
どうしても出来てしまった場合は、「あいまいさ」をあげて影の部分を飛ばしてしまいましょう。


特殊効果


簡単な合成の仕組みはわかった。では、よく映画なんかでみる特殊効果ってどうやるの?そう思うのはもっともです。
映画などでよく見ることの出来る特殊効果、光が出たり、稲妻がはしったりするシーン。誰でも一回は取ってみたいものです。

アドビのプレミアなどには、最初から特殊効果を出すことのできる機能がいくつか用意されています。
例えば、稲妻を画面に描画したり物体を二重にしたりといった機能で、
自由度は少ないですが、ボタン一つで簡単に特殊効果が再現できるので、使ってみるのも手でしょう。

またアドビのアフターエフェクトなどには、もっと細かい設定の出来る特殊効果がたくさん入っています。
これらを試してみるのも手でしょう。

しかし、特殊効果といってもはじめからソフトに組み込まれている機能です。
編集をしていて、どうしても自分のイメージどおりにならないといったことも当然起こるでしょう。
特にプレミアの場合は自由度が低いので、狙った映像が出来ることはほとんどありません

最初から入っているエフェクトに飽き飽きしたとき、
自分オリジナルの効果を出してみたいとき、
そんな時はどうすればいいのでしょう?

うーん難しそうだけど、コンピューターでちょちょっとやれば簡単に出来るのでしょ?
と思われる方もいるかも知れません。

しかし、現実問題それは非常に難しいことです。
実は実際の映画というものはコンピュータでごまかしている部分というのは本当にわずかなのです。
大抵の部分は撮影の時の工夫で済ませてしまうのです。
いわゆる特撮という分野ですね。

例えば、スターウォーズのライトセーバー。
アレは蛍光塗料を塗ったただの棒にブラックライトを当てて撮影されています。
またターミネーターの登場シーンの雷ですが、
アレはテスラコイルで実際に起こした放電を撮影しています。
ゴジラシリーズにいたってはきぐるみとミニチュアで街を再現していますし、
派手なCGで有名になったトランスフォーマーでも爆発は全て実写です。
(バスが爆発するシーンでは実際にバスを爆破している)

なぜ特殊効果を使わないのでしょうか?
それにはいくつか理由があります。
まず、最初から撮ってしまったほうが早いからという理由があります。
編集の手間や時間を考えると、最初から実際の爆発を取ったほうが早いからです。
そして何よりも「特殊効果は大変だから」です。
特殊効果とは、実は「フィルムに直接絵を描いている」だけの作業です。
そしてこれはコンピュータが発達した現在でも変わることはありません

「え~?嘘でしょ?」と思ったアナタ。
例を上げましょう。
例えばスターウォーズにエンドアという星が出てきます。
その星にはジャングルがあり、主人公達はそのジャングルの中で戦うのですが、
このジャングル、実は全て絵なんです。
ガラスの板に超リアルな背景を絵の具で描き、それをカメラの前において撮影していたのです。

そして、現在でもそれは変わりません。
プレミアはもちろん、一部のフリーの動画作成ソフトには
動画をビットマップで出力
ビットマップを統合
といった機能がついています。

これは、動画を一コマづつバラバラの静止画に変換し、
さらにそれをもう一度動画に戻してくれる機能です。

ためしに動画を静止画に変換してみましょう。
すると、静止画が何十枚も生成されます。
後はその静止画に直接ペンを入れて、それを元の動画に戻すだけです。
この機能を使えば、理論上どんな特殊効果もつけられます
例えば主人公に目からビームを撃たせたいとします。
その場合主人公の目から数コマにわたってだんだんと伸びてゆくビームをその画像の上に描けばよいのです。
参考までにフレームレートが30コマの場合、一秒間に30コマもの静止画を編集することになります。

しかし、コンピューターを使用してるとはいえ、やっていることはフィルムにペンを入れるということと何も変わりません

ここに移っている人物を消したいといった時には、たった一秒のために数時間を使ってしまうことになります。
さらに、異世界の背景などを書きたいなという場合には、写真を加工して作る場合を除き、全て自分で一から書かなくてはなりません
コンピュータが手伝えるのはせいぜい発光させたり、位置を変えたり、やり直しができる程度。
絵を描くのは結局作成する本人と言うことになります。
さて、アナタがどう見ても写真としか思えない絵をかけるのなら別ですが、
大抵の人間はそんなスキルなんてものは持っていません。
ソフトは所詮道具です。フォトショップを購入したからといって絵がうまくなるわけではありませんよね。

例えば、狼男の映像を作るとしましょう。
月を見てウォォッォォーーーーーッ!と変身するシーンです。
{人間の役者に演技させて、
顔は特殊効果使えば何とかなるでしょ}」
とか考えていると、変身後の狼男が画面に登場している間の映像全てに
一秒間につき30フレームのペースで、パースが完璧にあい実写と区別が出来ないほどのクオリティの絵を描き続けることになってしまいます。
正直言って無理があります。

ですから、こういう時は撮影の時、実際に撮ってしまったほうが良いです。
そっちのほうがリアルですし、手間もかかりません。
例えば、狼男の顔のマスクを購入してそれをかぶっているだけでもかなり手間が削減されます。
さらには、画面に出さない、といった手口も使えます。
変身シーンの時は影だけを撮るなどして楽をする方法ですね。


まず、大切なのは、なんでもかんでも特殊効果で再現しようとしないことです。
実際の撮影時の工夫でどうにかならないのだろうか?
それを考えてみてください。
物を浮かせたいなら糸で釣るなどの工夫があるでしょう。
一瞬で消えたいのなら、カメラを止め、その隙に画面外へ逃げてもう一度撮るなどの方法があります


それでダメであって始めて特殊効果を使いましょう。




==以下続きます。==

快晴の空をCGで抜く



最終更新:2008年03月19日 14:38